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梨元勝さんの祥月命日に芸能リポーターについて考える [芸能]

梨元勝さんといえば、芸能リポーターという肩書で活躍した草分け的な人でした。その梨元勝さんが亡くなったのが今から4年前の2010年8月21日。65歳でした。梨元勝さんが活躍した頃のワイドショーは毀誉褒貶ありましたが、では芸能リポーターの突撃取材がなくなった最近のワイドショーは面白いと思いますか?

梨元勝さんが亡くなったのは2010年8月。その2ヶ月前に肺がんであることを公表し、仕事の道具を持ち込んで入院したばかりだったので、その期間の短さにびっくりしました。

社会復帰している人もいるので、早期発見が不可能な病気ではないと思いますが、進行期に入るとあっという間ということなのでしょう。入院時は詳細が明らかではなかったのですが、ステージ4で手術適応がなかったそうです。

がんの中でもいちばん死亡数が多い肺がん。因子として考えられているのは、喫煙。それ以外は受動煙、化学物質、肺の既往症など、さらに食べ物も原因といわれています。

いずれにしても、非喫煙者であった梨元勝さんの肺がんは、肺がんが喫煙者固有の病気とは限らない、という怖さを改めて私たちに教えてくれました。

芸能リポーターという仕事の意義


梨元勝さんが芸能リポーターとしてテレビでデビューしたのは、『アフタヌーンショー』(NET→テレビ朝日)というお昼の帯番組でした。

司会が川崎敬三。金曜日に芸能ニュースのコーナーがあり、最初はその週に起こった出来事について、芸能評論家の加東康一さんがコメントするだけだったのですが、途中から梨元勝さんが加わり、現場に取材するという手法を採り入れました。

梨元勝さんが現場の様子を明らかにして、それをスタジオで加東康一さんがまとめるという構成です。

これが大当たりして、以後、芸能リポーターというジャーナリスト的タレントが、各局のワイドショーメディアに登場することに。

その先駆的役割を果たした『アフタヌーンショー』も、他のコーナーではばこういちさんや山本耕一、村上不二夫ら、ジャーナリストや俳優をリポーターとして現場に向かわせる、当時としては画期的な作り方をしました。

梨元勝さんはもともと、『ヤングレディ』(現在は休刊)という週刊誌のデータマンをしていたのですが、雑誌ジャーナリズムに、誇りとやりがいを持っていました。

「週刊誌っていうのは、新聞の1行、2行を拡大して記事を作ってきたわけです。小さい事件をどれだけ人間的問題に広げられるか、ということですよ。そうやって、『週刊新潮』や『女性自身』の草柳大蔵、『週刊明星』や『週刊文春』の梶山季之といった人たちの時代があったわけです」(『紙の爆弾』2008年1月号より)

当時は、データマンといわれる人たちが取材や調査をして、アンカーマンといわれるライターたちが、週刊誌の最終原稿をまとめていたのです。

新聞記事の5W1Hだけではわからない、背景にある事件当事者の心や周囲の変化を明らかにし、書き屋のプロの価値観やイマジネーションでそれらを整理して、その出来事の真相に肉薄して記事ができた、ということです。

週刊誌を読む女性

草柳大蔵さんや梶山季之さんは有名な作家ですが、そういう人たちが当時の週刊誌はアンカーマンを務めていました。

優れた記事は、データマンによる足と頭を使った取材や調査が支えていたということです。

小中陽太郎氏や立花隆氏がアンカーマンをつとめる『ヤングレディ』のデータマンだった梨元勝さんは、今度はテレビで、加東康一さんのデータマンとして「人間的問題に広げ」る仕事をしようとしたわけです。

