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『温泉教授の健康ゼミナール』温泉は私たちの健康にどう役立つのか [健康]

『温泉教授の健康ゼミナール』(松田忠徳著、双葉社)という書籍を読みました。温泉に入ることは私たちの暮らしと健康にどういう効果があるのかがまとめられ、また温泉に関する様々な情報も網羅されています。ゴールデンウイークに温泉地に旅行されるご予定の方も、温泉についての知識を整理する意味でご覧になってはいかがでしょうか。

このブログでは、『週刊大衆』の記事をご紹介することがありますが、同誌には毎週、こんな広告が出ています。

週刊大衆・温泉ゼミ広告.png

もう何週連続で見たかわかりませんが、毎週目に入ると、いったいどんな内容だろうと気になってくるものです。そこで今回、『温泉教授の健康ゼミナール』を読んでみました。

内容は、これまで言われてきた温泉の様々な学説や情報をまとめたものです。

温泉で、よくいわれるのは「○○泉は××という鉱物が入っているので△△病にいい」という「効能」。

どこの温泉に行っても、具体的な疾病が表示されています。

これは私も以前「温泉の効用、美肌の科学的根拠はあるか?」で書きましたが、エビデンスはありません。

松田忠徳氏も、「戦後、温泉医学が西洋医学に駆逐されてしまった最大の原因」とそれを否定しています。

そう、温泉による湯治を「温泉医学」と松田忠徳氏は定義しているのです。

それは東洋医学と同じで、そもそも西洋医学とは異なる手法や概念で成立しているから、西洋医学の対処療法のように「~病に効く」などという表現をすべきではないということです。

まあ、別の表現に例えると、温泉医学が西洋医学的な表現で効能を語ることは、ボクサーが土俵に上がって相撲で力を表現するようなものだという話です。

ボクサーにはボクサーにふさわしい力の誇示の仕方がある。

それはもちろん、ボクシングのリングでボクシングによって表現することです。

では、松田忠徳氏いうところの「温泉医学」のリングとは何でしょうか。

書籍には、具体的に「温泉医学とは……」という記述はありません。

ただ、「ストレス続きの身体を癒すため。なんとなくすぐれない気持ちをリフレッシュするため。怪我を早く治すため。底冷えした身体を温めるため。若々しく美しい肌を取り戻すため」などは、温泉が私たちに与えてくれる効能であり(12ページ)、最近は「統合医療」(18ページ)、つまり通常の医療を補完する役割として注目されていると書かれています。例として、ヨーロッパでは温泉治療が健康保険の対象になっているといいます。

要するに、それで病気そのものを治療するのではなく、生体防御反応を高めて、日常生活の状態を向上させたり、闘病中の体力回復に役立てたりするということだと思います。

温泉2.jpg

松田忠徳氏は具体的に、温泉には次のようなはたらきがあるといいます。

「還元力」なるもの


温泉水は還元力(物質に電子を与えることができる)をもった水といいます。これは、今もよくいわれる「活性水素水」の話です。自殺した元大臣が「ナントカ還元水」と言ってましたよね。が、これについてはこんにちまで科学的な認知を得ていないので、私は同意できません。松田忠徳氏がそう書かれている、というご紹介だけにとどめます。

温熱効果


温かいお湯にのんびり浸かることで血行が良くなる。これはもう異論はありません。同時に松田忠徳氏は、昨今のシャワーで済ませる「シャワー文化」にも体温が上がらないからと批判的です。

これは我が家だけかもしれませんが、シャワーオンリーよりも、浴槽にお湯をためて温まるようにしたほうが、燃料代(ガス代)が安くなるという経験があります。イメージとしては逆だったんですけどね。

転地療養効果


ゆったりした環境でお湯に浸かることでストレス解消になり、仕事からも離れてゆっくり睡眠も取れる。同じ目的で来たいろいろな人と触れ合う安心感も経験できると書かれています。これも同感できます。

温泉.jpg

また、温泉の近くには神社仏閣があるので、「病は気から」という点でプラスに働くといいます。まあこれは温泉の効能というより精神的な問題ですね。

副交感神経を働かせてバランスをとる


温泉でリラックスすると副交感神経が優位になり、免疫力がはたらく。これは、福田ー安保理論(自律神経免疫療法)のことです。

その理論もこのブログにおいて「爪もみ、など健康情報を振り返る」で取り上げたことがあります。エビデンスという点では量質ともにデータは足りないものの、インチキという話もなく、まさに生体防御反応向上として心しておこうという感じでしょうか。

温泉でリラックスして体温が上がることで免疫力が上がるというのは、メディアでお馴染みの石原結實医師の持論です。

熱によってヒートショックプロテイン(HSP)を活性化する


このブログではたびたびご紹介している、ヒートショックプロテイン(HSP)の「マイルド加温療法」に温泉はぴったりだという話です。

家庭風呂以上に広くてリラックスできる温泉は、HSPの活性化がより顕著であるという話も「温泉や銭湯でより活性化する!?ヒートショックプロテイン」という記事でご紹介しました。

ということで、温泉に入ると何がいいんだろう、とふと疑問に思った時、同書はリファレンスマニュアルのような役割を果たせるかもしれません。

温泉教授の健康ゼミナール (双葉新書)

温泉教授の健康ゼミナール (双葉新書)

  • 作者: 松田 忠徳
  • 出版社/メーカー: 双葉社
  • 発売日: 2013/11/06
  • メディア: 新書


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