『63歳で健康な人は、なぜ100歳まで元気なのか 人生に4回ある「新厄年」のサイエンス』(板倉弘重著、講談社+α新書)を読みました。長寿時代、単に長生きするだけでなく「元気」であることが求められていますが、同書はタイトル通り、7つの病気発症率が急上昇するターニングポイントが人生には4回あることを指摘。ピンピンコロリの人生を送るため、予防に何をすべきかを説いています。
同書を一言で紹介すると、マーケティングと、見せ方の目新しさが特徴だと思います。
同書の病気に対する情報や解説は、これまで上梓された医学と健康関連の書籍で出てきたことばかりで、目新しさはとくにありません。
新しい情報や、価値観の創出を求めている方は、期待はずれに終わるかもしれません。
ただ、その見せ方には工夫があると思います。
まず、タイトルに「なぜ」を入れているのは今風ですね。
近頃、「なぜ~だと△△なのか」というタイトルの書籍が目につきます。
『さおだけ屋はなぜ潰れないのか』(山田真哉著、光文社)という書籍以来でしょうか。
『さおだけ屋はなぜ潰れないのか』は、売れているとも思えない竿竹を積んで巡回しているだけなのにどうやって稼いでいるのか。実態は金物屋であり、さおだけを売るのは“行き掛けの駄賃”であるという内容でした。
『さおだけ屋はなぜ潰れないのか』というタイトルの付け方は、奇をてらったというわけではなく、内容に沿ったものです。
ただ、ちょっとアプローチを変えて、「なぜ」とつけたことで、「そうだよな。どうしてなんだろうな」と思わせ、本の中身を読んでみたくなるようにしているわけです。
もしこれが、『さおだけ屋は金物屋だから竿竹が売れなくても潰れなかった』なんていうタイトルでは、あまりにも「まんま」過ぎてつまらないでしょう。
同書のヒットから、「なぜ」という使いかたが以後の出版マーケティングではいささか乱用されているような気がします。
今回の『63歳で健康な人は、なぜ100歳まで元気なのか』についている「なぜ」。
こじつけや乱用とは思いませんが、正直なところ、『さおだけ屋はなぜ潰れないのか』ほどの好奇心はわいてきません。
老齢に入る頃、無病だったり健康に配慮したりしていれば健康に長生きするという話だろう、とおおむね答えが予想できる「なぜ」だからです。
もちろん、健康情報に関心のない人はいないでしょうし、100歳という具体的な年齢が入っている以上、その「なぜ」の内容を具体的に知りたいとは思うかもしれませんが、「なぜ」そのものが全く見当もつかないものではないので、それほどのインパクトはない、ということです。
63歳に気をつけてピンピンコロリを目指す
ではその「具体的」な内容ですが、こちらには独創的な構成があると思います。
「75万人のレセプトデータ」から著者が調べたところによると、虚血性心疾患、脳血管疾患、糖尿病、骨粗しょう症、変形性膝関節症、がん、認知症という「七大疾病」の発症率の上昇するターニングポイントとなる年齢があると言います。
男性は24歳、37歳、50歳、63歳。女性は25歳、39歳、52歳、63歳。
そこで、男女とも共通して、しかも発症率が上昇するもっとも高い年齢である63歳がタイトルに使われているわけです。
そのために、63歳を中心にして、各「ターニングポイントとなる年齢」ごとに、気をつけるべき疾病やその対策が解説されています。これが目次です。
第1章 「新厄年」のメカニズム
第2章 「厄」となる7大疾患
第3章 「新厄年」――体のロードマップ
第4章 血管・頭・筋肉・腸が若返る習慣
その解説は、冒頭で書いたように、食べ過ぎるなとか、ストレスを貯めるなとか、喫煙とか、まあこれまでたくさん出ている健康情報の書籍に書かれていることばかりで、とくにこの著者が編み出した健康法が書かれているわけではありません。
ですから、冒頭に書いたようにありふれた健康情報ですが、パクゼンと糖尿病やがんについて書き連ねるのではなく、具体的な年齢を病気発症のリスクとして結びつけた点が、見せ方として目新しく実用的なのではないでしょうか。
「37歳」とか「50歳」とか書かれたら、該当するか、もしくはその前後の年齢の人は気になるでしょうからね。
同書は、人間は120歳まで生きることができるとも書いていますが、たんなる長生きを目指すものではなく、「ピンピンコロリ」でより長く健康に生きましょう、という主旨の書籍です。
ピンピンコロリを強調する考え方には賛否両論ありますが、病気になれば、医療・福祉の世話になったり、家族に迷惑をかけたりします。
自分の人生、なるべくならそうなりたくないと思う人は多いと思います(私もそう思います)から、こうした書籍を参考にして、自分で出来る健康管理は心がけたいものです。
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