『コント55号と水前寺清子の神様の恋人』車寅次郎がここから誕生!? [懐かし映画・ドラマ]
『コント55号と水前寺清子の神様の恋人』(1968年、松竹)を鑑賞しました。中身はタイトル通りです。当時、テレビで大ブレイクしていたコント55号(萩本欽一、坂上二郎)と、ドラマに出る前の歌手として絶頂にあった頃の水前寺清子を前面に押し出してストーリーが展開されています。
この作品は上映当時、父に連れられて、蒲田松竹という映画館で観たのを覚えています。
蒲田松竹は、旧松竹蒲田撮影所の跡地とは道路を隔てて隣にありました。今はゲームセンターが建っています。
ストーリーはほとんど覚えていませんでしたが、とにかく場内は大爆笑。
世の中のルールも、大人の駆け引きもわからない超幼児の私ですら、おかしくておかしくて仕方なかった記憶があります。
で、今見ると、出演者も粒ぞろいで喜劇として悪くはないと思いますが、当時の価値観に切り替えないまま観ても、大爆笑というほどではなかったですね。
今は当たり前に見えることが、当時としてはきっと、これまでにない新機軸の笑いだったんだろうと思います。
たとえばこんなシーン。愛人(宮地晴子)と一緒のところをあねさん(関千恵子)にバレそうになって屋根裏から逃げたヤクザの親分(内田良平)。下にいたラーメン屋の屋台をひく坂上二郎に、はしごをかけてくれと頼みます。
坂上二郎はいったんはしごをかけながら、すぐに外して親分におねだりの条件をつけるのです。そして、内田良平がそれを呑んではしごを降りようとすると、またひょいと外して新たな条件を加えるのです。
『コント55号と水前寺清子の神様の恋人』より
当時は、親分が一刻もはやく逃げ出したいのに、それをさせない坂上二郎のはしごを外すタイミングはたしかにおかしかったんでしょう。そういう笑わせ方自体が当時は新しかったのだと思います。
それとともに、コント55号のネタは、坂上二郎が何かしようとすると、萩本欽一がいろいろ条件をつけてなかなかさせないというパターンでしたが、それを、ふだんはやられる側の坂上二郎がやっているおかしさで、館内大爆笑だったのだと思います。
ジラされる二郎さん、という当時のキャラクターのおかしさを知っている人じゃないと、わからない笑いなんでしょうね。
よく、昔の喜劇映画を「つまらなかった」とレビュー記事に書いているのを見かけるのですが、単純に現在の文化や価値観で見たら、そりゃたいていはそうでしょう。
でもそれが正当な評価といえるのかどうか。
昔の映画は、その時代の価値観や文化を考慮し、脳内はその時代に戻るぐらいの気持ちで観なければならないので、そのへんが少し難しいと思います。
萩本欽一は、組んでいたトラックの運転手(田中邦衛)と喧嘩別れして無一文。悠木千帆(樹木希林)が作っている屋台のラーメンでタダ食いを企んでいると、そこの主人は旧知の友人(坂上二郎)。十年ぶりの再開でした。
萩本欽一は、坂上二郎の家に厄介になって屋台を手伝います。
そのときに遭遇したのは、かつての恩師で、今は役所の職員をつとめる益田喜頓と息子の藤岡弘。そしてかつて2人の初恋の人に瓜二つの銭湯の看板娘(水前寺清子)と父親の伴淳三郎。
ツケはためられるけれど便宜もはかってもらう一家の親分が内田良平。飲み屋の女将が中原早苗。地域の巡査が三遊亭歌奴(後の三遊亭円歌)。
その他カメオ出演に近いですが、三木のり平、ナンセンストリオ、牧伸二、南州太郎、野末陳平(国会議員になる前の黒眼鏡時代)、E・H・エリックなど当時の売れっ子が揃います。
最後は、坂上二郎が念願のマイホームを建て、藤岡弘と水前寺清子の恋人同士が萩本欽一のとりもちで結ばれ、水前寺清子に失恋した萩本欽一は、迎えに来た田中邦衛と和解してトラックの助手に戻ります。
以前ご紹介した『こちら55号応答せよ! 危機百発』のとき同様、萩本欽一だけがハッピーエンドにならない結末でした。
この結末でお察しの方がおられるかもしれませんが、たぶんコント55号の萩本欽一の役回りは、その後誕生した『男はつらいよ』のプロトタイプだった可能性があります。
萩本欽一は、松竹作品では、水前寺清子の他にも、倍賞美津子、由美かおるなどにフラれています。
『男はつらいよ』が始まったのは、この作品の1年後である1969年でした。
この当時、まだ東宝の契約が残っていたコント55号でしたが、クレージーキャッツとくらべると、明るくハイソな社風にイマイチ馴染めないように見受けました。
萩本欽一特有の、シャイでナイーブな個性や、浅草喜劇の出身ということを考えると、松竹のほうが水があっていたのかもしれません。
同作は水森亜土がタイトル画を担当。
『コント55号と水前寺清子の神様の恋人』より
水前寺清子は劇中でオリジナル曲を7曲披露する他にナレーションも担当しています。
当然ですが、セットなども昭和40年代中頃の雰囲気がよく出ています。
当時をご存じの方は、きっとその時代に戻ったような気持ちで楽しめる作品だと思います。
