『1日3杯が効く コーヒーダイエットーいつもの飲み方に+αの新発見』(主婦の友生活シリーズ)というムックを読みました。タイトルに書かれているダイエットのほか、巷間いわれているコーヒーの健康効果情報を集めています。テレビなどメディアの登場も多い小田原雅人東京医科大学主任教授の監修です。
この本、人気があるんですね。そんなに面白いのかなと思って読んでみました。
今年の4月に出たものですが、その時点で図書館では100人待ちでした。
コーヒーさえ飲めば痩せられる。
そういう都合の良い幻想をいだいて、この書籍に関心を持ったのかな。
そんなウマい話があるわけないんですが。
そんな憎まれ口はともかくとして、同書の内容ですが、まずコーヒーが血糖値を下げる、という話を書いています。
ですが、書内不一致なのがちょっと気になります。
小田原雅人氏は、「コーヒーを食前に飲むと食後の高血糖が抑えられる」(11ページ)と書いています。
ところが、その次の次のページ(13ページ)では、岩井和也氏(UCC上島珈琲)が、「食事と同時にコーヒーを飲むことが、血糖値の上昇を抑えるには効率的」という話を統計とともに書いています。
食前なのか、食事中なのか、また食前ならどのくらい前を指すのでしょうか。
コーヒーには、インスリン分泌を抑制するアドレナリンを増やすとされるため、食後に飲むと一時的に血糖値が上がるという説もあります。
その説によれば、糖尿病でない人は、食後を含めていつでもいいけれど、糖尿病の人の食後のコーヒーは勧められないことになります。
いずれにしても、糖尿病の人にとって、食前、食事中、食後のいつコーヒーを飲むべきかは、曖昧にしてほしくない話です。
にもかかわらず、同書はコーヒーのムックのはずなのに、その肝心なことが明らかにされていません。これでは血糖値の話を書く意味がありません。
ダイエットについては、まぁこなる芸人が、97kgから49kgまで48kg減ったという体験談を写真付きで見せています。
しかし、かりにコーヒーを飲んだのが本当であったとしても、それが「コーヒー効果」といえるかどうかはわかりません。
なぜなら、その間の食事や運動など生活の詳細を一切明らかにしていないから。
そもそも、そのような急激な痩せ方が健康的なのかどうか。それも全く触れられていません。
その他、コーヒーを飲むと○○にいい、とこれまでメディアで発表された健康情報もまとめられています。
「1日4杯のコーヒーで痛風リスクが低下する」(2010年4月)
「コーヒーの摂取でがんリスクが低下する」(2011年3月)
「コーヒーが脳卒中の予防につながる」(2011年9月)
「コーヒーを飲む習慣は悪性の前立腺がんの予防に役立つ」(2012年6月)
「大腸がんのリスクがコーヒーによって低下する」(2012年6月)
などなど、同書ではまだまだいろいろ書かれています。
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コーヒーだけでダイエットや健康効果が確実に得られるのか
同書に書かれているように、コーヒーについて巷間いろいろな健康効果がいわれます。
ネットで検索すると、数えきれないほど、健康情報を扱うページが出てきます。
ですが、素朴な疑問として、それで健康になるのなら、病院もいらないし、保健学も栄養学も存在する理由がなくなります。
○○ダイエットというのも掃いて捨てるほどありますが、要するにコーヒーダイエットも含めて、いずれも決め手にならないから、つまり解決していないから新手のものが登場する余地があるのでしょう。
この手の健康情報や、ネットに出回っている情報商材は、私は同じようなものだと思います。
全く嘘ではないけれど、結果としてその情報で十分に効果を出せる人はほとんどいない。
それは、その情報がごく一面しか見(せ)ていないからです。
結果としてコーヒーを利用してダイエットに成功する人はいるかもしれませんが、それはたんに「コーヒーを飲む」だけでなく、おそらくは他の因子が揃って初めて“痩せる”のではないかと思います。
コーヒーの健康情報にしても、たとえばクロロゲン酸が体にいいからといって、砂糖とミルクを入れてがぶ飲みしていたら、その弊害が出てきます。
同書を読むと、コーヒーはさもがんに効果があるようなイメージがありますが、一方でコーヒーの飲み過ぎは、心臓病や肺がんのリスクを高めるともいわれています。
同書はコーヒーを褒めちぎる内容。なのに水を差すことを書きましたが、そうした見定めを持たずに内容を額面通り受け止めてしまったら、それこそ1日中コーヒーばかり飲んでしまう「真面目」な人が出ないとも限りません。
コーヒーに限らないことですが、飲み過ぎたらいけないし、「○○にいい」という健康情報は、同時に潜むはずの「○○のリスクを高める」という不健康情報を捨象したある意味現実的でないものだ、ということも知っておいていただきたいのです。
といっても、書かれていることが嘘っぱちだ、というわけではないので、コーヒーが好きな人の雑学やトリビアとしてとらえておくのがいいのではないかな、と私は思いました。
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