坂本九といえば、『上を向いて歩こう』で世界的なヒットを記録した歌手です。阪神タイガース球団歌である通称『六甲おろし』を作詞した佐藤惣之助が先輩にあたります。偉大な卒業生を輩出したのは、旧東海道散策で遭遇した神奈川県川崎市立川崎小学校。同校の解説板から坂本九の歩んだ道を確認していきます。
旧東海道散策。前回は東海道川崎宿のおしまいの方にある
芭蕉の句碑を訪ねました。
今回はそこから5分ほど北上して右に入った所です。
川崎市立川崎小学校があります。
表札や郵便ポストが古風ですね。
そこには、「川崎小學校わたしたちの先輩」という解説板も立っています。
書かれているのは、詩人・作詞家の佐藤惣之助(1890~1942)と、歌手の坂本九(1941~1984)です。(敬称略)
佐藤惣之助の実家は東海道川崎宿の「砂子の本陣」を預かる家柄で、現在の川崎信用金庫本店は「生家跡」として、本店裏に「佐藤惣之助生誕の地碑」が建てられています。
佐藤惣之助が川崎小学校に在籍したのは1902年まで。20世紀に入ったばかりです。
要するに川崎小学校は100年を超える歴史持つということ。確認したら公式サイトには140周年と書かれています。伝統ある学校なんですね。
佐藤惣之助は詩人として優れた詩集や俳句を多く残しています。作詞家としての実績は、『赤城の子守唄』や『人生劇場』、さらに阪神タイガースの球団歌(六甲おろし)も手がけていますから、かなり幅広いですね。
先日訪ねた
東海道かわさき宿交流館でも、パネルで紹介されている「東海道川崎宿ゆかりの人」として、単独のパネルで紹介されている8人の名士の中に、佐藤惣之助も坂本九も入っています。
佐藤惣之助はともかく、坂本九が旧東海道の川崎宿とどう関係があるのかはわかりませんが、要するに「川崎市」ゆかりの人ということでしょう。
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坂本九は「本名」だった
ということで、もう一人は坂本九です。1954年に同校を卒業しています。
「
東芝未来科学館、坂本九さん追悼コンサートが熱かった川崎」で書いたように、川崎小学校では今年8月12日、在校生の合唱による「坂本九さん追悼コンサート」を、川崎ルフロンのシンデレラステップスで行っています。
事故後30年たっても、地元の先輩を忘れずに追悼するというのはいい企画だと思います。
このブログでは
東海道川崎宿についていくつか記事を書いているので、川崎ゆかりの人物として、坂本九について、少し詳しくその生涯を見ていこうと思います。
現在の川崎市川崎区で、9人兄弟の末っ子として生まれた坂本九。
「本名はひさしさん」と川崎市立川崎小学校の解説板には書かれていますが、苗字は書かれていません。
芸能名鑑など一般に言われている本名の「大島九」は、両親が離婚後、母親の戸籍に入ったために名乗った姓であり、もともと坂本九は、本名も「坂本九」でした。
永六輔が、坂本九を追悼する書籍『六・八・九の九 坂本九物語』(中央公論社)において、坂本九の両親が離婚し、母親・いくが坂本九ら子どもたちにそれを告げるところを書いています。
この夫婦の仲が、だんだんとヒビ割れてゆく。
ある日、いくは子供達を集めて話をする。
「お父さんとは別れるけど、お正月は一緒だからね。
お前達のお父さんはあの人しかいないんだから、いつまでも、お父さんを大切にしなきゃいけないよ。いいね。親孝行しておくれ」
いくの演説に子供達は納得する。
子供達も、その派手な夫婦喧嘩を見ながら育って来たからだろう。
だから離婚とはいうものの、憎みあって別れたのではなかった。
坂本家と大島家は通りひとつ置いて、顔をあわせて暮すのである。
「お父さん」は「お向うのおじさん」になり、以後、正月は一緒に雑煮を祝っている。
坂本九という名前は、この時点で大島九になり、九人の子供は坂本姓六人、大島姓三人と別れることになった。
しかし、九は、本名「大島九」であっても最後まで「坂本九」を通して、父親に尽した。
これが1956年、坂本九が15歳の時です。川崎市立川崎小学校時代は、戸籍名も「坂本九」だったわけです。
『六・八・九の九 坂本九物語』によると、坂本九評は、
「問題児ですが成績のいい子でした」(中学時代の先生)
「シッカリして、ちゃっかりしてた分、親孝行はしていましたねェ。」「この人の前では飲まないと決めると決して飲まない」(ドリフターズの初代リーダー、現第一プロ社長の岸部清)
「九の酔い方は、酔っていても、両目が酔っているということはない。片目は覚めているんだよ。片目で相手を観察しながら酔っているという感じだったなあ」(中村八大)
両親の離婚という不幸はありましたが、親思いで、かつ他人の立場や気持ちに敏感な人だったようです。
次回以降、不定期になりますが、坂本九の人生をさらに追跡していきたいと思います。
この続きは
坂本九は曲直瀬信子の“逆張り”の引き抜きで誕生したです。
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