この作品は上映当時、父に連れられて、蒲田松竹という映画館で観たのを覚えています。
蒲田松竹は、旧松竹蒲田撮影所の跡地とは道路を隔てて隣にありました。今はゲームセンターが建っています。
ストーリーはほとんど覚えていませんでしたが、とにかく場内は大爆笑。
世の中のルールも、大人の駆け引きもわからない超幼児の私ですら、おかしくておかしくて仕方なかった記憶があります。
で、今見ると、出演者も粒ぞろいで喜劇として悪くはないと思いますが、当時の価値観に切り替えないまま観ても、大爆笑というほどではなかったですね。
今は当たり前に見えることが、当時としてはきっと、これまでにない新機軸の笑いだったんだろうと思います。
たとえばこんなシーン。愛人(宮地晴子)と一緒のところをあねさん(関千恵子)にバレそうになって屋根裏から逃げたヤクザの親分(内田良平)。下にいたラーメン屋の屋台をひく坂上二郎に、はしごをかけてくれと頼みます。
坂上二郎はいったんはしごをかけながら、すぐに外して親分におねだりの条件をつけるのです。そして、内田良平がそれを呑んではしごを降りようとすると、またひょいと外して新たな条件を加えるのです。
『コント55号と水前寺清子の神様の恋人』より
当時は、親分が一刻もはやく逃げ出したいのに、それをさせない坂上二郎のはしごを外すタイミングはたしかにおかしかったんでしょう。そういう笑わせ方自体が当時は新しかったのだと思います。
それとともに、コント55号のネタは、坂上二郎が何かしようとすると、萩本欽一がいろいろ条件をつけてなかなかさせないというパターンでしたが、それを、ふだんはやられる側の坂上二郎がやっているおかしさで、館内大爆笑だったのだと思います。
ジラされる二郎さん、という当時のキャラクターのおかしさを知っている人じゃないと、わからない笑いなんでしょうね。
よく、昔の喜劇映画を「つまらなかった」とレビュー記事に書いているのを見かけるのですが、単純に現在の文化や価値観で見たら、そりゃたいていはそうでしょう。
でもそれが正当な評価といえるのかどうか。
昔の映画は、その時代の価値観や文化を考慮し、脳内はその時代に戻るぐらいの気持ちで観なければならないので、そのへんが少し難しいと思います。
豪華喜劇陣出演と萩本欽一がまたしても寂しい結末
萩本欽一は、組んでいたトラックの運転手(田中邦衛)と喧嘩別れして無一文。悠木千帆(樹木希林)が作っている屋台のラーメンでタダ食いを企んでいると、そこの主人は旧知の友人(坂上二郎)。十年ぶりの再開でした。
萩本欽一は、坂上二郎の家に厄介になって屋台を手伝います。
そのときに遭遇したのは、かつての恩師で、今は役所の職員をつとめる益田喜頓と息子の藤岡弘。そしてかつて2人の初恋の人に瓜二つの銭湯の看板娘(水前寺清子)と父親の伴淳三郎。
ツケはためられるけれど便宜もはかってもらう一家の親分が内田良平。飲み屋の女将が中原早苗。地域の巡査が三遊亭歌奴(後の三遊亭円歌)。
その他カメオ出演に近いですが、三木のり平、ナンセンストリオ、牧伸二、南州太郎、野末陳平(国会議員になる前の黒眼鏡時代)、E・H・エリックなど当時の売れっ子が揃います。
最後は、坂上二郎が念願のマイホームを建て、藤岡弘と水前寺清子の恋人同士が萩本欽一のとりもちで結ばれ、水前寺清子に失恋した萩本欽一は、迎えに来た田中邦衛と和解してトラックの助手に戻ります。
以前ご紹介した『こちら55号応答せよ! 危機百発』のとき同様、萩本欽一だけがハッピーエンドにならない結末でした。
萩本欽一は車寅次郎のプロトタイプ!?
この結末でお察しの方がおられるかもしれませんが、たぶんコント55号の萩本欽一の役回りは、その後誕生した『男はつらいよ』のプロトタイプだった可能性があります。
萩本欽一は、松竹作品では、水前寺清子の他にも、倍賞美津子、由美かおるなどにフラれています。
『男はつらいよ』が始まったのは、この作品の1年後である1969年でした。
この当時、まだ東宝の契約が残っていたコント55号でしたが、クレージーキャッツとくらべると、明るくハイソな社風にイマイチ馴染めないように見受けました。
萩本欽一特有の、シャイでナイーブな個性や、浅草喜劇の出身ということを考えると、松竹のほうが水があっていたのかもしれません。
同作は水森亜土がタイトル画を担当。
『コント55号と水前寺清子の神様の恋人』より
水前寺清子は劇中でオリジナル曲を7曲披露する他にナレーションも担当しています。
当然ですが、セットなども昭和40年代中頃の雰囲気がよく出ています。
当時をご存じの方は、きっとその時代に戻ったような気持ちで楽しめる作品だと思います。
シネマ de 昭和 コント55号と水前寺清子の神様の恋人 [DVD]
- 出版社/メーカー: 松竹ホームビデオ
- 発売日: 2011/10/17
- メディア: DVD
Facebook コメント