『アニメで覚えるトクトク99のうたDVD+CD ~国・算・理・社・英 暗記ソング集~』（日本コロムビア）が我が家にあります。これは、いったんは遷延性意識障害の診断を受けた長男が、3年遅れで九九を会得した教材です。大脳基底核にダメージを受けていた長男ですが、視覚や聴覚は蘇ったため、筆記に代えてDVDによる学習で九九を覚えました。（画像は『アニメで覚える99』より）
毎年この日（5月26日）は、2011年に起こった我が家の火災のことを書いています。
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『君へのメッセージ』で遷延性意識障害と向き合った自分が甦る
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一酸化炭素中毒・心肺停止から2年、“生還”の極意は？
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私が放火犯にされた「事件」の真相
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戦後史ではなく自分史の話
新しい閲覧者もおられるので、本日もしつこく振り返っておきます。
我が家は、4年前に不慮の火災で、妻子が意識不明の重体となりました。
心肺停止や、JCS300など、いずれも深刻な救急患者でしたが、世間の冷たい予想に打ち克って、妻と次男は医学的に後遺症を認定できない（←これは必ずしもいいことではないのですが）ところまで回復できました。
しかし、長男の回復が遅れ、受傷後3ヶ月目の診断で遷延性意識障害となりました。
幸い、その翌月から長男は追視（目的をもってものを見ること）ができるようになり、自力で体も動かせるようになり、さらに翌月からは自力歩行、その翌月からは発語が回復と、少しずつ回復はしたのですが、高次脳機能障害の後遺症が残りました。
高次脳機能障害ってどうなっちゃうの？ と尋ねられると、人によって症状が様々なので現象として簡単に説明しにくいのですが、たとえば大人なら、10年か15年の記憶が飛ぶようです。
あとは、日常的な行動が、体の器官が器質的には壊れていないのに、それをつなぐ神経が壊れたために、うまくできない場合があります。
以前ご紹介した、医師の山田規畝子さんの場合は、ズボン（下着と区別するためにパンツとは書きません）の前後がわからない。遠近感がわからない。感情のコントロールが出来ないことがある。体の左側が動かない。トイレットペーパーが左側にあると右手が届かない、包丁は使えるが自分の手を切ってもわからない、物の形の意味がわからない、便座をあげたまま気づかずそのまま座ってしまう（かもしれない）という後遺症が残っているそうです。
『高次脳機能障害者の世界』3度カムバックした医師の暮らし方
トイレットペーパーに手が届かないといっても、腕や指が欠損したり、物理的に届かなかったりするわけではないのです。しかも、腕を曲げたり指を曲げたりということ自体はできるのです。
つまり、脳からの命令で複合的な動きをする連携の神経が壊れているのだと思います。
長男の場合、受傷が7歳だったため、そもそも獲得していることが大人に比べて少ないこともあり、受傷半年後は「できない」ことに満ちていましたが、可塑力が大人よりも少しだけ柔軟であると考えられるところから、自然的経過や、意図的な訓練などによって、「できること」にかわっていきました。
エジソンのお箸、遷延性意識障害からの回復訓練に
それでも現在、鉛筆をしっかり握りしめ、スラスラと文字や数字を書いて学習することが苦手です。
「鉛筆を持つ」「書くことで学習する」という脳との連携が壊れて、現在少しずつ回復しているところだと思われます。
ただ、その回復を待って何も学習しないわけにはいきません。
そこで、冒頭の九九ですが、書けなければ、聞くことで暗記できないかと考えました。
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耳で覚える九九
『アニメで覚える99』は、数字が流れるアニメに合わせて、「ににんがし」など、九九を歌詞とする歌が流れてきます。
『アニメで覚える99』より
目と耳で九九を暗記するわけです。
パッケージには、音だけのCD版も同梱されていますが、せっかく映像があるのですから、もっぱらDVDを使っています。
もちろん、このパッケージは高次脳機能障害者用というわけではありません。
ただ、書く学習が困難な状態でも役に立ちました、という意味で今回ご紹介しています。
DVDには、九九以外にも、小学校で学ぶ他の分野（地理、歴史）や、化学の元素記号編まであります。
よく、暗記主義はいけない、考える勉強でないとだめだなどといいますが、事情があってそういう王道が歩めない者は、柔軟に対応していかなければと思っています。
今回書いた九九というのは、ずいぶん回復してからのことで、長男の場合、まだまだそれ以前にいろいろな過程があり、そのときどきで今回のような教材を使っているのですが、それはまた改めて後日ご紹介したいと思います。
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