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マイクロアレイ検査、極早期発見で胆道系、膵臓がん医療は変わるか [健康]

マイクロアレイ検査。胃、大腸、胆道系、膵臓がんについて、これまでの検査よりも早期に有無を判定する新検査法として話題になっています。複数の新聞で取り上げたことで、ブログで後追いした人も多く、検索すると関連記事がいくつか出てきます。とくに胆道系、膵臓がんの治療に期待が寄せられていますが、果たして治療成績は上がるでしょうか。

がんは、早期発見することで治療できる可能性が高まる、という考え方を一部の医師が否定しています。

その根拠として、いわゆる「早期発見」は、実は「早期」なんかではないからというのです。

実際に胆道系、膵臓のがんは、治療が通常の検査で発見できた「早期」でも治療がむずかしいといわれています。

そこで注目されているのが、マイクロアレイ検査というわけです。

わずか数ミリリットルの採血によって、これまでの「早期」よりももっと早期の段階で、がんの有無を発見できる検査を、金沢大学病院消化器内科の金子周一教授が開発したそうです。

日刊ゲンダイ・すい臓がん.png

『日刊ゲンダイ』(4月24日付)によると、昨年11月からこの検査を採用している東京・中野の「ナガヤメディカルクリニック」永谷信之院長がコメントしています。
「マイクロアレイ血液検査を導入するまでは、遺伝子検査といえば、『キャンテクト』という方法が中心でした。血液中にある六十数種類の遺伝子を調べ、がん細胞などによって壊された遺伝子がどれくらいあるか、がんを見張る遺伝子などが正常に働いているかなどを総合的に解析し、あらゆるがんの可能性を遺伝子レベルでチェックします」(中略)
「特に膵臓は、発見された時点で余命数カ月というケースが珍しくありません。まだがんかどうか分からない段階で発見できるような、感度の高い検査法が登場するのを期待されていました。マイクロアレイ検査は、本来は難しい膵臓や胆道の極早期がんを高い感度で見つけ出せるのが、最大の特長なのです」
どうやって「極早期がんを高い感度で見つけ出せる」かというと、全身を巡っている免疫細胞の変化から、がんの可能性を測るそうです。

“過ぎた”感度にょって慢性肝炎や薬物、ワクチンを投与も「陽性」になることや、がんの「有無」の測定であって、「部位」の測定ではないなど課題もあるそうですが、この検査によって、もし治療できる可能性が高くなるなら何よりではないでしょうか。

もっとも、“画期的ながん治療”というのは、これまでマスコミでずいぶん報道されましたが、裏を取ってみるとそれほど大したことではなくてがっかりしたこともあるので、今回もヌカ喜びにならないように願いたいものです。

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「極早期」で治療成績が向上するかどうかが大切


たとえば、最近の記憶では放射線治療のトモセラピーがそうでした。

放射線治療は、がんの三大療法として多くのがん患者が受けている治療です。

が、がんの部位をピンポイントで必要最小限に照射するのは限界があり、周囲の正常な臓器への放射線照射は免れません。

それを克服するものとして、2003年にアメリカの医療機器メーカーが開発したのが、患部だけを正確にピンポイントで照射できるとするトモセラピーという放射線治療装置でした。

断層写真の「トモ(Tomo=tomogram)」と、治療の「セラピー(therapy)」を合わせた造語といいます。

当時、京都府宇治市の宇治武田病院放射線治療センター長・岡部春海氏は、同病院の公式サイトで、「(トモセラピーは)早期発見時の根治治療からターミナルケアにおける痛みを制御する治療まで、幅広く効果的な放射線治療を行えます」と、有望な治療装置であることを強調。

目を引いたのは、「例えば白血病の場合は、体全体の骨のみに集中して照射することが可能です」と述べていました。

白血病は、強い抗がん剤治療を行うため、放射線による負荷の軽減が実現するならすばらしいことです。

ところが、トモセラピーによる治療を活発に行っている北海道帯広市の北斗病院放射線科に私が問い合わせてみると、期待はずれの回答を頂いてしまいました。

まず、周囲の正常な臓器への放射線量は「低下させることが出来る可能性はある」が、それが「実際の治療効果と副作用の低減に繋がるかどうかはまだ確定していない」。

白血病の骨のみ照射に至っては、「骨だけに放射線が当って、他の臓器に全く放射線が当らないという訳ではございません」とはっきり否定されました。

今回のマイクロアレイ検査は、自由診療のためお金はかかりますが、侵襲性が少ない「極早期」発見は本当の話なのでしょう。

ただ、問題はそこから先で、この検査で「極早期」を明らかにさえできたら治療効果が上がる、かどうかまではまだ明らかではありません。

「上がる」ことを望むのはもちろんですが、このような現実に存在する画期的な検査法も、治療成績の向上にたどりつくまでは、簡単なことではないのだなと改めて思うものです。

臨床遺伝に関わる人のためのマイクロアレイ染色体検査

臨床遺伝に関わる人のためのマイクロアレイ染色体検査

  • 作者: 山本 俊至
  • 出版社/メーカー: 診断と治療社
  • 発売日: 2011/12
  • メディア: 単行本


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