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『金曜日の妻たちへ』断罪なきドラマこそ人間の切なさを描ける [懐かし映画・ドラマ]

『金曜日の妻たちへ』(1983年、TBS)という80年代中盤の人気ドラマが、「TBSチャンネル2」で4月1日13時から5話ずつ一挙放送されます。「金妻」という言葉が流行し、トレンディドラマと呼ばれる潮流の先駆けになったと言われている作品です。脚本家は鎌田敏夫。人間の切なさや葛藤を表現したいいドラマだと思います。

『金曜日の妻たちへ』が放送されるのは、TBSチャンネル2。「2」ということは「1」もあります。では1(Ch470)と1(Ch471)の違いは何でしょうか。まずその点、公式サイトから引用します。
「TBSチャンネル1」は、TBSの人気番組や、このチャンネルでしか見られないオリジナル番組を厳選しておくる総合エンターテインメントチャンネル。ドラマ、バラエティ、最新の音楽ライブ、Jリーグやプロ野球の生中継、アニメ・特撮、映画、ドキュメンタリーを24時間365日放送しています。
「TBSチャンネル2」は、TBSの膨大な作品リストから、心に残るドラマ、忘れられないバラエティなどの名作を集めたチャンネルです。作品の舞台裏や時代背景もたっぷり紹介。ときおり放送するマニアックなオリジナル企画も魅力です。
http://www.tbs.co.jp/tbs-ch/about/faq.html
開局半生記たてば、過去の資産はふえてくるので、地上波よりもこちらの方が多くの視聴者をターゲットにできるのかもしれませんね。



さて、ドラマのストーリーですが、東京郊外の新興住宅地に暮らしている3組の夫婦(30代から40代前半)の交流を中心に展開します。

結婚し、子供にも恵まれ、ローンで家も買った「中の上」の人々が、人生の踊り場に入っていろいろな悩みや人生の選択で葛藤します。その中で、ある夫婦は揃って他の異性と不倫をします。

『アサヒ芸能』(2013年11月7日号)で脚本家の鎌田敏夫氏は、『金曜日の妻たちへ』についてこう語っています。

「下町ホームドラマ全盛の頃に、郊外を舞台にしたドラマをやりたい、というのが発端。『郊外に住む35歳の主婦だけが見てくれたらいい』と言って始めたドラマでした。夫婦の友情物語がテーマで、キャスティングも地味だと、始まる前は『これではちょっと』と、局から言われていたらしい」
ー主題歌が大ヒットし、舞台になった東急田園都市線の地価が高騰。不倫がクローズアップされ、“金妻”が流行語になるなど、ものすごいブームでした。「DVDができた時に見直したら、泣かせるシーンがないのに泣けてくる。芝居をここまでやってくれたかと思ったら、書いてるほうは泣けてきたりする時があるんです」


「金妻」という言葉が流行し、このドラマが放送されて以来、「よろめき」が「不倫」という言葉に置き換わったといいます。

中には、そういうドラマだから「ふしだらだ」「見てはいけない」という昔気質の人もいるかもしれません。

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鎌田敏夫氏は、『金曜日の妻たちへ』を例にして、「ふしだら」な作品を書く理由を自著(『来て!見て!感じて!』海竜社)でこう語っています。
ドラマを観て泣いたと、よく言われました。
 このドラマには、悲しいシーンも可哀そうな設定も一切ありません。それなのに、なぜ泣けるのか。このドラマは、登場人物のすることを、一切断罪していません。人間がすることには、すべて、そうしなければいけない理由がある。それがぶっつかる、どうすることもできない切なさを描いたから、視聴者が泣いてくれたのです。
「不倫」、そんな言葉から出発してしまえば、そこにある男と女の切なさをすべて見逃してしまうことになります。倫理、そんなものは現実に任せておけばいいのです。
 脚本家に必要なのは、現実に埋没してしまわない強靭な精神です。
私はこのブログをずっと更新していて、やはりこのへんが一般の人と作家や俳優たちとの根本的な考え方の違いなんだな、と感じることがあります。

つまり、作家の描く世界や、芸能人の仕事用の姿を、そのまま社会の物差しでいい悪いと論評することは、その価値評価としてはズレているのです。

といっても、社会規範やモラルに忠実であるというのは、いち社会人としては大変に素晴らしいことです。

ただ、彼らクリエーターは、新しい価値の創出という仕事をしているわけです。その意味では、彼らの世界では限りなく自由に仕事をさせるべきだと思うのです。もちろん、それが現実社会でひとサマに迷惑をかけたり法律に触れたりしてはいけませんが……。

実際に、自分の連れ合いが「ふしだら」では嫌でしょう。

でも、人間が心の底に持っている「ふしだら」さが、どうにも妨げることなく表現されていることを描いた「物語」なら、自分がしない、できない体験を見せてもらっている、という気持ちでいいのではないでしょうか。

もっとも、この番組が放送されていた当時の私は、まだ学生で社会のこともよくわからないし、不倫どころか結婚もしていませんから、世代的にピンと来なかった、ように覚えています。

では、ドラマの登場人物たちの世代をちょっと越してしまった今見たらどうだろう。

そんな気持ちで明日からの放送を楽しみにしています。

来て!見て!感じて!

来て!見て!感じて!

  • 作者: 鎌田 敏夫
  • 出版社/メーカー: 海竜社
  • 発売日: 2013/06
  • メディア: 単行本


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