『喜劇駅前弁当』マドンナの淡島千景は東京大田区池上出身 [東宝昭和喜劇]
『喜劇駅前弁当』(1961年、東宝)を鑑賞しました。50年以上前の作品ですが、カラーで出演者も馴染み深い面々。私がもっとも好む群像喜劇です。シリーズ各作品は毎回ストーリーが違いますが、マドンナはいつも淡島千景。今回は、フランキー堺と“東京大田区池上出身”つながりで姉弟を演じています。
喜劇駅前シリーズというのは、「社長シリーズ」「クレージー映画シリーズ」とともに、東宝の喜劇黄金時代といわれた1960年代を支えた24作。今回はその3作目です。
社長シリーズが、東京都心にある会社の、社長を中心とした専務、部長、秘書課長らの比較的ハイソな人びとにスポットを当てた作品であるのに比べて、今回の喜劇駅前シリーズは、地方の商店主や芸者など、より“市井の人々”の暮らしを舞台にしています。
社長シリーズ同様、毎回ストーリーは全く違いますが、出演者はほぼ同じ。特に主演の森繁久彌、伴淳三郎、フランキー堺、淡島千景、淡路恵子、池内淳子らは役名も同じです。
喜劇駅前シリーズは、配給は東宝ですが、作ったのは東京映画という制作会社。社長シリーズと出演者がかなりかぶっているにもかかわらず、全く異なったテイストに仕上がっています。
社長シリーズでは社長でいつも背広にネクタイの森繁久彌が、工場の経営者だったり骨董商だったりして背広を着たことがなく、「……じゃねーか」などくだけた言葉を使っています。
社長シリーズではいつもバーのマダムだった淡路恵子が、たとえば今回の『喜劇 駅前弁当』では芸者を演じたり、『喜劇駅前茶釜』では“シミーズ”を出して昼寝している普通の主婦を演じたりしています。
そして、今回は久松青児監督。
中央が久松青児監督(『東宝昭和の爆笑喜劇Voi.24』より)
群像喜劇として個性あふれる喜劇役者のアンサンブルを上手に演出します。
私の好きな作品の一つ、『クレージー作戦先手必勝』も手がけています。
私は、ヒーローが牽引する作品よりも、みんなでわいわいやっている群像劇の方が好きなのですが、みんなでわいわいやりたい放題になれば収集つかなくなります。そこをきちんと整理して、しかもそれぞれの個性をスポイルしないように仕上げるのが久松青児監督の真骨頂です。
日本の映画史上、喜劇のシリーズ物はいくつもありますが、私はその中でひとつ選べと言われれば、この喜劇駅前シリーズを選ぶと思います。
『喜劇駅前弁当』ラストシーンで主役の3人
浜松市の駅前にあるうなぎ弁当の「互笑亭」が舞台です。女将(淡島千景)が夫を亡くしたことで後釜を狙っているストリップ劇場オーナー(伴淳三郎)と、夫人(千石規子)がいるくせにやはり女将に関心がある織機工場の経営者(森繁久彌)。
そして、女将に気兼ねして、世間の白眼視覚悟であえて店で働くことをせず、バイクに乗って遊び呆けている義弟(フランキー堺)とその恋人のハーモニカ売り娘(黛ひかる)。義弟と一緒に町でコーラスのグループを作っているクリーニング屋の小僧(坂本九)と、そのガールフレンド(渡辺トモコ)。
鰻、織機、楽器、オートバイ……。主要な登場人物がみんな浜松をイメージできるように設定されています。伴淳三郎のストリップだけは知りませんが……。
社長シリーズも地方ロケが多いのですが、どちらかというと観光映画的な趣なのに比べて、喜劇駅前シリーズは地場産業映画です。これも喜劇駅前シリーズの特徴です。
それと、坂本九の歌声を久しぶりに動画として聴いて懐かしいと思いました。まさに昭和の古き良き時代の雰囲気ですね。
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ストーリーに戻ると、互笑亭に花菱アチャコ演じる自称鑑定士があらわれます。淡島千景にビルを建てることを勧めますが、あまり話が大きすぎるので森繁久彌は警戒。しかし、伴淳三郎はひっかかって5万円取られ、地元の芸者(淡路恵子)も金を引っ張ろうとノコノコついていきますが結局失敗します。
