自由民主党に「派閥」があることは、同党の議員も今更否定はできないでしょう。今週発売の『週刊大衆』(10月21日号)には、「安倍首相の抵抗勢力もゾロゾロ 自民党総勢292人派閥犬猿相関図」というタイトルの記事がトップに掲載されています。
今年の夏は、各派閥が揃って泊まりがけの研修会を復活させました。派閥解消どころか思いっきり復活しているではありませんか。
では、その派閥って一体何でしょう。国民にどんな利益をもたらしてくれるのでしょうか。
自由民主党派閥。政策グループというよりも、人間関係や利害の一致で組んでいる面が強いように思えます。
たとえば党の決定に従わない「造反」があったとしても、それは別に政治家としての信念というより、主導権を握っている他派閥や、選挙区の関係でライバルになっている議員への対抗意識という、なんとも私的な次元のことである場合も少なくありません。
ですから、私は「造反」議員がエラソーに語るその大義については懐疑的に見ています。
いずれにしても、そんな裏側を知るために、自由民主党の派閥とその関係を知っておくことは有権者として意義のある情報だと思います。
同誌の「相関図」は、1955年の自由民主党の結党時に分かれていた旧自由党系の流れをくむ二派と、旧日本民主党の流れをくむ四派の2つの「源流」があるといいます。
旧自由党系だった二派は、額賀派(田中角栄派→竹下登派→小渕派など経て現在に至る平成研究会)と池田勇人元総理から続く宏池会系三派(大平派→宮沢派→加藤派→古賀派→岸田派、谷垣禎一グループ、麻生(太郎)派など)。
もうひとつは旧日本民主党の流れをくむ四派で、保守本流、つまりアメリカ追従のタカ派である町村派(岸派→福田派→三塚派→森派など清和政策研究会)、亀井静香氏が汗を流して作った派閥なのにいつのまにか出戻りが領袖になった二階派(河野派→中曽根派の一部と清和政策研究会の一部)、領袖(山崎拓氏)が落選するという何ともしまらない石原(伸晃)派(旧中曽根派の一部)、クリーンを売り物にしながら実はそうではなかったと側近の海部俊樹氏にバラされた三木武夫氏の作った大島派(三木・松村派→三木派→河本派→高村派と続いた番町政策研究所)。
そこに新たに石破茂氏、小泉進次郎氏、菅義偉氏などをクエスチョン付きにして、これから派閥を作るかも、という書き方をしています。
大きく2つに分けてはいますが、その対立や協力関係を見ると、大きな違いがあるとは思えません。
二階派の領袖の二階俊博氏は、そもそも田中派でしたがいったん離党。しかし、出戻った先は額賀派ではなく、最初は旧保守党の残党でグループ。そしていつのまにか伊吹文明氏の衆議院議長就任の後を受けて志帥会(かつての江亀派)会長(第5代)になっていました。
元総裁の河野洋平氏は、もともと中曽根派だったはずなのに、新自由クラブを経て出戻った先は宏池会でした。
なぜ離党前と同じ派閥に戻れないか。
同誌によると、「足抜けした人間には“恨み骨髄”」だからだそうです。
要するに、政策ではなく感情なんですね。
相関図では大きな対立にあるはずの旧自由党系の麻生派と、旧日本民主党系の大島派が合併するとか。
大島派の高村正彦副総裁は、本当は親中国派なのに、総裁選で安倍晋三氏を担ぐ矛盾も同誌では指摘。
ただし、合併すると党内第三勢力になるので、安倍政権に反旗を翻すかもしれないと書いています。
「かもしれない」が本当かどうかはわかりませんが、派閥の合併は党内の力関係に影響をあたえるのはたしかでしょう。
それらの動きに支持者の意向は反映されているのでしょうか。
ことほどさように、好き嫌いの感情と選挙区事情と国取りゲーム感覚が複雑に入り混じった自由民主党派閥。
是非はいろいろあるでしょうが、いずれにしても「党内野党」反乱による政局ではなく、国会の論戦が信を問う国民のための政治であってもらいたいと思います。
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