『テレ東的、一点突破の発想術』“番外地”だからこそ掴めた勝機 [マスコミ]
『テレ東的、一点突破の発想術』(濱谷晃一著、ワニブックス)を読みました。かつては、「3強1弱1番外地」といわれたキー局の「番外地」だったテレビ東京。それが、視聴率争いで最下位を脱出し、2014年9月期のホールディングス連結決算において、在京キー局で唯一増収増益になったそうです。その同局の企画で差をつける法則やアイデアが湧き出る発想術などを、同局プロデューサーの濱谷晃一氏が書いています。
一点突破全面展開。
かつての新左翼のスローガンとして使われましたが、今は、企業の事業拡大や業績を伸ばすための道順としても使われている言葉です。
後発の企業がシェアを獲得するには、あれもこれもと総花的な目標をたてて虻蜂取らずにならず、とにかく突破口に出来る一点を絞り、それが成功したら水平展開しましょう、という意味です。
まさに、テレビ東京がそうである、というのが『テレ東的、一点突破の発想術』にかかれていることです。
テレビ東京は、以前は東京12チャンネルといい、ネット局も予算も少ない、まさに視聴者からは「番外地」扱いのテレビ局でした。
他局なら、「予算が少なすぎて番組が作れない」というところを、テレビ東京のプロデューサーなら、「そんなに予算があったら使い道がわからない」と言うだろうと、同書にも自虐的に書かれています。
さらに濱谷晃一氏は、「被害妄想かもしれませんが」と断りながらも、出演者は「映画→NHK→民放他局→WOWOW→テレビ東京」の順に出演番組を選んでいるのではないかと書いています。
しかし、予算も出演者の評価も低いからこそ、ただひたすらオリジナル企画を考えて他局に勝つ、という突破口に目的を絞れるそうです。
お金のある局が、大物タレントで番組を作れると、逆にタレントありきで企画が作られるので、フワッとした番組作りになってしまうことがあります。
新聞のラテ欄は、他局が出演者の名前が並ぶのに比べて、テレビ東京は内容の紹介が多いのは、何を売りにするかという姿勢の違いが表れているといいます。
テレビ東京では、制作部署の人間はみな企画を提出。そこに年功序列はないので、AD(アシスタントディレクター)の企画が採用されることもあります。
すると、その人は通常業務はADなのに、企画が通った番組の時はプロデューサーになるそうです。
これはやりがいがありますよね。
他の企業では、いえ、学者の世界でも、若い下々の企画や発見を、結局は上の人のものとして発表します。
そういう理不尽なことが我慢できないと、組織の人間として生きていけないわけですが、それが優秀な人材を失う原因になり、結局はその組織にとっても決して得にはならないのです。
その点で、テレビ東京は、人材の意欲や能力を最大限に活かす開かれたいい会社だと思います。
同局の、「ない」からこそ閃いた企画も多数紹介されています。
たとえば、『YOUは何しに日本へ?』は、タイトル通りの質問に対する外国人の返答の様子や、気になる返答をした人に密着取材をし、「ガチ感やハプニング性、そしてラッキーな感動」を狙う番組ですが、スタッフやタレントは渡航せず、成田空港で済ませてしまうそうです。
考えてみたら、いちいち外国に行ってお金を使わなくても、空港で聞けばいいわけですからね。
『モヤモヤさま~ず2』は、さま~ずと局アナが商店街を歩いて素人を弄るという、ケーブルテレビ並みのシンプルな企画の番組です。
深夜からゴールデンタイムに昇格するときも、あえてお金をかけてゲスト入れずに、その「弄り」に特化したことで、“素人スターイズム”を打ち出す番組のコンセプトがわかりやすく伝わったといいます。
同じ趣旨で成功した前例としては『TVチャンピオン』があり、何と同局で活躍するディレクターの大半は『TVチャンピオン』出身なのだそうです。
『テレ東的、一点突破の発想術』では、テレビ東京だけでなく、著者の濱谷晃一氏自身の成功法則も書かれています。
濱谷晃一氏は、模擬試験の偏差値29で浪人。それが「周りを驚かせる」というシンプルな目的意識に絞って猛勉強したことで、偏差値を40上げて慶應義塾大学に合格したそうです。
就職も、テレビを見なかった著者は、もっぱら「缶コーヒー収集」というレアな趣味を前面に押し出して、激烈な競争率の中で採用を勝ち取ったといいます。
すでにこの時から、「一点突破」の人生観だったわけです。
そんな濱谷晃一氏のモットーは、バッターボックスに入るのは早い方がいい、でも遅くともあきらめる必要はない、というものです。
目の前にチャンスが転がってきたら、まだ機は熟していないなどと思わずに、すぐに手を上げること。回転寿司がひと回りしたときは、お好みのネタはもう誰かに取られているかもしれません。
といっても、それは遅かったらダメだということではありません。
世の中には遅咲きで歴史に名を残した人も、現在活躍中の人もたくさんいます。
中日ドラゴンズの山本昌は遅咲きではありませんが、49歳で現役。
一昔前の“常識”なら、40歳過ぎて現役(しかも投手)ということはあり得ませんでした。
世の中は常識も価値観も変わっていくもの。勝手に先を読んで、慎重になったり諦めたりする必要はない、ということです。
人間なんて、無謬万能ではありません。
結果を先回りして読んだって、その通りとは限りません。
