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ベネッセコーポレーション個人情報漏えい事件、何を思う? [社会]

ベネッセコーポレーションが、通信教育サービスを利用している顧客の情報を最大で2070万人分流出した可能性があると発表して問題になっています。『東京スポーツ』(7月16日付)では、有名人の受講生時代の成績が漏れていることを報じています。同社の個人情報はたんなる名前と住所の「顧客名簿」とは違うもの。だからこそ問題は深刻なのです。

私のところにも「重要なお知らせ」として、ベネッセからお詫びが来ていました。

それによると、「漏えいしたお客様情報」は、「郵便番号」「お客様の名前」「ご住所」「電話番号」「お子様の生年月日・性別」“だけ”だとしています。

しかし、かりに今回がそれだけだったとしても、同社はこれを機会に個人情報管理について考えるべきである、ということを『東京スポーツ』(7月16日付)が書いています。

東京スポーツ7月16日付.png

同紙によると、ベネッセ本社は出版社という意識が強く、顧客管理については(仕事として格下に見て)下請けグループ会社に丸投げしていたといいます。

そして、下請け会社は懐事情が厳しく、人件費を安く上げるためにアルバイトを採用するから教育ができていない。

「バイト同士で暇な時間、芸能人や有名人の登録がないか探し出して、『大物を見つけた!』と自慢し合うようなことがしょっちゅうあった」といいます。

広末涼子は、実家の四国から上京した住所の変更履歴、『赤ペン先生』の添削指導の点数まで見られていた。ちなみに「あまり成績は良くなかった」。それ以外にも松浦亜弥、安達祐実、篠原ともえ、清原和博氏などの名前が出ています。

清原和博氏には失礼ですが、野球しかやってないと思ってたから意外でした。

まあ、学校では野球しかやってなかったり、有名人になって塾にも通えなかったりする人には、家庭学習の教材として受講したいものなのかもしれません。

この記事の取材源は知りませんが、こういう衆愚の軽率さはあり得る話だと私は思います。

私の子どもたちが、火災で、ある病院のICUに担ぎ込まれた時、長男が幼稚園時代同じクラスだった子どもの母親がその病院で働いていたため、その人が幼稚園時代の同級生のママたちに、子どもたちが入院したことを言いふらすというトンデモないことをしていました。

もっとも、ママたちはみんな火災のことを知っていたから「新事実」にはならず、そこで話は終わってしまったようですが。

これは私が病院に報告したら、その人がクビになるだけの問題ではなく、病院としての責任が問われる重大事件です。

今回の事件はベネッセの問題だから、被害者も含めて、国民は「個人情報漏えいはけしからん」という「正論」を安心してぶち上げるわけですが、

そもそも個人情報をどう考えているのか、こういう事件をよすがにして、今回の被害者も含めて、国民ひとりひとりが個人情報について考えてほしいと思いますね。

福武書店時代から個人情報を有効活用


個人情報というのは、今でこそ顧客リストとして重要視されていますが、その様々な情報をリレーショナルに利用する先駆的な使いかたをしていたのが、ベネッセと名乗る前の福武書店だったのではないかと私は思います。

私自身は中学の頃、『進研ゼミ』にほんの少しの期間入会しましたが三日坊主で挫折。現役時代はあまりその価値を意識することはありませんでした。

が、その後、縁があって、仕事で高校生2年と大学受験用の、『進研ゼミ』と『チャレンジ』という2つの雑誌の制作に携わることになり、『進研ゼミ』は利用の仕方によっては大変な価値のある講座だと気づきました。

講座は教材と機関誌がセットになっていて、機関誌は本格的な月刊誌と年に1、2度刊行される増刊号でした。

機関誌の内容は、それまでその分野の独壇場だった『蛍雪時代』(旺文社)や『高三コース』(学研)に比べて、受験それ自体にフォーカスした情報に偏らず、より人生をトータルで見た進路先選びの啓蒙になっていて、その視点が、作る側でありながら新鮮に感じました。

たとえば、まず世の中の仕組みや時事的な問題に焦点をあて、それを支えている仕事にはこういうものがある。ではその仕事ってどうすればなれるの? それには大学のこんな学部に入るといい。その学部はこういう大学が設置していて、OBのみんなは高校時代こんな受験勉強をしたんだよ、という構成になっていました。

受講生はそうした読み物をヒントに、将来なりたい職業も、志望校も、そして勉強の仕方も学べるというわけです。

受験生

まあ、いずれにしても、「いい大学に入って希望の職業につき社会のために頑張ろう」という、学歴主義を前提とした優等生育成だったわけですが、社会と職業と学校を結んで、その道筋を掃き清めてくれるこの講座に、もし自分が高校の頃入っていたら、また違う人生があっただろうなあと、原稿を書きながらホゾを噛んだものです。

で、「OBのみんな」とはもちろん進研ゼミの受講生だった人たちで、その仕事をしている人たちの声としてやはり進研ゼミOBが登場しました。

つまり、企画の生きた情報源として受講生OBが使われていました。

進研ゼミは、受講生をOBとして卒業後も協力関係を維持。雑誌づくりのネットワークとして役立てていたわけです。

受講生は顧客であり、将来の協力者候補でもあるわけです。

ですからもう、どんな企画を立てても、つまりどんな大学だろうが、めずらしい職業だろうが、福武本社に依頼すれば、必ずそれに該当する受講生OBが紹介されましたね。

それはつまり、個人情報も、たんに名前と住所だけで完結した「顧客名簿」ではなく、その人がどこの大学に入った後、どこの会社に就職したかまで、節目節目で更新されていく生きた情報ということです。

これは、受講生と福武(ベネッセ)の信頼関係がなかったら成立しません。

だって、受講料を払ったら、商売としてはそこで終わりですよね。

講座が終了してからも、受講した人はいちいち自分の情報を教えてやる必要はないわけです。

受講生は、ベネッセに対する感謝と、これから受験する後輩たちに自分の情報が役に立つのなら、という善意で自分のことを教え、ときには機関誌づくりに協力していたのです。

今も思い出すのは、取材したOBたちはみな、純粋ないい子たちだったということです。『進研ゼミ』を読んで、まじめに自分の進路や世の中を考えていたんでしょう。

今回の情報漏洩は、誰がどういう意図で行ったものであれ、その善意を踏みにじり、信頼関係を損ねかねないものになったと思います。そう考えると今回の不祥事は残念に思いますね。

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