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『喜劇駅前温泉』1960年代岩代(磐梯)熱海が舞台のご当地喜劇

『喜劇駅前温泉』(1962年、東京映画/東宝)を収録した、『東宝昭和の爆笑喜劇DVDマガジン』(Vol.49)が明日10日発売になります。いよいよこの分冊百科も“ラス前”になりました。『喜劇駅前温泉』の舞台は福島県郡山市の岩代熱海(現磐梯熱海)。温泉旅館協会主催町おこしの場面では、今や大御所の赤木春恵も水着姿で頑張っています。

『喜劇駅前温泉』より
『喜劇駅前温泉』より

『喜劇駅前温泉』の舞台は、国鉄磐越西線の岩代熱海駅。今は磐梯熱海駅と改称されています。

『喜劇駅前温泉』に出てきた当時の岩代熱海駅
『喜劇駅前温泉』に出てきた当時の岩代熱海駅


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現在の磐梯熱海駅

そこは、福家旅館(森繁久彌)、極楽荘(伴淳三郎)というふたつの大きな旅館が張り合っています。

森繁久彌側には床屋の淡島千景、芸者置屋の沢村貞子、伴淳三郎側には夫人の森光子、指圧派遣元の赤木春恵がついています。

伴淳三郎は地元観光協会の会長をつとめていますが、任命されたた事務局長(フランキー堺)は、どちらかというと森繁久彌寄り、という3人はいつもの対立関係です。

森繁久彌の娘には司葉子、伴淳三郎の隠し子には夏木陽介がいますが、2人は結婚を考えています。

伴淳三郎の義理の妹(菅井きん)は、娘と物乞いをしています。

観光協会は、町おこしを考えますが、そこで出てきたアイデアは温泉の町ということで三助大会。

森繁久彌と三原葉子、伴淳三郎と赤木春恵、柳家金語楼と旭ルリという3組が、どういうルールかよくわかりませんが競い、伴淳三郎チームが優勝します。

いろいろあって、夏木陽介が隠し子であることも明らかになり、司葉子とも無事結婚します。

娘を送り出す森繁久彌には喪失感が。それを菅井きんの娘が慰めてくれます。

その他、森繁久彌の軍隊時代の下士官役で三木のり平が、その女房に淡島千景の友人という設定で淡路恵子が出演。福家旅館にしばらく客として宿泊します。

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1960年代の福島がロケ地


見どころは、昭和30年代(1960年代)の、猪苗代湖、磐梯吾妻スカイラインなど福島山間部のロケーションだと思います。

原発で有名になってしまいましたが、福島は山も海も湖ある、広くて風光明媚なところなのです。

劇中、菅井きんと幼い娘による物乞いの母子が出てきましたが、この頃は傷痍軍人など東京でもめずらしくない時代でした。

実の娘が嫁いだ森繁久彌は、今度はその娘を引き取って育てることを示唆するラストシーンです。

絶対的貧困の残る昭和中期に、人と人とが情でつながることは美徳であり実際そういうことはあったので、時代を表現したいいまとめ方だと思いました。

今回は、このシリーズの当初の売り物であった、実在の出来事からストーリーを展開しているわけではありません。

たとえば、今で言う川崎市麻生区の再開発を描いた『喜劇駅前団地』、東北本線赤羽駅の再開発を舞台にした『喜劇駅前開運』、1959年8月の静岡富士川河口を溢水させた台風をストーリーのクライマックスに組み込んだ『喜劇駅前弁当』などと違い、ストーリー自体はすべて創作です。

ただ、観光地としての観光協会の努力ぶりが伝わってきます。

ちなみに本作は、福島県と、飯坂温泉の観光協会が「協力」としてクレジットが入っています。

レビューを見ると、『男はつらいよ』に比べると喜劇駅前シリーズは喜劇として駄作だという意見もあるのですが、両作品は狙っているところが違うのではないでしょうか。

『男はつらいよ』は、パターン化したストーリーに様式美を感じる作品で、松竹映画の王道である小津安二郎的な上品さを意識しながら、人の出会いと別れを美しく描いています。だからこそ、国民的映画として誰もが安心して評価できたのです。

喜劇駅前シリーズは、ギャグや設定で笑わせる喜劇ではなく、かといって様式美をもっているわけでもなく、人間の弱さ、卑しさ、社会の厳しさなどを実在の土地柄や出来事を使って下世話に、シニカルに、そしてシリアスに描く、喜劇らしくない喜劇なのです。

ですから、どちらが上とか下とかという比較は、あまり意味がないと思います。

次回の『東宝昭和の爆笑喜劇DVDマガジン』(Vol.50)はいよいよラスト、『喜劇駅前飯店』(1962年)です。

巨人の王貞治一塁手が本人役で出演します。同作はたぶんまだ観ていないので、今から楽しみです。

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