発禁マンガをカラーページで特集しているのは今週号の『アサヒ芸能』(9.11特大号)です。『戦後のマンガ文化史に「恐るべき真実」があった!闇に消えた発禁マンガ50冊』というタイトルで、単行本の発禁、連載中止、回収、不買運動などのトラブルにつながった作品を、作品の1コマとキャプションで解説しています。
発禁というのは、どのような内容のものがそうだったのか、というだけでなく、発禁されたその理由自体が明らかにされていない場合もあるので、タブーにされたその中身を知りたいという欲求に駆られます。
コーナーは全部で6ページ。5つの小見出しで作品が分類されています。
『アサヒ芸能』(9.11特大号)より
有名な作品・作家の意外な封印作品をまとめた「巨匠たちの受難編」。
『オバケのQ太郎』(藤子不二雄)『ドラえもん』(藤子・F・不二雄)『ゴルゴ13』(さいとう・たかを)『ゴーマニズム宣言』(小林よしのり)などが出ています。
原作者・漫画家間の確執やアシスタントの過失、PTAの吊し上げなどで作品を封印せざるを得なくなった「消せなかったトラブル編」。
『
キャンディキャンディ』(水木杏子・いがらしゆみこ)の争いはこのブログでも以前書きました。
性的表現に対するペナルティとなってしまった「エロスの落とし穴編」。『
まいっちんぐマチコ先生』(えびはら武司)も入っています。理由は婦人団体から女性蔑視との抗議を受けたとのこと。
作家が刑事事件を起こして作品もお蔵入りとなった「作家の不祥事編」では、『8マン』(平井和正・桑田次郎)『悪役ブルース』(梶原一騎・峰岸とおる)など。
『8マン』は主題歌を歌った人も、漫画家も不祥事を起こした上に、実写化した会社も不渡りを出してしまいました。
そして、最近では『美味しんぼ』の鼻血騒動が記憶に新しい「2014年の事件簿篇」。
『美味しんぼ』以外には『
はだしのゲン』『クリームソーダシティ』も紹介されています。
50作のリストとトラブルの内容について詳しくは同誌をご覧ください。
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有害でない図書は面白いか?
トラブルの原因はひとつひとつ違うので、一律に何が正解か、ということはいえませんが、「PTAの吊し上げ」というのだけは無条件で逆らいたい衝動に駆られますね(笑)
実は初めて知ったのですが、そのひとつとして『ゲームセンターあらし』(82年)も載っていました。
『アサヒ芸能』(9.11特大号)より
個人的な話ですが、『ゲームセンターあらし』を描いたすがやみつるさんには、約20年前に私がある会社を作るときに、給与計算や確定申告などについて教えていただきお世話になったことを思い出しました。
当時インターネットは普及していなくて、まだパソコン通信の時代。すがやみつるさんは「ニフティサーブ」(今の@nifty)に開設された、ある掲示板のシグオペかシスオペ(要するに管理者)だったのです。
それはともかく、舞台となるゲームセンターは、「不良の集まる盛り場」とPTAが問題視して単行本は絶版。アニメの放送も終了してしまったとか。
『はだしのゲン』にしろ『ゲームセンターあらし』にしろ、見せたくないものは見せるな、という姿勢ですが、それで何か問題が解決するのでしょうか。
有害図書なんていいますが、本来図書というのは今の価値観や規範に対して常に懐疑や批判の目を向けている「有害」なものであるべきだと私は思っています。
社会の「良識」に照らして毒があるから面白いのだろう、そして何かを考えさせるのだろう、と思いませんか。
今の政治はすべて正しいです。決められたことは疑いを持たず守って、大人しく生きましょう。
そんな教えの図書なら、絶対に「有害」の指定は受けないでしょう。
でも、実はそれこそ、国民に何も考えさせない真に有害なものですよね。
非日常的な世界を描くことは、影の部分から私達のリアルな日常をあらためて考えるよすがになるのです。
印象派のクロード・モネの『かささぎ』のように、濃密な影で雪がどれだけ白いかを表現することもあります。
日常と非日常。常識と非常識というのは、実は弁証法的な関係にあるわけです。非日常や非常識を現実に埋没せず描ききるのは、創作表現の醍醐味ではないでしょうか。
創作表現とはなんだろう、ということをあらためて考えさせられます。
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