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桜田淳子、一夜限りのステージ復帰で振り返る“青い鳥”の軌跡 [芸能]

桜田淳子の22年ぶり一夜限りのステージ復帰が話題になっています。11月26日に東京・銀座の博品館劇場で行われる、ベストアルバム『Thanks 40 ~青い鳥たちへ』(10月23日発売)を記念したイベントだそうです。40周年ということですね。

先日、相沢秀禎会長のお通夜に姿を見せたのは、これがあったから話題作りも兼ねたものだったのか、それとも、当日精進落としで後輩たちと話しているうちにソノ気になったのか。

そのへんはわかりませんが、テレビや映画やCMなどはむずかしいでしょうから、あるとすればこういう形の“復帰”だったのでしょう。

桜田淳子は、日本テレビのタレントスカウト番組『スター誕生』の第4回決戦大会で、番組史上最高の25社から獲得の意向を示すプラカードが上がり、最優秀賞(グランドチャンピオン)を受賞。最高のスタートをきりました。

『スター誕生!』については、以前の記事をご覧ください。
>>『スター誕生!』と桜田淳子の40年

憧れのタレント森田健作がいるからという理由でサンミュージックに所属。デビュー後はアイドル歌手としての王道を歩み、80年代は女優にシフトして実績を重ねました。

『スター誕生』の収録において、初めて桜田淳子を見た阿久悠氏の衝撃がこう記されています。

「神がかり的なことを言うようだが、至極平凡な少年少女の輪の中で一人だけ、浮き上がって見える、あるいは、淡い蛍光色に光るように思える少女がいた。演出を心得ているのか、白いベレー風の帽子をかぶっていて目立ったが、大人の興奮が白い帽子で誘われるものではなく、彼女自身が発散している、彼女自身も気づかぬ何かが立ちのぼっているとしか言いようがなかった。/それが桜田淳子だった」(阿久悠『夢を食った男たち―「スター誕生」と歌謡曲黄金の70年代』文藝春秋)

当時の番組プロデューサー・池田文雄氏も自著で彼女をこう褒めちぎっています。

「スターになるには二通りあって、この淳子のように初めから輝いているタイプと、これは磨けば輝くというタイプがある。スカウトする側にしてみれば、この淳子のような宝石タイプはすぐにでも飛びつきたくなるタイプ」(『テレビ人生!「そんなわけで」録』コアラブック)

『スター誕生』の初代司会者である萩本欽一も、同じような感想を述べています。

「スタッフが入れ替わり立ち替わりのぞきに来るんだけど、誰が見ても淳子ちゃんだけに目がいく。これはもう、ほっといたって大スターになると予感させたよね。あのいかつい阿久悠さんも、彼女がいるとニコニコしてたくらい」(『アサヒ芸能』2013年1月3.10日号)

デビュー前からこれだけ高く評価されたタレントはかつていなかったのではないでしょうか。

その“アイドル・即戦力”桜田淳子のデビュー曲がこの歌でした。

『天使も夢みる』(1973.2.25)
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天使も夢みる/足長おじさん
歌手:桜田淳子
作詞:阿久悠
作曲:中村泰士
編曲:高田弘
ビクター音楽産業

「天使」「夢」「花」という言葉をタイトルに入れた可憐な少女そのままの歌です。彼女自身も天使をイメージした衣装をまとって歌いました。レコードジャケットには、エンゼルハットといわれた白いキャスケットをかぶっています。

彼女はこの後も、『天使の初恋』(1973.5.25)、『わたしの青い鳥』(1973.8.25)など、7枚目のリリース『花占い』(1974.8.25)まで、「花」や「天使」といった少女路線のタイトルをつけています。

森昌子、山口百恵と「花の中三トリオ」と呼ばれましたが、遠藤実氏のミノルフォンレコードで“最後の青春歌謡の担い手”となった森昌子、デビュー曲が不発でアイドルらしくない“陰のある売り方”にシフトした山口百恵などと比べ、もっとも女性アイドルらしい歌とポジションを得ました。

この年の芸能界は「あ」の当たり年といわれ、麻丘めぐみ、アグネス・チャン、浅田美代子、あべ静江、安西マリアなどライバルが多数ひしめくなかで、中学生の彼女はこの歌をオリコンで12位、12.1万枚と売り上げ、上々の滑り出しでした。

“青い鳥”の桜田淳子と“青い性”の山口百恵、なんて言われたものです。

少女から大人への成長を歌い続けた桜田淳子。以後は私の選んだ「桜田淳子ベスト10」です。

『わたしの青い鳥』(1973.8.25)
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わたしの青い鳥/恋人になって!!
作詞:阿久悠
作曲:中村泰士
編曲:高田弘

