『つむじ風』渥美清が車寅次郎とは180度違う要領の良い男を好演

『つむじ風』（1963年、松竹）を鑑賞しました。渥美清主演です。車寅次郎とは180度違う要領の良い男を器用に演じています。その他、桂小金治、加賀まりこ、冨士眞奈美、伴淳三郎、殿山泰司、伊藤雄之助、川津祐介などが出演。川津祐介と加賀まりこは、当時の松竹が売り出したかったコンビです。（画像は『つむじ風』より）



『つむじ風』は、1963年に封切られた松竹の映画です。



これまで渥美清主演の作品は、山田洋次、森崎東、野村芳太郎などの監督作品を記事にしましたが、今回は文芸映画を上手く撮る中村登監督です。違う監督で、渥美清がどう変わるのか見たかったのですが、やはり渥美清は巧いですね。



そして、今回の『つむじ風』はなかなか個性的な助演者が揃いましたが、その中の一人が桂小金治です。


Google検索画面より

桂小金治は、落語家二つ目時代に、『幕末太陽傳』の川島雄三監督に請われて松竹入り。

以後は東宝、日活で映画俳優、そしてテレビ司会者として活躍しました。

落語家として一人前でもなかった時に、そのような誘いがあったということは、よほど演技に優れていたんでしょうね。

私は、桂小金治というと、NET（テレビ朝日）の『アフタヌーンショー』の司会者というイメージが強くあります。

ですから、映画俳優として華やかな頃の桂小金治を知らないので、その意味で本作は楽しみにしていました。

映画を観たところ、細かいことは素人にはわからないのですが、少なくとも台詞の間がいいなと思いました。

もっともこれは、桂小金治だけでなく、落語家に共通していえることなんですけどね。

ただ、渥美清という繊細な天才を相手に渡り合ったのですから、役者としての実力はあったのだろうと思います。

あとは、ヒロイン2人が、冨士眞奈美と加賀まりこ。




ともに『つむじ風』より

当たり前の話ですが、1963年ですから2人とも若くてきれいでした。

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抜け目ない渥美清と意地悪で滑稽な成金の伴淳三郎

失業中の浅利圭介（桂小金治）は、乗用車にはねられて倒れている松平陣太郎（渥美清）を助け、家に連れて帰ります。

失業中の圭介は、女房・ランコ（沢村貞子）に下宿代を払う情けない身の上。

そこで圭介は、陣太郎をハネた人間から賠償金をとって分前をもらおうと企み、ランコは、徳川将軍安祥松平家の末裔と名乗る陣太郎に、就職口を探してもらおうと考える同床異夢で陣太郎をもてなします。

圭介は、車のナンバーから、犯人を、作家の加納明治（伊藤雄之助）か、風呂屋の猿沢三吉（伴淳三郎）にしぼり込みました。圭介は加納を、陣太郎は猿沢を調べることに。

風呂屋の猿沢は、妻・ハナコ（若水ヤエ子）、娘・一子（加賀まりこ）と二美（辻さとみ）がいる一見平和なファミリーですが、金にセコく、近所の泉湯の恵之助（殿山泰司）とはいつも張り合い、おまけに愛人をアルバイトと割り切る大学生の真知子（冨士眞奈美）を囲っていました。

そのため、泉湯の息子・竜之助（川津祐介）は一子と付き合っていたのですが、ロメオとジュリエット的悲恋状態でした。

伴淳三郎というのは、いつも意地悪で滑稽で頭の悪い成金役ですね。

陣太郎は猿沢家の事情を把握し、猿沢からは「真知子の浮気監視料」と口止め料をせしめました。

それだけでなく、今度は加納宅に乗り込み、陣太郎をハネたことを記した加納の日記を盗み出し、初期の目的である多額の賠償金を圭介には1円も分けずに受け取ります。

そんなソツのない陣太郎も、真知子だけはうまく自分のペースに巻き込めません。

逆に、自分が徳川家と無関係であることまで見破られてしまいます。

陣太郎は、彼女に好意をもちながら、それをさらけ出さない中途半端さが原因と悟ります。

そこで陣太郎は、彼女に真正面からアタック。彼女は受け入れます。

陣太郎は、真知子と結ばれたことを猿沢に報告。猿沢が部屋に乗り込むと、2組の挙式会場の地図が。

陣太郎と真知子、竜之助と一子は無事式を挙行し、新婚旅行のタクシーに乗込んで行きました。

まあとくに大作というわけではありませんが、タイトル通り、小さな揉め事を上手にまとめてハッピーエンドに収まった作品だと思います。

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