「決定!ニッポンの名曲ベスト100」という特集記事が、今週号の『週刊現代』(4月26日号)に出ています。同誌の55週年スペシャル特集として、48年リリースの『憧れのハワイ航路』(岡晴夫)から、01年の『涙そうそう』(夏川りみ)まで、識者アンケートで選んだ100曲が並んでいます。さすがに100曲並ぶと、思い出深い歌もずいぶん入っています。
同誌は「創刊55周年スペシャル特集」として、この記事について20人の識者にアンケートを実施。集計方法は各自が思う20曲を選ばせ、1位に20点、2位に19点、という方式で得点を割り振ってその合計でランキングを作成し、「みんなが愛した みんなが歌ったニッポンの名曲ベスト100」を作成したといいます。
その結果、1位になったのはイルカの『なごり雪』。
2位が坂本九の『上を向いて歩こう』、3位は山口百恵の『いい日旅立ち』です。
以下、『君といつまでも』(加山雄三)、『神田川』(南こうせつとかぐや姫)、『時代』(中島みゆき)、『川の流れのように』(美空ひばり)、『夜霧よ今夜もありがとう』(石原裕次郎)……と続いていますが、セールスだけならそれらを上回る、宇多田ヒカルやAKB48などはベスト100に入っていません。
選者は、いちばん若いのが倉田真由美の43歳で、ほとんどが50代後半から60過ぎ、いわゆる団塊の世代の人も入っているので、まあ平成になってからリリースされた楽曲は入る可能性は低いです。
もっとも、アイドル黄金時代といわれた80年代も、松田聖子も小泉今日子も中山美穂も入っていません。
『昴』(谷村新司、80年、11位)『ルビーの指輪』(寺尾聰、81年、18位)など「非アイドル」ばかりですから、要するに、この企画ではアイドルははじめから選ぶ対象として考えられていないようです。
個人的には、宇多田ヒカルもAKB48も、ぜーんぜん興味ないですよ。
でもやっぱりこういう選び方は少し疑問があります。
流行歌の傾向には、青春歌謡、フォークソング、ニューミュージックといった流れがあるように、歌手のデビューや年齢やキャラクターにも移ろいがありました。
その大きな突破口になったのが『スター誕生!』であり、80年代のアイドル量産時代はその結実としてひとつの時代を作りました。善し悪しや質は別にして、AKB48も時代を作っているのです。
歌の上手い下手や楽曲の質がどうあれ、爆発的に売れた人たちは、ある世代のある期間に対して確実に何らかの影響を与えたはずなんです。
この選び方では20~30代の人々の思いが見えてきません。
たとえば、私の学生時代は、松田聖子がリリースするたびにヒットしていました。大学の語学の単位を取れるかどうかでこっちは必死に勉強している時に、隣の出来損ないの浪人生が朝から晩まで松田聖子のレコードをガンガンかけているので、試験の時、中国語の単語が出てこなくて、松田聖子の歌声ばかり出てきて困ったことがあります。
まあ、いちいち名前はあげませんが、歌のことなんかわかりそうもない学者も入っています。そういう人は、知っている僅かな楽曲を書いただけなんでしょう。
たとえば、『いい日旅立ち』は山口百恵24枚目のシングルリリース。この歌は国鉄の「いい日旅立ち」キャンペーンソングでした。
「国鉄のキャンペーンソング『遠くへ行きたい』は、ひとつの時代を象徴するような国民ソングになっていた。だから、それに負けない国民ソングを作らなければならない。となると、歌手は山口百恵しかいない! 私は即座にそう思った」(『神話を築いたスターの素顔』で酒井政利)
こういう国民的認知を受けた楽曲は、安心して推せるんでしょうね。
それと、平尾昌晃や松崎しげるなど、選ばれる側の人も選者に入っていますが、いいんでしょうか(笑)
私にはそもそも、今までの歌に順位をつけろ、という要求自体難しいです。価値意識って点数化したり比較したりすることに馴染みにくいですからね。
まあ強いて言えば、同誌では16位になっている、ちあきなおみの『喝采』(1972年)です。
『喝采』については、以前も書きました。
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ちなきなおみ「喝采」と小柳ルミ子「瀬戸の花嫁」の歌姫対決!
それまで『四つのお願い』『X+Y=LOVE』『無駄な抵抗やめましょう』など、比較的明るい恋歌を歌い、ザ・ドリフターズとのコントも積極的にこなしていた彼女の、迫力満点の歌いっぷりに圧倒されました。
みなさんなら、どんな歌を選びますか。
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