花菱アチャコは金だけでなく淡島千景にも迫りますが、そこに初恋の人(加東大介)があらわれ、花菱アチャコが詐欺師ということがバレてしまいます。
クライマックスは、浜松に台風がやってきて汽車が足止めに。警察から炊き出しを頼まれた互笑亭は、簡単におにぎりで済まさず、3000箱以上のお弁当を何とか作ります。そこで初めて店の仕事を手伝ったフランキー堺は、淡島千景を店から開放して加東大介と結婚させ、自分が黛ひかると結婚して店を継ぐことを決意します。
ラストシーンは、淡島千景と加東大介が東京に旅立つところを主要な登場人物がみんなで見送ります。
淡島千景は、扇千景や淡路恵子らが芸名をもらうなど彼女たちの先輩格です。
当時の序列でいうと、たとえば喜劇駅前シリーズの別の作品では、森光子や京塚昌子らが出演していますが、彼女たちはさらにその下です。
大御所のように見られていた森光子ですが、実は映画時代の格は、淡島千景のほうがずっと上でした。
が、最近まで現役であったにもかかわらず、淡島千景が大御所ぶったり、ご意見番を気取ったりしたことはありませんでした。
淡路恵子や、山岡久乃などもそうでしたが、名を成しても決して偉ぶらない人に、私は女優にかぎらず好感がもてます。
タイトルに書いたように、淡島千景は池上の出身。義弟役のフランキー堺も池上出身であることは、「『続・社長漫遊記』鑑賞、フランキー堺を思い出し成田山成心寺へ」で書いたとおりです。
Facebookに大田区在住者グループがあるのですが、大田区出身の有名人を挙げる話題で、淡島千景やフランキー堺や小沢昭一(蒲田出身、麻布中学・高校でフランキー堺と同級生)などの名前が出てきません。
時代が違うと言っても、これほどの大物たちを“ないがしろ”にして失礼ですよね。
もう2年もFacebookでは書き込んでいませんが、ちょっと大田区愛のカツを入れようかと思っています。
喜劇駅前シリーズというのは、「社長シリーズ」「クレージー映画シリーズ」とともに、東宝の喜劇黄金時代といわれた1960年代を支えた24作。今回はその3作目です。
社長シリーズが、東京都心にある会社の、社長を中心とした専務、部長、秘書課長らの比較的ハイソな人びとにスポットを当てた作品であるのに比べて、今回の喜劇駅前シリーズは、地方の商店主や芸者など、より“市井の人々”の暮らしを舞台にしています。
社長シリーズ同様、毎回ストーリーは全く違いますが、出演者はほぼ同じ。特に主演の森繁久彌、伴淳三郎、フランキー堺、淡島千景、淡路恵子、池内淳子らは役名も同じです。
喜劇駅前シリーズは、配給は東宝ですが、作ったのは東京映画という制作会社。社長シリーズと出演者がかなりかぶっているにもかかわらず、全く異なったテイストに仕上がっています。
社長シリーズでは社長でいつも背広にネクタイの森繁久彌が、工場の経営者だったり骨董商だったりして背広を着たことがなく、「……じゃねーか」などくだけた言葉を使っています。
社長シリーズではいつもバーのマダムだった淡路恵子が、たとえば今回の『喜劇 駅前弁当』では芸者を演じたり、『喜劇駅前茶釜』では“シミーズ”を出して昼寝している普通の主婦を演じたりしています。
そして、今回は久松青児監督。
中央が久松青児監督(『東宝昭和の爆笑喜劇Voi.24』より)
群像喜劇として個性あふれる喜劇役者のアンサンブルを上手に演出します。
私の好きな作品の一つ、『クレージー作戦先手必勝』も手がけています。
私は、ヒーローが牽引する作品よりも、みんなでわいわいやっている群像劇の方が好きなのですが、みんなでわいわいやりたい放題になれば収集つかなくなります。そこをきちんと整理して、しかもそれぞれの個性をスポイルしないように仕上げるのが久松青児監督の真骨頂です。