ジャケットは、キャスケットこそかぶっていないものの、デビュー時とかわらない淳子の可憐な笑顔。後に、この替え歌のリフレインで「ようこそ ここへ や・ま・い・ち」と桜田淳子が連呼する山一証券のCMも登場しました。

後に、おニャン子クラブが『恋のくえすちょん』(1986年11月1日)をリリースしましたが、作曲を提供した見岳章氏は、この歌のパロディだったと述懐しています。

手首を曲げて、ク・ク・ク・ク・クエッスチョン、ていうところですね。

『はじめての出来事』(1974.12.5)
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はじめての出来事/特別な気持
作詞:阿久悠
作曲:森田公一
編曲:竜崎孝路

初めてのオリコンの1位獲得。文句の付けようもないヒット曲。『第26回NHK紅白歌合戦』でも歌いました。この頃、秋の新番組ドラマ『となりのとなり』に出演。主人公の大原麗子が、年が倍違うソバ屋の主人・小林桂樹の後妻に入り、いろいろな出来事が巻き起こる日本テレビらしいホームコメディーでした。

『白い風よ』(1975.5.10)
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白い風よ/だからわたしは
作詞:石森史郎
作曲:桑原研郎
編曲:竜崎孝路

新人、大竹しのぶを抜擢したNHK連続テレビ小説『水色の時』の主題歌。セーラー服を着て自転車に乗り笑っている彼女のジャケットがいいので選びました。この頃映画『スプーン一杯の幸せ』にも初主演。見に行きました。

『十七の夏』(1975.6.5)
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十七の夏/高原物語
作詞:阿久悠
作曲:森田公一
編曲:竜崎孝路

17歳になって間もない初夏のリリース。40万枚を超すセールスを記録しました。オリコンチャートは2位で第17回日本レコード大賞・大衆賞も受賞したヒット曲。『はじめての出来事』の52.7万枚に次いで2番目に売れた歌になります。後に和田彩花、W(ダブルユー)など桜田の娘世代にあたる歌手たちにカヴァーされています。

『夏にご用心』(1976.5.25)
夏にご用心.jpg
夏にご用心/白い少女のバラード
作詞:阿久悠
作曲:森田公一
編曲:A面高田弘 B面竜崎孝路

35万枚を超すセールスを記録。こちらもオリコン最高位2位につけました。歌の方は、桜田淳子の持ち歌にありがちな「ご用心」という歌詞のリフレインを用いた(6度出てくる)子どもにもわかりやすい歌です。

『気まぐれヴィーナス』(1977.5.15)
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気まぐれヴィーナス/若い人のテーマ
作詞:阿久悠
作曲:森田公一
編曲:A面船山基紀 B面青木望

A面は『第28回NHK紅白歌合戦』で歌われ、B面は恒例のゴールデンウィークの映画、石坂洋次郎原作の『若い人』で使われた主題歌。もちろん主人公は桜田淳子です。

『しあわせ芝居』(1977.11.5)
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しあわせ芝居/晩秋
作詞:A面中島みゆき B面穂口雄右
作曲:中島みゆき
編曲:A面 船山基紀 B面:穂口雄右

中島みゆきが詞・曲を提供しています。ジャケットは、素足で片足を上げてくの字を作っています。これまでの少女、アイドルといった趣とは明らかに違う女性・桜田淳子を歌う記念すべき一曲でした。

『リップスティック』(1978.6.5)
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リップスティック/トロピカル・ランデブー
作詞:松本隆
作曲:筒美京平
編曲:A面 筒美京平 B面 荻田光雄

結果的に、彼女の最後のランクイン曲。阿久悠は、「十四歳で、あるいは、十五歳でデビューした少女歌手たちを、どのようにして、作品によって年齢をとらせていくか」と悩み(『夢を食った男たち』)彼女に対して、マリリンモンローのイメージさえあったと書いていますが、セールスにはつながりませんでした。

『玉ねぎむいたら』(1981.5.1)
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玉ねぎむいたら…/哀しみの前奏曲
作詞:山路路夫
作曲:平尾昌晃
編曲:船山基紀

日本テレビの青春ホームコメディーを何本も撮っていた脚本・松木ひろしと主演・石立鉄男のコンビがTBSに舞台を移し、桜田淳子をヒロインに迎えて制作されたのが『玉ねぎむいたら…』(81年4月3日~81年11月6日)。の主題歌。石立鉄男は、山口百恵とも“大映ドラマ”で共演していますが、コメディーではありませんでした。。2人の明と暗の違いは「石立鉄男との共演」にもあらわれているところが興味深い。


……というわけで、この後は女優としての活躍にシフトしていくわけです。

話を冒頭の復活話に戻しますと、まあ私としては、往年のスターが長いブランクをはさんでまた表舞台に出てくることは、複雑な思いがありますけどね。

ファンの方々はどうお考えでしょうか。

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