『ボケたくなければカレーを食べなさい』カレーは代替医療か [(擬似)科学]
『ボケたくなければカレーを食べなさい 医者が教える「カレーが健康によい理由」』(メトロポリタンプレス)を読みました。著者は、医師の川嶋朗氏(東京有明医療大学教授)です。『日刊ゲンダイ』(2015年1月29日付)では同書についての著者インタビュー記事も掲載されています。
カレーを推奨する医師の書籍としては、先日、吉田たかよし氏の「『なぜ、東大生はカレーが好きなのか』カレーを食べて脳機能向上」をご紹介しました。
内容は、ある一点を除けば構成としては同書と基本的に同じです。
本の題名通り、カレーを食べるインドではアルツハイマー病が少ないという話から入っています。
今回の『ボケたくなければカレーを食べなさい』の方が、ターメリックだけではなく、蕃椒(唐辛子)、丁香(グローブ)、大蒜(ガーリック)、陳皮(ミカンの皮)など、漢方として扱われるカレーの材料についての解説が詳しく書かれています。
また、「万病に効く」とするカレーのレシピがより多く載っています。
たとえば、大根のピリ辛漬け、ナガイモの叩きスパイシーサラダ、きんぴらごぼうターメリック風味、スパイシーかぼちゃのスープ、厚揚げとカリフラワーのサブジ、豚肉とタマネギのエスニック炒め……。
スープカレー
まあ要するに、既存の料理に、カレー粉をかけてカレー味にしているだけですが、それが合うものと合わないものがありますから、いずれにしてもこうしたレシピは参考になると思います。
しかし、前回ご紹介した吉田たかよし氏の『なぜ、東大生はカレーが好きなのか』とは、「カレーがいい」という結論は一致するものの、狙いが異なると思われることが一点だけあります。
吉田たかよし氏は、医学・医療とは直接結び付けず、あくまで「食生活でも体にいいことしましょう」ということでカレーを紹介していました。
ですから、法律上は「食品」になりますが、食材ではなく「健康食品」であるサプリメントとしてのウコンに対しては、歯切れがよくありませんでした。
しかし、『ボケたくなければカレーを食べなさい』で川嶋朗氏は、1、2、4章ではカレーに関する章なのに、第3章で統合医療の説明を書いています。
つまり、カレーを食べることを「薬膳料理」という点から、統合医療の一環として位置づけている。もしくは、カレーは導入であり、統合医療へ誘うための書籍だったのか、という疑いを抱いてしまいます。
統合医療というのは、先日も書きましたが、通常医療と代替医療と言われるものを対等に考え、「両者の特性を最大限に活かし、一人ひとりの患者に最も適切な『オーダーメイド医療』を提供しようとするもの」(日本統合医療学会サイトより)といいます。
いかなる特性をどう活かすのかはわかりませんが、代替医療の定義に「エビデンス」はありませんから、それこそ、「鰯の頭」も解釈次第では含まれることになります。
そのひとつとしてカレーを紹介していることになるのです。
吉田たかよし氏も川嶋朗氏も、カレーで健康を目指すという点では同じですから、それだけでは違いがわかりにくいかもしれません。
が、本書が代替医療への誘いとしてカレーを使っているというなら、そこがちょっと気になるのです。
川島朗氏は、ネット掲示板で、「波動だとか水商売だとかにも手を出しているみたいだね」と書かれています。
http://ai.2ch.sc/test/read.cgi/newsplus/1422491774/
この書き込みは、根も葉もないことなのでしょうか。
私はこの方が、以前在籍していた東京女子医科大学附属青山自然医療研究所クリニックを、「十分な説明もなく、いきなり『クリニックを閉じなさい』と通告」されたという告発記事を見たことがあります。
引用しようと思って雑誌を探していたら、web版にそのまま公開されていました。
川嶋朗医師が告発「女子医大は末期がん患者を切り捨てた!」- WEB女性自身(2014年9月27日06時00分)
http://news.infoseek.co.jp/article/joseijishin_d10481
ここで問題にしたいのは、クリニックが「オリジナルの総合医療を行っていた」ところであり、閉鎖によって、「日本の代替医療はさらに遅れます」と川嶋朗氏が語っていることです。
要するに、東京女子医科大学附属青山自然医療研究所クリニックというのは、医師免許を持つ人が、堂々とエビデンスのない診療をできるところだったということです。
少なくとも「ホメオパシー」は、健康保険で行う通常治療ではありません。
事実診療も保険適用外の自由診療でした。
そして、川島朗氏の肩書が、まさに“そのもの”です。
日本ホメオパシー医学会理事、日本波動医学協会会長、植物・芳香医学フォーラム評議員、気の医学会世話人など……。
植物・芳香医学フォーラム。おそらく、『水からの伝言』だの、活性水素の何とか還元水だのを賞賛しているのでしょう。
もちろん、医学者としてそうしたことを研究してはいけない、と述べているのではありません。
ただし、医師であるなら、エビデンスのあるものとないものは、次元の異なるものとして扱うべきだと私は思うのです。
同書のカレーに関するエピソードやターメリックの疫学調査などは、間違いではないでしょう。
ただ、統合「医療」云々というと、それで病気を治す期待をするようになってしまうかもしれません。
私たちはカレーについて、今までどおり、健康にもよいといわれているし美味しく食べよう、というぐらいの気持ちでいいのではないかと思います。
カレーを推奨する医師の書籍としては、先日、吉田たかよし氏の「『なぜ、東大生はカレーが好きなのか』カレーを食べて脳機能向上」をご紹介しました。
内容は、ある一点を除けば構成としては同書と基本的に同じです。
本の題名通り、カレーを食べるインドではアルツハイマー病が少ないという話から入っています。
今回の『ボケたくなければカレーを食べなさい』の方が、ターメリックだけではなく、蕃椒(唐辛子)、丁香(グローブ)、大蒜(ガーリック)、陳皮(ミカンの皮)など、漢方として扱われるカレーの材料についての解説が詳しく書かれています。
また、「万病に効く」とするカレーのレシピがより多く載っています。
たとえば、大根のピリ辛漬け、ナガイモの叩きスパイシーサラダ、きんぴらごぼうターメリック風味、スパイシーかぼちゃのスープ、厚揚げとカリフラワーのサブジ、豚肉とタマネギのエスニック炒め……。
スープカレー
まあ要するに、既存の料理に、カレー粉をかけてカレー味にしているだけですが、それが合うものと合わないものがありますから、いずれにしてもこうしたレシピは参考になると思います。
「ターメリックを使っているなら、カレー南蛮、カレー肉ジャガなど何でもいい。私も貧乏学生時代(北大医学部)は、ずっとカレーでした。母親が段ボールに米とカレールーを詰めて送ってくるからです。カレーによるボケ予防の何がいいのかというと、毎日食べても飽きないこと。良薬でも続けられなければ意味がありません」(『日刊ゲンダイ』(2015年1月29日付)
しかし、前回ご紹介した吉田たかよし氏の『なぜ、東大生はカレーが好きなのか』とは、「カレーがいい」という結論は一致するものの、狙いが異なると思われることが一点だけあります。
いかなる特性をどう活かすのか?
