SSブログ

ウルトラマンNG映像集評価で改めて考える「メイキング」 [芸能]

ウルトラマンの「NG映像」フィルムを発見した、とNHKが報じています。特撮シーンの撮影に失敗したものがおよそ1時間分だそうです。その時は「失敗」でしたが、時を経てそれは、特撮技術の舞台裏を知る貴重な映像として評価されることになったわけです。ということは、現在メイキングと称して使われているNG集にも価値があるのでしょうか。

NG集も、時間が経つと、「どんな苦労があったか」の証拠になるんですね。
世界的にも知られる日本の特撮技術が生み出したヒーロー「ウルトラマン」の撮影で、40年以上前のいわゆるNGシーンのフィルムが大量に見つかり、専門家は「日本が発展させてきた特撮技術の舞台裏を知ることのできる貴重な映像だ」としています。
ウルトラマンを製作した「円谷プロダクション」の関係者の自宅に、40年以上、保管されていました。このうち、ウルトラマンが怪獣を持ち上げて投げ飛ばすシーンでは、誤ってセットの木まで抜いてしまい、撮り直しとなっています。
しかし、その木には根が付いていて、当時、背景に本物の木を1本1本植えていた様子が分かります。また、炎による攻撃がまったく効かないという設定の怪獣の撮影では、誤って着ぐるみが燃えてしまい、スタッフがあわてて消火する姿が写っています。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20131023/k10015504261000.html (10月23日 21時8分)
今回のウルトラマンは、40年以上たってから、あてにしていなかったものが発見されたわけですが、ドラマや映画には、最初から予定しているか、編集の段階でまとめようと決めたか、どちらかによる「メイキング」なるコーナーがあります。

やってることは今回発見された映像と同じNG集です。セリフが出なかったり、進行上手違いがあったりした、撮影の失敗ですね。

私が気づいたところでは、『翔んだカップル』(1978年、フジ)というドラマで、毎回“本編”が終わってからNG集のコーナーを作っていたのが本格的なものとしては最初ですが、その頃は「メイキング」なんて言われていませんでした。

スポンサードリンク↓

びっくりしたのは、『トイ・ストーリー2』の終わりにそれがあったことです。



CGの制作現場での映像ではないんですよ。

ウッディやバズ・ライトイヤーなど、登場したキャラクターが、本編と同じシーンで、まるで俳優のようにNGを出して「すまんすまん」といっているのです。

手が込んでるなあと思うと同時に、メイキングというのは、こんな子供の見るものまで出てくるほどポピュラリテイを得てしまったのかと驚きました。

しかし、少なくとも日本の本職の俳優たちは、決してそれに賛成しているわけではありません。

たとえばNG集、反対論者である高橋英樹はこう言っています。
「役者が35回NG出して、36回目にいい芝居ができた。それをつなげて作るのが、我々の作り上げる映像だと思っているわけですね。そりゃ、1回でできればそれに超したことはないのですが、小津安二郎さんの時代から溝口健二さんの時代から、20回も30回も本番を撮って、その中のいいものをつなぎ合わせて日本の名作というのはできてきたわけですよね。
でもNGは、笠智衆さんも原節子さんもたぶんいっぱいやっていると思う。それは出しませんよね。だけど、今はその方が視聴率がいいんですから。他人の失敗は楽しいんでしょうが、自らの作り上げてきた映像の世界から見て、どこかで自分たちの首を絞めることにならないかと思うんです。
否定はしますけど、まあ、世の中の流れとして、あることだから、使われることだろうと思いながら演じてはいるんですけど。(「BBcom」2002年10月号)
今回のウルトラマンのNG映像では、ニセウルトラマンが建物を壊しそこねているシーンがありますが、もしかしたら、その中の人は、「今頃表沙汰にしやがって」なんて思っているかもしれません。

監督に、どういう壊し方がいいか何回か撮って決める、といわれた撮ったひとつかもしれないのに、あたかも俳優個人の失敗のように見られちゃ、たまんないよ、というシーンかもしれません。

演じている俳優の権利や気持ちの問題がありますし、「裏ではこんな失敗をしています」というものをわざわざ見せるのは、見るものに対して言い訳をしているようにもとられかねません。

そういう意味で、俳優がNG集の公開に賛成しないのはわよくわかります。

今回のNG集と、「メイキング」とはやはり意味の異なるものです。

今回、ウルトラマンのNGが評価されましたが、NGというのはやはりその時の“失敗作”ではあるわけですから、オンエアの時に、OKが出たものとNGとは一緒に見せるものではないでしょうね。

つまり、撮った映像は、今、見せるもの(撮影に成功したもの)と、後から価値を生じ得るもの(NG集)として、別の価値観で存在するのではないかと思います。

もう、メイキングというものが当たり前のように作られている以上、それはもとに戻すことはできません。

それを踏まえて、これから俳優が出演契約をするときは、オンエアされるものとそれ以外のものとで、2項だてで契約をするのが望ましいのではないかな、という気がします。

ま、今回の秘蔵NG集、おそらくはNGを出した俳優も、なつかしく見るでしょうけどね。

別冊映画秘宝ウルトラマン研究読本

別冊映画秘宝ウルトラマン研究読本

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 洋泉社
  • 発売日: 2013/11/27
  • メディア: ムック


nice!(340) 
共通テーマ:学問

nice! 340

Facebook コメント

Copyright © 戦後史の激動 All Rights Reserved.
当サイトのテキスト・画像等すべての転載転用、商用販売を固く禁じます