『喜劇駅前弁天』(1966年、東京映画/東宝)を鑑賞しました。喜劇駅前シリーズ全24作中14作目の作品です。先日(11日)一周忌だった、淡路恵子さんがレギュラー出演していた同シリーズで、現在市販されている最後の作品になります。舞台は長野県岡谷市諏訪湖のほとりです。(以下敬称略)
淡路恵子が亡くなって1年たちました。
Google検索画面より
淡路恵子は、本作『喜劇駅前弁天』出演後、『喜劇駅前漫画』にも出演。翌年、『父子草』(東京映画)に出演後、萬屋錦之介と結婚したため寿引退となります。
『父子草』より
といっても、萬屋錦之介との結婚は66年といわれていますから、仕事から遠ざかったのは結婚を機にというより、三男の小川晃廣(故人)を妊娠した産休が直接のきっかけと思います。
その後、萬屋錦之介の不倫と離婚。
四男(萬屋吉之亮)を自ら告訴して実刑にし、自殺後も葬儀に参列しなかったなど激動の人生を歩みましたが、その生き様は、まさに自著のタイトルにもある「凛として、ひとり」。
人に媚びない、妥協を許さない、打算で動かない正直な生き方の人であったことが感じられます。
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淡路恵子さんが亡くなって思い出す作品と事件
私もこの間、東宝クレージー映画、社長リーズ、そしてこの駅前シリーズと、淡路恵子の出演した映画を数多く観るようになり、“遅れてきたファン”というより、“今更遅すぎるファン”になりました。
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ネタバレ御免のあらすじ
諏訪湖のほとりが今回の舞台です。
手打ち信州そば屋を営む森繁久彌と淡島千景夫妻。駅前ハイヤー会社の伴淳三郎と乙羽信子夫妻。美容院の三木のり平と淡路恵子夫妻。三人は戦友同士で、夫人たちも勤労奉仕で同じ陣地にいた仲。
淡島千景の弟で、そば屋で働くのはフランキー堺。その恋人が大空真弓。やはりそば屋の従業員が松山英太郎。
地元の芸者置屋の女将が沢村貞子。芸者が池内淳子と松尾和子です。
そば屋は東京に支店がありますが、森繁久彌は出張を口実に、地元のホステス(野川由美子)を何とかしようとたくらんでいます。
伴淳三郎は池内淳子にお熱。松尾和子は、地元のミスコンであるミス弁天に芸者もエントリーさせろと、伴淳三郎に迫っています。
一方、町の青年婦人会のコーラスグループに入っている乙羽信子と淡路恵子は、町に赴任してきた津川雅彦にお熱となりますが、とくに熱心な乙羽信子に腹をたてた淡路恵子が、三木のり平から聞いた伴淳三郎と池内淳子の関係をバラしてしまい、てんやわんや。
しかし、やはり戦友で、南米に渡って成功して故郷に錦を飾った山茶花究の婚活に、池内淳子が応じたことで一件落着。
一方、野川由美子には男(藤田まこと)がいて、2人は岡谷のそば屋まで来てお金をゆすりますが、フランキー堺が学生時代、藤田まことの先輩で弱みを握っていたためこちらも解決。
諏訪湖で開かれたミス弁天には大空真弓が選ばれ、出演者たちが参加するパレードでエンディングとなります。
スポーツ選手のゲストはサンダー杉山
喜劇駅前シリーズは、『喜劇駅前飯店』で王貞治、『
喜劇駅前茶釜』でジャイアント馬場、『
喜劇駅前女将』で出羽の花、出羽錦、栃ノ海、栃光ら、その当時のスポーツ分野の人気者が出演しています。
今回は誰かというと、国際プロレスや全日本プロレスなどで活躍したサンダー杉山(元IWA世界ヘビー級選手権者)です。
といっても、この当時のサンダー杉山は、まだ日本プロレスに入門したばかりで、デビュー戦も行っていない練習生・杉山恒治でした。
役は信州そば食い競争で、フランキー堺とともにソバを食べていただけです。セリフも役名もありません。この出演歴はWikiにも出ていません。
『喜劇駅前弁天』より
大食い役ということで、日本プロレスにイキのいい若手で誰かいないかとオファーがあったのか、杉山恒治が元東京オリンピックのレスリング代表選手だったから声がかかったのかは、当時の杉山恒治の知名度がわからないので何とも言えません。
でも「杉山恒治」は、沢村貞子や松山英太郎と同格なので、「練習生」にしてはいい扱いです。
『喜劇駅前弁天』より
やはり元東京オリンピック選手という肩書も配慮されていたように思います。
また、芸者役は『
喜劇駅前金融』に引き続き松尾和子が出演。
前回は和田弘とマヒナスターズと一緒に出ましたが、今回は単独で出演しています。
ということで、『
駅前旅館』や『
喜劇駅前団地』など、シリーズ初期にみられた社会性はありませんが、増えたレギュラー陣にみな見せ場がある、賑やかな群像喜劇として楽しめる作品だと思います。
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