日本の映画史上、喜劇のシリーズ物はいくつもありますが、私はその中でひとつ選べと言われれば、この喜劇駅前シリーズを選ぶと思います。
『喜劇駅前弁当』ラストシーンで主役の3人
ネタバレ御免のあらすじ
浜松市の駅前にあるうなぎ弁当の「互笑亭」が舞台です。女将(淡島千景)が夫を亡くしたことで後釜を狙っているストリップ劇場オーナー(伴淳三郎)と、夫人(千石規子)がいるくせにやはり女将に関心がある織機工場の経営者(森繁久彌)。
そして、女将に気兼ねして、世間の白眼視覚悟であえて店で働くことをせず、バイクに乗って遊び呆けている義弟(フランキー堺)とその恋人のハーモニカ売り娘(黛ひかる)。義弟と一緒に町でコーラスのグループを作っているクリーニング屋の小僧(坂本九)と、そのガールフレンド(渡辺トモコ)。
鰻、織機、楽器、オートバイ……。主要な登場人物がみんな浜松をイメージできるように設定されています。伴淳三郎のストリップだけは知りませんが……。
社長シリーズも地方ロケが多いのですが、どちらかというと観光映画的な趣なのに比べて、喜劇駅前シリーズは地場産業映画です。これも喜劇駅前シリーズの特徴です。
それと、坂本九の歌声を久しぶりに動画として聴いて懐かしいと思いました。まさに昭和の古き良き時代の雰囲気ですね。
ストーリーに戻ると、互笑亭に花菱アチャコ演じる自称鑑定士があらわれます。淡島千景にビルを建てることを勧めますが、あまり話が大きすぎるので森繁久彌は警戒。しかし、伴淳三郎はひっかかって5万円取られ、地元の芸者(淡路恵子)も金を引っ張ろうとノコノコついていきますが結局失敗します。
花菱アチャコは金だけでなく淡島千景にも迫りますが、そこに初恋の人(加東大介)があらわれ、花菱アチャコが詐欺師ということがバレてしまいます。
クライマックスは、浜松に台風がやってきて汽車が足止めに。警察から炊き出しを頼まれた互笑亭は、簡単におにぎりで済まさず、3000箱以上のお弁当を何とか作ります。そこで初めて店の仕事を手伝ったフランキー堺は、淡島千景を店から開放して加東大介と結婚させ、自分が黛ひかると結婚して店を継ぐことを決意します。
ラストシーンは、淡島千景と加東大介が東京に旅立つところを主要な登場人物がみんなで見送ります。
淡島千景も池上が誇るべき大女優
淡島千景は、扇千景や淡路恵子らが芸名をもらうなど彼女たちの先輩格です。
当時の序列でいうと、たとえば喜劇駅前シリーズの別の作品では、森光子や京塚昌子らが出演していますが、彼女たちはさらにその下です。
大御所のように見られていた森光子ですが、実は映画時代の格は、淡島千景のほうがずっと上でした。
が、最近まで現役であったにもかかわらず、淡島千景が大御所ぶったり、ご意見番を気取ったりしたことはありませんでした。
淡路恵子や、山岡久乃などもそうでしたが、名を成しても決して偉ぶらない人に、私は女優にかぎらず好感がもてます。
タイトルに書いたように、淡島千景は池上の出身。義弟役のフランキー堺も池上出身であることは、「『続・社長漫遊記』鑑賞、フランキー堺を思い出し成田山成心寺へ」で書いたとおりです。
Facebookに大田区在住者グループがあるのですが、大田区出身の有名人を挙げる話題で、淡島千景やフランキー堺や小沢昭一(蒲田出身、麻布中学・高校でフランキー堺と同級生)などの名前が出てきません。
時代が違うと言っても、これほどの大物たちを“ないがしろ”にして失礼ですよね。
もう2年もFacebookでは書き込んでいませんが、ちょっと大田区愛のカツを入れようかと思っています。
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