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『山口百恵「赤いシリーズ」DVDマガジン』で大映ドラマを振り返る

『山口百恵「赤いシリーズ」DVDマガジン』(講談社)が話題になっています。講談社は、60年代東宝人気映画のクレージーキャッツ出演作品や森繁久彌社長シリーズなどを収録した『東宝昭和の爆笑喜劇DVDマガジン』全50巻の発売を行っていますが、今度は大映テレビが制作したテレビドラマ「赤い」シリーズのうち、山口百恵出演作5作をDVDマガジンとして発売しているのです。

かつての人気映画やTVドラマシリーズのDVDを、読み物付きの書籍コードで販売する「DVDマガジン」が増えてきました。



大映テレビというのは、映画制作・配給会社の大映が倒産する直前(1972年)に、同社(大映テレビ室)が手がけていたテレビドラマの制作を引き継いだ会社です。

同社制作のドラマは、漫画チックなストーリーと、物真似されたりおちょくられたりしやすい大仰なワンパターン台詞で構成されることが一貫した特徴ですが、それでもつい見てしまう魅力がありました。

『夜明けの刑事』『スチュワーデス物語』『スクールウォーズ』……一世を風靡しましたね。

『スクールウォーズ』は観客役で、千駄ヶ谷の国立競技場まで行ったこともあります。山下真司や名古屋章や坂上二郎がいました。

それはさておき、「赤い」シリーズというのは、タイトルに「赤い」がついたドラマシリーズ10作のことをさしますが、山口百恵は7作に出演しています。

そのうちの1作は『赤い激流』(1977年)。これがシリーズではもっとも視聴率が高かったのですが、山口百恵は第1回に特別出演したのみで、ストーリーを動かす配役ではありませんでした。したがってこれは今回のリストから外れています。

もう1作、今回のリストから外れたのは『赤い絆(レッド・センセーション)』。「赤い」シリーズの第6弾でした。おなじみの共演者だった宇津井健も三浦友和も出演せず盛り上がりに欠けただけでなく、彼女自身がシリーズの終焉を望んでいた時でした。「もう『赤』は嫌だ、少なくとも『赤』という題名だけでも変えてくれてという強い要望があった」(『アイドル工学』)そうです。

本当ならこれも入れて欲しかったのですが、優先順位としては低くならざるを得なかったんでしょう。

山口百恵の真骨頂は……


山口百恵という人は、落ち目になる前にスパッと引退したので伝説化されていますが、実は、現役時代に頂上を極めたことがありません。

デビューのきっかけになった『スター誕生!』では最優秀賞がとれませんでした。

デビューしても、森昌子や桜田淳子は新人賞を取ったのに、山口百恵だけはとれませんでした。

歌手としては32曲リリースしても、週間のオリコン1位は『冬の色』(1974.12.10) 『横須賀ストーリー』(1976.6.21)『パールカラーにゆれて』(1976.09.21)と3回だけ。日本レコード大賞や日本歌謡大賞にも手が届きませんでした。

主演映画は文芸路線、日活リバイバル路線、そしてやっと自分の路線(横須賀ツッパリ娘路線)を作りかけたと思ったら、今度は原作を公募したりまた文芸作品に戻ったりと、結局ナンバーワンもオンリーワンも達成できませんでした。

レコードの生涯セールスも、『スター誕生!』の後輩のピンク・レディーに抜かれてしまいました。

「赤い」シリーズも6本も出演していながら、最高視聴率は達成できませんでした。

しかし、「赤い」シリーズのブランディングに決定的な貢献を果たしたのは間違いのないところですし、レコードのセールスも、1位ではないけれど3位に食い込んでいます。

要するに、株の世界でいうところの、瞬時に価値を発生して著しい利益を出すキャピタルゲイン型ではなく、長い時間をかけて存在全体から価値を生み出すインカムゲイン型の芸能人だったのです。

その意味で、過去の作品の資産価値で勝負するDVDマガジンに、山口百恵の「赤い」シリーズが登場するのは必然的なことだったのかもしれません。

発表されている収録作品


赤い迷路(全26話)


「赤い」シリーズの第1弾です。山口百恵は精神科の大学教授(宇津井健)の娘役。もっとも、実の父娘ではありません。山口百恵の芸能生活の前半は、「青い性」の歌、「赤い」シリーズの複雑な生い立ちや突然の悲劇を経験する少女、そして後に始まる文芸映画、といったパターンでした。

赤い疑惑(全29話)


本作も宇津井健とは本当の父娘ではなく、岸恵子演じる叔母が実の母親です。山口百恵が爆発事故で放射線療法用コバルト60を大量被曝。その時、彼女を助けた医大生が三浦友和で、2人は惹かれ合うが実は異母兄妹だったという話です。

赤い運命(全28話)


伊勢湾台風で妻子と離れ離れになった東京地検検事(宇津井健)が、養護施設の赤ん坊取り違えで引き取った「我が子」が元殺人犯(三国連太郎)の娘と入れ替わったというややこしい話。山口百恵と宇津井健は、今度は実の父娘ながら取り違えられた関係です。絶対に普通の親子関係に設定されないのが大映ドラマです。

赤い衝撃(全29話)


ほのかな愛が芽生えていた女子陸上界期待のスプリンター(山口百恵)と青年刑事(三浦友和)。しかし、刑事の狙撃犯を狙った銃弾で百恵演じるスプリンターが下半身不随に。山口百恵が、三浦友和を初めて異性として意識した番組と言われています。

赤い死線(前後編)


山口百恵引退記念スペシャルドラマでもあり、「赤い」シリーズの最終作にもなっています。

私の注文


私は「誰にも負けない山口百恵フリーク」というわけではないのですが、このシリーズ画竜点睛を欠いているなと思ったのは、「赤い」シリーズのプロトタイプと思われる『顔で笑って』(1973年)が収録作品に含まれていないことです。

タイトルに「赤い」こそ入ってはいませんが、山口百恵の大映ドラマ出演は『顔で笑って』が最初なのです。

山口百恵は、宇津井健とは実の父娘だが父子家庭のため寄宿舎暮らし。宇津井が恩師(松村達雄)の開業医に請われてそこの院長になり、院長の娘(倍償美津子)と再婚(養子)。バレーボールの恩師でありママハハである倍賞と百恵、そして宇津井の家族像をコミカルに、そしてちょっと切なく描いたドラマでした。ぜひ入れていただきたかったですね。

いずれにしても、大映ドラマ、「赤い」シリーズ。1980年代のトレンドです。

昨日の『クレージー作戦 先手必勝』(1963年)より新しいですが、それでも通じるのは40代後半以上でしょうか。

隔週刊 山口百恵「赤いシリーズ」DVDマガジン 2014年 3/11号 [分冊百科]

隔週刊 山口百恵「赤いシリーズ」DVDマガジン 2014年 3/11号 [分冊百科]

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2014/02/25
  • メディア: 雑誌


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