勝機は一点突破、いつでもバッターボックスに入れ、という著者の考え方には大いに共鳴できます。
あ、それと末尾になりましたが、4月12日はテレビ東京の開局記念日だそうです。
テレビ東京のこれからの躍進に期待しましょう。
一点突破全面展開。
かつての新左翼のスローガンとして使われましたが、今は、企業の事業拡大や業績を伸ばすための道順としても使われている言葉です。
後発の企業がシェアを獲得するには、あれもこれもと総花的な目標をたてて虻蜂取らずにならず、とにかく突破口に出来る一点を絞り、それが成功したら水平展開しましょう、という意味です。
まさに、テレビ東京がそうである、というのが『テレ東的、一点突破の発想術』にかかれていることです。
テレビ東京は、以前は東京12チャンネルといい、ネット局も予算も少ない、まさに視聴者からは「番外地」扱いのテレビ局でした。
他局なら、「予算が少なすぎて番組が作れない」というところを、テレビ東京のプロデューサーなら、「そんなに予算があったら使い道がわからない」と言うだろうと、同書にも自虐的に書かれています。
さらに濱谷晃一氏は、「被害妄想かもしれませんが」と断りながらも、出演者は「映画→NHK→民放他局→WOWOW→テレビ東京」の順に出演番組を選んでいるのではないかと書いています。
しかし、予算も出演者の評価も低いからこそ、ただひたすらオリジナル企画を考えて他局に勝つ、という突破口に目的を絞れるそうです。
お金のある局が、大物タレントで番組を作れると、逆にタレントありきで企画が作られるので、フワッとした番組作りになってしまうことがあります。
新聞のラテ欄は、他局が出演者の名前が並ぶのに比べて、テレビ東京は内容の紹介が多いのは、何を売りにするかという姿勢の違いが表れているといいます。
予算がないからこそできた企画
テレビ東京では、制作部署の人間はみな企画を提出。そこに年功序列はないので、AD(アシスタントディレクター)の企画が採用されることもあります。
すると、その人は通常業務はADなのに、企画が通った番組の時はプロデューサーになるそうです。
これはやりがいがありますよね。
他の企業では、いえ、学者の世界でも、若い下々の企画や発見を、結局は上の人のものとして発表します。
そういう理不尽なことが我慢できないと、組織の人間として生きていけないわけですが、それが優秀な人材を失う原因になり、結局はその組織にとっても決して得にはならないのです。
その点で、テレビ東京は、人材の意欲や能力を最大限に活かす開かれたいい会社だと思います。
同局の、「ない」からこそ閃いた企画も多数紹介されています。
たとえば、『YOUは何しに日本へ?』は、タイトル通りの質問に対する外国人の返答の様子や、気になる返答をした人に密着取材をし、「ガチ感やハプニング性、そしてラッキーな感動」を狙う番組ですが、スタッフやタレントは渡航せず、成田空港で済ませてしまうそうです。
考えてみたら、いちいち外国に行ってお金を使わなくても、空港で聞けばいいわけですからね。
『モヤモヤさま~ず2』は、さま~ずと局アナが商店街を歩いて素人を弄るという、ケーブルテレビ並みのシンプルな企画の番組です。
深夜からゴールデンタイムに昇格するときも、あえてお金をかけてゲスト入れずに、その「弄り」に特化したことで、“素人スターイズム”を打ち出す番組のコンセプトがわかりやすく伝わったといいます。
同じ趣旨で成功した前例としては『TVチャンピオン』があり、何と同局で活躍するディレクターの大半は『TVチャンピオン』出身なのだそうです。
いつもチャンスは大切にしよう
『テレ東的、一点突破の発想術』では、テレビ東京だけでなく、著者の濱谷晃一氏自身の成功法則も書かれています。
濱谷晃一氏は、模擬試験の偏差値29で浪人。それが「周りを驚かせる」というシンプルな目的意識に絞って猛勉強したことで、偏差値を40上げて慶應義塾大学に合格したそうです。
就職も、テレビを見なかった著者は、もっぱら「缶コーヒー収集」というレアな趣味を前面に押し出して、激烈な競争率の中で採用を勝ち取ったといいます。
すでにこの時から、「一点突破」の人生観だったわけです。
そんな濱谷晃一氏のモットーは、バッターボックスに入るのは早い方がいい、でも遅くともあきらめる必要はない、というものです。
目の前にチャンスが転がってきたら、まだ機は熟していないなどと思わずに、すぐに手を上げること。回転寿司がひと回りしたときは、お好みのネタはもう誰かに取られているかもしれません。
といっても、それは遅かったらダメだということではありません。
世の中には遅咲きで歴史に名を残した人も、現在活躍中の人もたくさんいます。
中日ドラゴンズの山本昌は遅咲きではありませんが、49歳で現役。
一昔前の“常識”なら、40歳過ぎて現役(しかも投手)ということはあり得ませんでした。
世の中は常識も価値観も変わっていくもの。勝手に先を読んで、慎重になったり諦めたりする必要はない、ということです。
人間なんて、無謬万能ではありません。
結果を先回りして読んだって、その通りとは限りません。
勝機は一点突破、いつでもバッターボックスに入れ、という著者の考え方には大いに共鳴できます。
あ、それと末尾になりましたが、4月12日はテレビ東京の開局記念日だそうです。
テレビ東京のこれからの躍進に期待しましょう。
Facebook コメント