吉田たかよし氏は、医学・医療とは直接結び付けず、あくまで「食生活でも体にいいことしましょう」ということでカレーを紹介していました。
ですから、法律上は「食品」になりますが、食材ではなく「健康食品」であるサプリメントとしてのウコンに対しては、歯切れがよくありませんでした。
しかし、『ボケたくなければカレーを食べなさい』で川嶋朗氏は、1、2、4章ではカレーに関する章なのに、第3章で統合医療の説明を書いています。
つまり、カレーを食べることを「薬膳料理」という点から、統合医療の一環として位置づけている。もしくは、カレーは導入であり、統合医療へ誘うための書籍だったのか、という疑いを抱いてしまいます。
統合医療というのは、先日も書きましたが、通常医療と代替医療と言われるものを対等に考え、「両者の特性を最大限に活かし、一人ひとりの患者に最も適切な『オーダーメイド医療』を提供しようとするもの」(日本統合医療学会サイトより)といいます。
いかなる特性をどう活かすのかはわかりませんが、代替医療の定義に「エビデンス」はありませんから、それこそ、「鰯の頭」も解釈次第では含まれることになります。
そのひとつとしてカレーを紹介していることになるのです。
吉田たかよし氏も川嶋朗氏も、カレーで健康を目指すという点では同じですから、それだけでは違いがわかりにくいかもしれません。
が、本書が代替医療への誘いとしてカレーを使っているというなら、そこがちょっと気になるのです。
カレーは「医療」ではなく「食材」として
川島朗氏は、ネット掲示板で、「波動だとか水商売だとかにも手を出しているみたいだね」と書かれています。
http://ai.2ch.sc/test/read.cgi/newsplus/1422491774/
この書き込みは、根も葉もないことなのでしょうか。
私はこの方が、以前在籍していた東京女子医科大学附属青山自然医療研究所クリニックを、「十分な説明もなく、いきなり『クリニックを閉じなさい』と通告」されたという告発記事を見たことがあります。
引用しようと思って雑誌を探していたら、web版にそのまま公開されていました。
川嶋朗医師が告発「女子医大は末期がん患者を切り捨てた!」- WEB女性自身(2014年9月27日06時00分)
http://news.infoseek.co.jp/article/joseijishin_d10481
ここで問題にしたいのは、クリニックが「オリジナルの総合医療を行っていた」ところであり、閉鎖によって、「日本の代替医療はさらに遅れます」と川嶋朗氏が語っていることです。
要するに、東京女子医科大学附属青山自然医療研究所クリニックというのは、医師免許を持つ人が、堂々とエビデンスのない診療をできるところだったということです。
少なくとも「ホメオパシー」は、健康保険で行う通常治療ではありません。
事実診療も保険適用外の自由診療でした。
そして、川島朗氏の肩書が、まさに“そのもの”です。
日本ホメオパシー医学会理事、日本波動医学協会会長、植物・芳香医学フォーラム評議員、気の医学会世話人など……。
植物・芳香医学フォーラム。おそらく、『水からの伝言』だの、活性水素の何とか還元水だのを賞賛しているのでしょう。
もちろん、医学者としてそうしたことを研究してはいけない、と述べているのではありません。
ただし、医師であるなら、エビデンスのあるものとないものは、次元の異なるものとして扱うべきだと私は思うのです。
同書のカレーに関するエピソードやターメリックの疫学調査などは、間違いではないでしょう。
ただ、統合「医療」云々というと、それで病気を治す期待をするようになってしまうかもしれません。
私たちはカレーについて、今までどおり、健康にもよいといわれているし美味しく食べよう、というぐらいの気持ちでいいのではないかと思います。
ボケたくなければカレーを食べなさい 医者が教える「カレーが健康によい理由」 (Y’s BOOKS)
- 作者: 川嶋 朗
- 出版社/メーカー: メトロポリタンプレス
- 発売日: 2014/12/09
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
2015-02-26 00:44
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