犬猿の企業。流通上関わりがあるのに取引がなかったり、“縄張り”争いをしたりしている企業のことです。個人商店のいがみ合いなら社会的な影響は考えなくていいかもしれませんが、公共交通機関や一部上場企業なら私たちの生活に無関係ということはありません。ところが、我が国には犬猿の企業がいくつもある、という話です。
以前ご紹介しようと思って日にちが経ってしまったので、もう書店には出ていないと思います(ネットでは電子版が販売されています)が、『アサヒ芸能』(4月10日号)に、「犬猿の企業、知られざる遺恨をばらす」という記事が載っています。
我が国の生活に大きな影響を与えている名だたる企業の中には、仲が悪い企業があると書かれています。
このブログ「戦後史の激動」では、個人の不仲の一部について、「
矢沢永吉とジョニー大倉など仲間割れ列伝」で書いたことがありますが、企業の不仲については私もよく知らないので、取り上げたことはありませんでした。
同誌ではまず、トヨタ自動車とかつての川崎製鉄(現在は日本鋼管と事業統合してJFEスチール)や、三越とヤマト運輸などに触れています。
これらはわりと知られている話ですね。
原因は、トヨタ自動車と旧川崎製鉄の場合は、トヨタが倒産の危機に瀕している時に、川崎製鉄が支払いを遅らせることを許してくれなかったため。
三越とヤマト運輸は、ヤマト運輸が恐慌の余波で存亡の危機に陥ったとき、三越がヤマトに大口の配送業務を任せて立ち直らせたのに、ヤマト運輸は三越の配送業務で赤字が出ると配送契約解除。三越の経営に動揺を与えて岡田茂氏と竹久みち氏の「三越事件」が露呈したからとか。
それらは、同業ではないものの取引があり得る関係。にもかかわらず、川崎製鉄はJFEスチールになるまでおよそ半世紀にわたってトヨタ自動車と取引をさせてもらえず、三越は伊勢丹と経営統合の10年後まで、ヤマト運輸と31年間手打ちをしなかったといいます。
要するに、忘恩の徒は許さない、ということですか。
前近代的な家父長的オーナー社長にありがちなことですね。
個人的に気持ちとしてはわかります。
もとより、企業による文化の違いはありますから、取引しにくい関係、というものは存在します。
ただ、「恩知らず」という理由だけで取引がないというのは、株主が納得できるのでしょうか。
それに、その企業自体損をしてしまうこともあると思います。
もちろん、恩知らずに対して「負けるものか」という気持ちが、その会社のこんにちを築いているのかもしれませんから、なんとも難しいところですね。
同誌では、現在も対立が続いている関係も何例か紹介しています。
たとえば、ヤマダ電機VSダイキン。シェアナンバーワンの人気電化製品が、これまた業界一の量販店ではなぜか扱われていません。奇妙な話です。
それはライバル社が巻き返すチャンスですから、消費者にとってそれほど大きな影響はないと思いますが、いずれにしてもあまり前向きな対立ではありませんね。
読んでいて個人的に気になったのは、JR東日本とJR東海の対立です。車両基地や新幹線の乗り合いで争いがあり、今は縄張り争いまで露骨だというのです。
しかし、東海道新幹線はJR東日本エリアの東京始発。エリアは静岡県の一部まで広がっています。ウエットな争いが、結局は乗客の不利益にならなければと心配してしまいます。
公共交通では、航空会社の対立にも触れています。これは、先に述べた文化の違い(国策会社のJALとベンチャーが出発点のANA)があるのかもしれません。
まだ電子版が売られているのでこのへんにしておきますが、「犬猿の企業」は生活上の豆知識として知っておくと便利なことかもしれません。
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