井上陽水。1970年代のニューミュージックを牽引した立役者も8月30日で65歳になります。はやいものですね。井上陽水は、夏が終わる9月にあえて「夏の歌」をリリースしています。営業戦略的に有利とはいえないはずですが、彼ぐらいの大物はむしろ時節に頼らないプロモーションが似合っていたのかもしれません。今回は、井上陽水など、9月以降にリリースされた「夏の歌」をまとめてみました。
井上陽水は、歯科医の子弟で家業を継ぐことが期待されながらも、本人は高校時代にラジオで聴いたビートルズに傾倒して芸能界入り。69年9月にCBS・ソニーから、アンドレ・カンドレと名乗り『カンドレ・マンドレ』でデビューしました。
ブレイクしたのは、72年にポリドールに移籍して現在の井上陽水(ようすい)に改名してから。ちなみ本名は同じ字で「あきみ」と読むそうです。70年代は吉田拓郎とフォークソング界、ニューミュージック界を牽引して双璧をなしました。
・夕立/ゼンマイじかけのカブト虫(1974年9月1日)
歌・作詞・作曲:井上陽水
編曲:星勝
レコード会社:ポリドール
73年に発売されたアルバム『氷の世界』は、アルバムとして日本初のミリオンセラーを達成。この歌がリリースされたのは、まさにその絶頂期にあります。
この2年後の76年に大麻取締法所持容疑で逮捕。梨元勝氏は彼の復帰に大反対しましたが、一方では「覚せい剤ならともかく、大麻初犯なら再起に期待してもいいじゃないか」という声もありました。
しかし、社会の評価か、本人の疲弊か枯渇か、その件以来数年間、井上陽水は信じられないような不振が続きました。
・夏の終りのハーモニー/俺はシャウト!(1986年9月25日)
歌:井上陽水・安全地帯
作詞:井上陽水
作曲:A面玉置浩二(編曲:星勝+安全地帯+中西康晴)B面玉置浩二(編曲:井上陽水+安全地帯+中西康晴+川島裕二)
レコード会社:キティレコード(現ユニバーサル・ミュージック・ジャパン)
井上陽水と安全地帯による、1986年8月20日・21日の2日間行った神宮球場のジョイント・コンサート『スターダスト・ランデヴー』のために作られた楽曲です。
最初の小節を玉置浩二が歌い、歌詞の「恋のハーモニー」の部分では2人の文字通りハーモニーが、そして次の小節は井上陽水が歌い、また「ハーモニー」ではハモるという構成。
歌詞は簡単ですが、アレンジャーが多く、個性ある2人の歌手のハーモニーを生かすために練られた力作であることがよくわかります。
これはお金が取れる珠玉の一作だと私も思いますよ。
YOUTUBEに動画が上がっていますね。ずいぶんチャンネル登録もされていますが、著作権的にいいのかな?
・バイ・バイ・サマー/踊りましょう(1983年9月1日)
歌:石川秀美
作詞:A面竜真知子 B面小川亜紀子
作曲:小田裕一郎
編曲:A面入江純 B面鷺巣詩朗
レコード会社:RCV
石川秀美は「西城秀樹の弟・妹募集」のオーディションで優勝して芸能界入り。82年4月21日に『妖精時代』でデビューしました。
マッシュルームカットに、やや浅グロの肌で均整の取れたプロポーションでミニスカートと、健康美を売り物にしたアイドルとして活躍しました。
ただ、80年代は女性アイドル大豊作の時期。同期だけでも中森明菜、小泉今日子、堀ちえみ、早見優、松本伊代、三田寛子など「花の82年姐」は人材豊富で、そこから突き抜けた存在にはなれませんでした。
3年前、資生堂のCMに、荻野目恵子、伊藤つかさ、河合その子らとともに薬丸秀美として久々に表舞台に登場しました。
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・夏をあきらめて/今はブルース(1982年9月5日)
歌:研ナオコ
作詞:A面桑田佳祐 B面来生えつこ
作曲:A面桑田佳祐 B面鈴木キサブロー
編曲:A面若草恵 B面奥慶一
キヤ二オン
サザンオールスターズのカヴァ一。09年には坂本冬美も歌っています。
研ナオコのデビューは71年ですが、顔が知られるようになったのは、73年に師匠の堺正章が出演する人気ドラマ『時間ですよ』に、由利徹の娘役で出演したときです。当時はもっと太っていて、茶髪にパツンパツンの赤いズボンを履いていました。
歌の実力もさることながら、女性ではなかなかやりたがらない、お笑い役や汚れ役を厭わず引き受けてきたプロ根性があればこそ、長く芸能界で仕事ができた面もあるのではないかと思います。
・月下美人/プロミス(1981年9月25日)
歌・作詞・作曲:門あさ美
編曲:A面松任谷正隆 B面飛沢宏元
ユニオンレコード(発売テイチク)
月下美人という植物は、花は美しいが「新月の夜にしか咲かない」「年に1度しか咲かない」などといわれます。そこで歌詞も、「一夜だけ」咲く、「一夜の命」など、それに基づいた描き方がされています。
彼女は、リリース当時からライブやメディアの露出など一切行っていません。リリースした楽曲だけが活動の全てというきわめてめずらしいタイプのミュージシャン。それでも根強いフアン層に支持され一定のセールスを残してきたわけですから、非常に効率がよい芸能生活といえます。
・白いヨットに赤いシャツ/まごころ下さい(1975年10月4日)
歌:長良いづみ
作詞:A面中山大三郎 B面たかたかL
作曲:A面大本恭敬 B面長沢ロー
編曲:A面小杉仁 B面竹村次郎
ビクター
長良いづみという歌手を覚えていますか。これは彼女のデビュー曲です。演歌歌手にありがちな着物姿ではなく、ミニスカートでコプシもほどほどという、いうなればポップス系演歌歌手といった独自のスタイルで活躍しました。
彼女は、レコード会社もビクター、ミノルフォン、リバスター、テイチクなど次々移籍し、芸名も「長良いづみ」から「長良いずみ」に変えるなど、その陽気なキャラとは裏腹に苦労続きの歌手人生がうかがえます。
・バカンスはいつも雨/Downs10PedWay(1982年10月21日)
歌・作詞・作曲・編曲:杉真理
B面のみストリングスアレンジ 大谷和夫
CBS・ソニー
「雨」と書いて「レイン」と読み、「真理」と書いて「まさみち」と読みます。杉真理は慶應義塾大学時代に、竹内まりやや安部恭弘らも参加する学生バンド・ピープルを結成。「ヤマハJコンテスト」では作曲賞を受賞し、松任谷正隆に声をかけられてプロデビューしています。
この歌は、グリコ『セシルチョコレート』CMソングに採用されました。堀ちえみがひとかじりするCMは今もYOUTUBEにアップされています。
『スチュワーデス物語』のせいか、堀ちえみには切なくほろ苦いイメージが有り、このCMにピッタリだったと思います。
杉真理は、やはり夏の歌である「真夏の出来事」をヒットさせた平山美紀と同じ東京・大田区育ち。ただし平山美紀は蒲田の出身で、杉真理は大森地区(中馬込)。元シュガー・笠松美樹も馬込の出身です。ちなみに平山美紀は、私が卒業した小学校の近くに実家がありました。
ということで平山さん、もし若気の至りでピンポンダッシュしてたらいまさらですがごめんなさい(汗)
夏の終りのハーモニー
- アーティスト: 井上陽水
- 出版社/メーカー: キティ
- 発売日: 1988/12/10
- メディア: CD
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