『臓器の急所ー生活習慣と戦う60の健康法則』(角川SSC新書)を読みました。著者は吉田たかよし氏です。脳、血管、血液、内蔵など、人間の体のすべての部位について、病気のサインや健康維持の対策などを、見開き単位でタイトル通り60編まとめています。
今年に入って、吉田たかよし氏の書籍をご紹介するのははやくも4度目です。吉田たかよしのにわかファンになったような感じですね。
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Jカーブ効果と疫学調査の虚実
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『危険な病気の意外な予兆69』意外なところからシグナル
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『仕事のギリギリ癖がなおる本』先送りの原因は自己愛だった!?
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『なぜ、東大生はカレーが好きなのか』カレーを食べて脳機能向上
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『仕事力のある人の運動習慣』脳細胞が活発化は心臓血管能力から
Google検索画面より
読まれた方はお気づきのように、吉田たかよし氏の書籍は、必要な専門用語は入っているし、オーソドックスな書き方なのですが、それでも、医師や医学ジャーナリストらの書籍の中ではきわめて読みやすい書き方だと思います。
膨大な知識や情報が、頭のなかできちんと整理されているので、書き方もこなれているのでしょう。
そして、読みやすいということは、紹介しやすい、ということにつながっているわけです。
今回は、病気の前兆や健康を維持するための方法など、体全体の各部位についての「健康法則」を見開き単位でまとめています。順にご紹介しましょう。
血管や血液の健康法則とは……
第1章は「血管」、第2章は「血液」について「健康によいこと」をまとめています。主なものをご紹介します。
適度なウォーキング
吉田たかよし氏は、『仕事力のある人の運動習慣』において、ご紹介したように「1分間100歩」という具体的な目標数字を挙げています。
運動することで、血管の膜が一酸化窒素を発生し、血管の壁が拡張されるといいます。前回ご紹介した、心臓血管能力の向上につながるわけです。
さらに、運動は血栓の防止や、血圧降下にも役立つそうです。
もみ手
もみ手といっても、ゴマをするわけではありません。寒い時に手をこする揉み手です。
温かくなるから手をこするわけですが、こすることで副交感神経が優位になるから温かくなるといいます。
どういう原理か。
私たちは、意識しなくても(眠っている時でも)呼吸はするし、心臓も胃腸も動いています。
これは自律神経のはたらきによります。
自律神経は、交感神経と副交感神経で成り立っています。
交感神経は、活動しているときや興奮しているときに活性化し、副交感神経は、休息や睡眠などリラックスした時に優位になります。
両方のバランスで、私たちは起きて活動するときも眠っている時も、体の機能を安定的に動かせるわけです。
そして、病気に対する免疫力は、交感神経が活発なときはウイルスなど外敵とたたかう免疫が活発に働き、副交感神経が優位の時は体内を守る免疫が活発になるといわれています。
つまり、揉み手をすることで、体の緊張がほぐれ、体内を守る免疫力が働くようになるということです。
余談ですが、これを応用したのが、指先の末梢神経に刺激を与え、副交感神経を優位にすることでがんなどの体内の異常を克服すると標榜する、自律神経免疫治療法です。
新潟の温泉病院の外科部長だった福田稔医師が臨床を、新潟大学大学院の安保徹教授が理論面を担当したという治療法です。
この治療法の成果は、量・質共に医学界で認知されたとは言いがたいですが、もととなる理論自体は、こんにち、いろいろな医師・医学者が当たり前のように述べています。
私は、『
爪もみ、など健康情報を振り返る』で書いたように、指先の末梢神経刺激用の電子鍼『ハリボーイ』を購入して、一家で使っていましたが、三日坊主でした(汗)
まあ、指先に電子鍼を当てるよりは、揉み手のほうが簡単で安全ですね。
普段から、揉み手をするクセをつけておくといいでしょうね。
おかずからゆっくり食べる
血糖値対策で有名なことですが、食べるときは、おかずから食べてご飯を後から食べること。
そうすれば、ご飯をより少量で済ませることができるのと、空腹時の摂取によってより多くの糖質を吸収しないようにするためだそうです。
そして、ゆっくりかんで食べること。よく噛んで食べると赤血球が健康になるといいます。
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キャベツ、大根、リンゴを食べる
キャベツ、大根は白血球の産生に役立ち、リンゴを食べると血圧が下がると書かれています。
キャベツ、大根は、とくに血液系のがんによる化学療法を経験したご本人や家族の方なら有名な話です。
抗がん剤を使うと、骨髄がダメージをうけるので、白血球が少なくなるのです。
その対策として、キャベツがいい、大根がいい、バナナがいい、という話は、ネットを見ても、サイトや関連掲示板に出てきます。
要するにそうした話は、根も葉もないものではなく、少なくとも健康な状態でのコンディション維持には、医師がおすすめしているものだということです。
脳や内臓の健康法則とは……
第3章は、吉田たかよし氏お得意の「脳」。ただし、本書は「アタマが良くなる」ではなく、脳の病気について述べています。
主な見出しは、くも膜下出血は発症の可能性が事前にわかる、脳梗塞は症状が起こってから3時間が勝負、サウナ後のビールは脳梗塞への直行便、酔って頭を打ったら「3ヵ月後の異変」に注意……など、ちょっとセンセーショナルで気になるものばかり。
詳しくは同書をご覧ください
第4章~第10章は、心臓、肝臓、腎臓、胃、腸、肺、目の健康に関する話です。
たとえば、「心臓呼吸法」で血管が健康になる、「沈黙の臓器」が発する小さな悲鳴の聞きとり方、痩せすぎると腎臓が移動する、ネバネバ食品が胃液から胃を守る、風邪をこじらせると肺炎になる怖い理由、など、これまた気になる話がたくさん
書かれています。
手背静脈チェック法とは……
同書には、血管の健康具合を調べる「手背静脈チェック法」というのが紹介されています。
どういうものかというと、手を下に下げると、手の甲には血管が盛り上がります(手背静脈)。
それが、手を心臓の位置より上に挙げると、盛り上がりが消えます。
このとき、なかなか盛り上がりが消えないと、静脈の血液の流れが悪くなっているのだそうです。
これはもう、だれでもできる簡単なチェックですね。
……ということで、同書は吉田たかよし氏の新発見というより、巷間すでに言われていることを医師としてまとめたことが中心の書籍といったほうがいいかもしれません。
リファレンスマニュアルとして、知識の整理を助けてもらえると思います。
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