『若い季節』1960年代前半を活き活き描く青春ミュージカル群像劇 [東宝昭和喜劇]
『若い季節』(1962年、東宝)を収録した『東宝昭和の爆笑喜劇DVDマガジン』(Vol.44)が発売されたので、さっそく鑑賞しました。NHKで放送されて(1961年~1964年)好評だったドラマを映画化した作品です。化粧品会社を舞台にした、当時のスターたちの青春群像劇を私は待ち望んでいました。やっと44冊目にして発売になりました。
東宝 昭和の爆笑喜劇DVDマガジン 2014年 12/16号 [分冊百科]
- 作者:
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2014/12/02
- メディア: 雑誌
1960年代前半のテレビ史を振り返る番組や書籍などで、必ず出てくるNHKの番組は、『バス通り裏』(1958年4月7日~1963年3月30日)、『夢であいましょう』(1961年4月8日~1966年4月2日)、『若い季節』(1961年4月9日~1964年12月27日)などです。
『バス通り裏』は、十朱幸代や岩下志麻が出演したドラマのようですが、私は覚えていません。
『夢であいましょう』はバラエティ番組。坂本九などが出演したことは、以前書きました。
『坂本九 上を向いて歩こう』(日本図書センター)より
『シャボン玉ホリデー』(1961年6月4日~1972年10月1日、日本テレビ)は、その民放的な自由さを伴った発展形として作られたのだろうと思います。
そして、『若い季節』は、銀座の化粧品会社を舞台にした青春群像劇です。
群像劇というと、主役格が複数いて、それぞれにドラマを展開する場合もありますが、この作品は、会社そのものが「主役」になっていて、出演者みんながそれを支えています。
その意味では出演者それぞれに見せ場があります。
私はどちらかというと、ヒーローものよりも、そういう“リベラルな”作品が好きです。
『東宝昭和の爆笑喜劇DVDマガジン』(Vol.44)には、テレビ版の『若い季節』についてこう説明されています。
「社長役の淡路恵子はじめ、豪華配役陣が話題をよんだ。主な出演者だけでも松村達雄、有島一郎、三木のり平、クレージーキャッツ、黒柳徹子、坂本九、ジェリー藤尾、中尾ミ工、園まリ、伊東ゆかり、森光子、沢村貞子、渥美清、西郷輝彦、伴淳三郎、藤田まこと、小沢昭一など、そうそうたる顔ぶれが並ぶ。出演者は続々と増え、第80話でようやく全員が一堂に会したという。」
当時のスクリーンやお茶の間の人気者が、それぞれ存在意義のある役で次々登場していたなんてすごいですね。
『東宝昭和の爆笑喜劇DVDマガジン』(Vol.44)より
ここにうつっている俳優の名前を全部言えるのは60代以上でしょうか。
この頃から黒柳徹子(左から4人目)のヘアスタイルは個性的ですね。
左隣りの横山道代と、水谷良重(左から6人目)で3人娘だったと思いますが、私は子供の頃は水谷良重に何となく憧れました。
タッパがあってカッコ良かったからでしょうね。
今回は、このドラマを映画化したものです。
この時代は、映画がテレビよりも格が上とされていましたが、テレビで放送中の番組を映画化するというのは、いかにこの番組が当時注目されていたか、ということだと思います。
ポスターをご覧いただくと、“みんなが主役”であることがわかります。
普通は、主役が大きくドーンと出て、そのまわりに助演が3~4人という作り方ですが、今回の『若い季節』は、14人がほぼ同格で載っています。
では作品中のメインタイトルの出演者が表示はどうだったかというと、淡路恵子と団令子がトップで出ていました。
淡路恵子は会社の社長役であることと、この頃の団令子は、『お姐ちゃん』シリーズという当たり役ができて、東宝の若手女優ではナンバーワンの扱いだったので、序列としては妥当だったのかもしれません。
出演者が多すぎて、たぶんわかりにくいあらすじ
化粧品会社プランタンが発売予定だった液体化粧クリームが、土壇場になってライバル会社のトレビアン化粧品に抜かれたところからドラマは始まります。
社長(淡路恵子)は専務(松村達雄)常務(平田昭彦)営業部長(宮田洋容)宣伝課長(ハナ肇)人事課長(有島一郎)らを呼びつけて対策会議を開き、急遽プランタンもその日に発売開始を決定。
有島一郎は、雑用係(坂本九)から、社員の昼の出前を聞き出し、急に豪華なものを食べていないか(つまりスパイ料で金回りはよくなっていないか)と身辺調査を始めます。
宣伝係長(植木等)は、女子社員たち(団令子、浜美枝、藤山陽子、中真千子)にその旨伝えてハッパをかけますが、売り場にはトレビアン化粧品の社員(若林映子)が客を装ってイチャモンをつけにきたので、浜美枝は怒ってトレビアン化粧品に乗り込んで同じことをしようとします。
が、先方の宣伝部員(佐原健二)にあしらわれ、逆に化粧品を買わされてしまいます。
浜美枝は同僚を連れて、母親(沢村貞子)が切り盛りしている料亭でやけ酒。
浜美枝に憧れている板前(世志凡太)は、その一団に植木等が入っていたので気が気ではありません。
淡路恵子は液体口紅開発のため、化学者のケン・加賀見と契約しようとしますが、それも事前にトレビアンに漏れてあやうく横取りされるところでした。
が、ケン・加賀見と称する人物(谷啓)は藤山陽子を気に入ったといって契約したため、こちらは横取りされませんでした。
スパイ探しを継続中の坂本九は、平田昭彦が、トレビアン化粧品の専務(清水元)と話しているのを目撃し、スパイが平田昭彦であることをつきとめます。
今回は大勢の出演者の一人に過ぎませんが、植木等の無責任さと勝負強さ、そしてときおり見せる詰めの甘さなども描かれています。
喫茶店のマスター(青島幸男)の掛取りから逃げたり、液体口紅のネーミングでアイデアが採用されたりするのですが、その一方で営業課長(人見明)やその親類の学生(古今亭志ん朝)との麻雀では負けてしまいます。
プランタンの専属カメラマン(ジェリー藤尾)も、女子社員たちからおだれられてスパイの証拠探しを始めます。
ジェリー藤尾は全身美容術のエキスパート(三原葉子)のモデルになりながら、谷啓はケン・加賀見の雑用係でニセモノであることを聞き出します。谷啓は清水元や平田昭彦とグルだったのです。
ケン・加賀見の本物は、三原葉子の恋人で箱根にいました(ビンボー・ダナオ)。
液体口紅の発表会の場でビンボー・ダナオが登場し、平田昭彦らの悪巧みが明らかにされます。ラストシーンは、プランタン化粧品の社員みんなが『若い季節』のテーマソングを歌うという東宝らしいめでたしめでたしです。
これだけたくさんの俳優が出ましたが、お手柄は坂本九とジェリー藤尾という、マナセプロ歌手コンビでした。
ミュージカル映画の楽しさを堪能できる明るい作品
見どころは、テンポのよいストーリー展開と、随所に登場する、出演者による歌と踊りのシーンです。
歌は全部で11曲歌われます。
ミュージカル映画という表現がピッタリです。
もう亡くなったの引退したりした人たちですが、これだけたくさん集まって活き活きと青春の仕事をしているのは、それだけでも貴重ですし、今見ても楽しくなります。
次々週の『東宝昭和の爆笑喜劇DVDマガジン』は、この続編である『続・若い季節』が収録されるそうなので、今から楽しみにしています。
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