森昌子の『記念樹』という歌がリリースされたのは、40年前の1973年10月31日。そのレコードジャケットで、森昌子はフランスの画家・彫刻家であるエドガー・ドガの画集を抱えていました。今日はそのエドガー・ドガが亡くなった日です。エドガー・ドガから森昌子の『記念樹』を思い出しました。
初恋や学園ソングなど、10代の心情を清らかに表現した歌のジャンルを「青春歌謡」といいますが、その最後の歌い手ともいえるのが森昌子です。
舟木一夫をモデルにしたかったホリプロ社長(当時)の堀威夫氏や、作曲家の大御所だった遠藤実さんのレーベル、ミノルフォンの方針、さらには森昌子の実年齢などから、彼女はデビュー以来、青春歌謡路線で歌い続けています。
『せんせい』(1972.7.1)、『同級生』(1972.10.25)、『中学三年生』(1973.2.5)、『夕顔の雨』(1973.5.5)、『白樺日記』(1973.8.25)……
そして、6曲目がこの『記念樹』でした。
記念樹/さびしがりや
森昌子
作詞:阿久悠
作曲:森田公一
編曲:馬飼野俊一
ミノルフォン
卒業の記念樹を植えているうちに、学園生活の出来事をいろいろ思い出して胸が熱くなったという叙情詩です。
森昌子というと、デビュー曲『せんせい』のイメージが強く、また実際セールスからみてもそれは間違いではないのですが、私が青春歌謡時代の森昌子の歌で、1曲選べと言われたら、迷わずこの『記念樹』を選びます。
で、ジャケット。私は美術に詳しいわけではないのですが、森昌子が抱えている画集はエドガー・ドガですよね。
森昌子は当時中学3年生です。通常の中学生でエドガー・ドガに傾倒するというのは考えにくいのですが、セーラー服でないところからみて、絵を描くのが好きな真面目な高校か大学の美術部所属、という設定なのかもしれません。
森昌子といえば、これまでこのブログで取り上げてきた桜田淳子や山口百恵と、「花の中三トリオ」として売りだされましたが、デビューは彼女たちよりも1年早い。
森田昌子が『スター誕生!』に登場したのは第7回目の放送でした。
番組を支えてきた作詞家の阿久悠さんは、彼女についてこう述べています。
「小柄というより子どもの体型で、垢抜けない髪型、多少ウェーブのかかったオカッパであったと記憶しているが、似合うも似合わないも、ただ校則に従っているという感じで、そこからスターを予感させるものなどは、何もなかった」(『夢を食った男たち』)
キャスケットをかぶり、最初からスターの素質抜群の桜田淳子とも、独特の暗さにある種の伸びしろを感じさせた山口百恵とも違い、歌うまでは、どこにでもいる13歳の少女に過ぎなかったわけです。
ところが、『涙の連絡船』を歌い始めると審査員たちは、「思わず腰を浮かし、一瞬表情を緊張したものに変え、やがて、深い深い溜息をついて微笑で顔を覗き合う状態になるまでいくらも時間がかからなかった」(同)という見事な歌声で、13社のプラカードが上がる初代最優秀賞(グランドチャンピオン)に輝きました。
森昌子は、製菓会社勤務のサラリーマンの娘。デビュー後も東京の区立中学に在籍し、「どこにでもいる13歳の少女」のままでした。
公立中学で、よく芸能活動が認められたなあと思いますが、森昌子は芸能活動だけでなく、東京の中学生の定番である、京都奈良の修学旅行にも一生徒として行っています。
旅行中、他校の生徒と鉢合わせになり「森昌子」が見つかると、彼女のクラスメートが三重、四重の輪を作ってガードしながら進んでくれたというのです。
「あの頃、心の支えになっていたのは、中学の友達」(森昌子『明日へ』幻冬舎)という昌子にとって、学園ソングはまさに自分の素晴らしき中学生活そのものの。
『記念樹』には、森昌子のそんな思いが伝わってきます。
記事の訂正です。
次のご指摘がありました。
記事を書き直すとタイトルも本文もかわってしまうので、
恥を忍んでそのままにして、ご指摘を公表させていただきます。
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森昌子の持っている画集がエドガー・ドガとの記述ですが、この本の表紙の絵はエドヴァルド・ムンクのマドンナだと思います。たぶん、この本ではないかと思います。
『現代世界美術全集21巻/ムンク・カンディンスキー』
(ムンクとカンディンスキーの2人の作品を合わせた画集ということだと思います)
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長年の思い込みを正していただきました。
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明日へ
- 作者: 森 昌子
- 出版社/メーカー: 幻冬舎
- 発売日: 2006/04
- メディア: 単行本
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