私は思うんです。

僅かな新聞記事でスレッドを立て、わかったような誹謗中傷を書き込んでいるネット掲示板の連中に、マスコミを「マスゴミ」などと罵ることなんかできないだろうと。

マスコミはそれが仕事だから、厳しい批判はあって当然です。間違いや不作為は大いに批判すべき。

ただ、少なくとも大衆の思いつきによる無責任な「言論」なんかより、何らかの意味や意義はあるだろうと私は思っています。あたりまえですけどね。

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モラルとインモラルのバランスで世の中は成り立っている


私は妻とともに、以前梨元勝さんに話を聞く機会がありました。

一部には、芸能リポーターは人のプライバシーを覗くからよくないという批判があります。

が、一般人の私生活を暴いているわけではないでしょう。

プライバシーを飯のタネにする芸能人に対する行為について、糞もミソも一緒くたにしている紋切り型非難は賛成できません。

芸能人と芸能リポーターは、役割の違うタレント同士であり、芸能リポーターによって芸能人が光る場合だってあったのです。

梨元勝氏もこう語っています。
ー芸能人とプライバシーの問題はどうでしょうか。
梨元勝 それは100%ないとは言いません。ただし、それを商売にしている例はいっぱいありますよね。五木ひろしだってね、デビューする時は100人斬りだか千人斬りだかやってましたよ。でも彼は何回か名前を変えて再デビューし、売れるとその話には「プライバシー」のヴェールをかけてしまった。ではそれをどこまで報じていいか、その善し悪しはどう判断すればいいかということですけど、結局は受け手側の判断ですよ。
昔、朝日新聞で村長のスキャンダルを馬乗りになって写真を撮ったというのがあるんですよ。では、ボクたちが、タレントがベッドインしているとこを勝手に入って、ベッドインしている上から「お気持ちはどうですか」ってやったら、そりゃやり過ぎだろうけど(笑)
ーそういうときの「お気持ち」なら、「いい」に決まってますしねえ。ははは。
梨元勝 ビートたけしが、かつて『フライデー』を襲撃した時の理由は、付き合っていた女子大生の話を書かれたからですよね。その裁判を傍聴していると、たけしは「家族を守るためにやった」と言ったんです。すごく説得力ありましたよ。ところが、そのときたけしは別居していたんですよね(笑)。上方少女漫才出身の奥さんは大阪に行って、旧知のお笑いの人(笑福亭枝鶴=六代目笑福亭松鶴の実子)との不倫スキャンダル騒動がありました。
「家族」を持ち出したのはたけしというより、弁護士の戦術かもしれませんが、いずれにしても「プライバシー」というのは都合良く利用されるんです。
馬乗りになって「今のお気持ちは?」と聞こうとまではいいませんけど、プライバシーは一概に「守るもの」とは言い切れないですよ。プライバシーを使って売り出す場合もあれば、プライバシーを逃げ道にして反論する場合もあれば、裁判で使う場合もあるんだということですよね。(『紙の爆弾』2008年1月号より)
なんだかんだいって、梨元勝氏ら芸能リポーターが活躍していた時代には、「取材をしている」という実感がありました。

しかし、今はどうでしょうか。一部の有力事務所のいいなりとなり、事務所側の垂れ流す情報のポーターとして、わずかなリポーターが仕事をする現在のワイドショー。

テレビがつまらなくなったといわれる時期と、突撃取材型の芸能リポーターが消えていった時期は重なります。

たしかに、何でもかんでもマイクを突きつける姿に鼻白むこともあったかもしれません。

しかし、取材というのは決して格好いいものではなく、非常識と特ダネは紙一重なのです。

非常識だからといって腰を引いていたら、真実へのアプローチは永遠にできません。

ジャーナリストとは、そうしたギリギリの取材の中で新しい発見に踏み出す仕事だと私は思います。

マスゴミと罵っているサラリーマンの皆さん。あなた方だって、詐術のセールストークで営業成績をあげることはあるでしょう。

一切後ろめたいことのない、突っ込むところなしの無謬で高潔な営みなんてこの世の中にはありません。

世の中はみな、モラルとインモラルの微妙なバランスのところで成り立っているのです。

だからこそ、行き過ぎに対するコントロールもできるし、その中で少しずつ進歩もしていくのではないでしょうか。

私、雅子さまと同じ症状なんです―体調不良(不定愁訴)とウツの副交感神経異常

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  • 作者: 梨元 勝
  • 出版社/メーカー: 音羽出版
  • 発売日: 2013/02
  • メディア: 単行本


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