Jカーブ効果って聞いたことありますか。経済や疫学調査などで使われていますが、今回は「お酒のJカーブ効果」に限定して述べてみます。
過去の疫学調査に、総死亡率や脳梗塞などは、非飲酒者に比べて少量飲酒者のリスクが低く、その後飲酒量が増えればリスクが高くなるというJ字型を描く統計になることから、「全く飲まないよりは適量の飲酒の方が健康に良い」という主張の根拠になっています。
しかし、その「効果」に異を唱えているのが吉田たかよし医師です。
今月の13日、愛知県大治町・岩本好広町長が道路交通法違反(酒気帯び運転)の疑いで摘発され、町長を辞職しました。
岩本好広(前)町長は、過去にも同様のトラブルを起こしたことがあるそうです。
もちろん、道路交通法違反はいけないことですが、報道によると、岩本好広(前)町長は飲んだ帰り道に運転したわけではなく、前日の夕食後に水割りを4杯、夜中に目が覚めて焼酎を1~2杯飲酒したアルコールが朝7時35分頃の検問でまだ残っていたもので、飲酒量は特に多かったわけでもなく現役(元プロ野球選手)時代からの目安だったといいます。
どのぐらいをもって適量かは私にはわかりませんが、元スポーツ選手として9年続けられた量なら、少なくとも本人には「飲み過ぎ」には思えない量なのかもしれません。
引退から20年たちましたが、公職に就くといろいろストレスもたまるのでしょう。ただ、「量」に対して、適量ならいいだろうというような過信はしない方がいい、という教訓になったのではないでしょうか。
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さて、吉田たかよし医学博士は、「東京スポーツ」(6月6日付)の「日々是アンチエイジング」で興味深い指摘をしています。
カリフォルニア大学(米国)などの国際研究チームが、飲酒と健康状態との関係を調べた代表的な54本の論文を再検証した結果、Jカーブ効果には大きな落とし穴があることが分かったのです。糖尿病や肝臓病など重い病気を患うと、飲酒は厳禁です。だから、飲酒量の調査をすると、病気のために飲酒をしない人が必ず含まれます。これを単純に集計すると、全く飲酒をしない人は適度に飲酒する人より死亡率が高いという結果が表れてしまうのです。つまり、お酒を飲まないために死亡率が高くなったのではなく、病気の人がお酒を飲まなかっただけだということです。適量を超えた飲酒が健康に良くないのは当然ですが、適量以下の飲酒は健康に悪くもないが良くもないというのが医学研究の結論です。
適量の場合、飲んだから体に悪いというわけではないが、かといって、飲めば脳梗塞など死亡に至る病のリスクが減る、という医学的根拠もない、という話です。
ここでいいたいのは統計の解釈についてです。
たとえば、関係業者が、「酒は百薬の長」に医学的なお墨付きを添えたいと思えば、「Jカーブ効果」をもって、「飲めば死亡リスクが減る」かのように語るかもしれません。
しかし、それを額面通り受け止めて、飲めない人が健康のためと自分に言い聞かせて無理に飲むような事態もあり得るわけで、それはあってはならないことだと私は思います。
統計で語られると、説得力があるように見えるかもしれませんが、統計はそれだけで因果関係を語れるわけではなく、たんに○○○という条件の時□□□という結果が出た、というだけの話です。
そこから踏み込んだ結論を出す様々な研究を行うきっかけに過ぎないのです。
このことに限らず、統計が「根拠」だからといってすぐには信じ込まず、むしろ、他の見方はできないだろうか、と懐疑の視点を持つクセをつけることです。
それによって物事を見る幅がひろがれば、「情弱」などというレッテルもおよびではなくなるでしょう。
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