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横山ノック氏を思い出した橋下徹市長発言問題

横山ノックという「無党派」のタレント知事がいました。1999年4月の大阪府知事選で運動員だった女子学生にわいせつ行為をしたとして、懲役1年6月、執行猶予3年(求刑懲役1年6月)を言い渡されました。

判決後は、政治家としてもタレントとしても仕事の機会はなく、大阪府に対して退職金の分割返済という負債を残したまま2007年に亡くなりました。

もちろん、横山ノック氏の場合は刑事事件ですから、今回の橋下徹氏の「言論問題」とは全く次元も質も異なり、出来事自体を同列には置けません。

しかし、メディアでの人気や知名度を「元手」に、政治家として“雑巾がけ”から始めることなく、ポピュリズムで押し切ろうとする強引さが、自ら立場を悪くしたという経緯は「似ている」と見ることもできるのではないでしょうか。

横山ノック氏の事件から振り返りましょう。

「無党派ブーム」なる言い方が、地方選挙で言われて久しい。有権者の既存政治に対する不満と、一方ではそれを前向きに変えることをしない退廃に満ちた無知・無関心の美化が含まれる複雑な表現ですが、横山ノック氏はその「ブーム」の中で、1995年に参議院議員から突如として大阪知事選に立候補を表明。党派推薦候補を圧倒的大差で破って当選してしまいました。

大阪府

では大阪府民が、横山ノック氏に何か強い政治的期待を抱いていたのかというと、そうではなかったと思います。

4期務めた参議院議員時代も、無所属、二院クラブ、革自連、民社党と、左右大小の会派をウロチョロし、結局これといった実績は残していません。

知事一期目の在任中も、議会になめられていたところもあります。しかし、それは逆に、「議会にいじめられながら耐える無党派知事」というギミックになり、人気が高まったようです。

だから横山ノック氏の二期目はほとんど無風選挙と言われました。この年の大阪府知事選は、大阪の有権者も既成党派も横山ノック氏も、みな緊張感が欠如していたと思われます。

そんな中で横山ノック氏は、とんでもないことをやらかしてしまったのです。

選挙期間中の1999年4月8日午後5時半頃、堺市内を走行中の選挙運動用ワゴン車の後部座席で、横山ノック氏は自分とアルバイト運動員の女子学生の下半身に毛布をかけ、約30分間にわたり、女子学生の下着の中に手を入れるなどわいせつな行為をしたというのです。(『毎日インタラクティブ』2000年8月10日更新)

女性は9日には強制わいせつ容疑の告訴状を大阪地検に提出しました。

ノック氏は選挙事務所を通じて「全くの事実無根」と全面否定。長谷川順道・選挙本部長は、「『午後九時四分検察庁に告訴した』旨の通知書が先方の代理人からファックスで届いた。横山本人は『全く事実無根だ。選挙妨害としか考えられない』と話している。『しかるべき法的な対抗手段を講じたい』」などと強気に言い切りました。(『朝日新聞』1999年4月10日付)

選挙中だから、立場上オフィシャルに否定するのは予想できますが、そもそも横山ノック氏側には、当選してしまえば消えてしまう話とタカをくくっていた面も否めません。

選挙は予想通り横山ノック氏の再選。しかも、府知事選で過去最高の約230万票を得ました。

大量得票で調子に乗った横山ノック氏は15日午後、「訴えは事実無根」として、この女子大生を虚偽告訴容疑で大阪地検に逆告訴しています。(『朝日新聞』1999年4月17日付)

横山ノック氏側は恫喝のつもりだったのでしょうが、それは逆に、女性側の怒りを増幅させ本気にさせた、全くばかげた行為でした。

8月3日、女子大生側はノックに慰謝料など1200万円の損害賠償を求める訴訟を大阪地裁に起こしました。

横山ノック氏はこれに対して、「心外であり、一刻も早く事実関係を明らかにしてもらいたい」などと否認のコメントをしていましたが、「公務が忙しいから審理には応じない」と口頭弁論に出廷しませんでした。

「自分の主張を立証できない被告側がよくこういう態度をとる」(元裁判官の生田時雄弁護士)(「毎日インタラクティブ」1999年10月4日更新)といいます。

女子大生側はさらに、出廷もしないくせに法廷外で女子大生を誹謗した発言が名誉毀損にあたるとして、賠償請求額を増額。このときも代理人は一切答弁しなかったために、横山ノック氏の全面的敗訴が決まりました。

当初は辞職しない、公務をがんばるという横山ノック氏でしたが、このころはいつの間にか狭心症になって入院していました。

そして、刑事事件としても、大阪地検特捜部が強制捜査に踏み切り、強制わいせつ罪で起訴する方針を固めた時点で、これ以上知事の座にとどまることはできないと考えたのか、判決2日前、在宅起訴1日前に知事を辞職しました。

もちろん、女子大生への逆告訴も取り下げていました。

しかし、辞職しても、一期目の退職金返還(約5700万円)を大阪府から命じられ、翌年2月には、市民団体から「裏金プール問題」を訴えられて地裁から約83万円の返還を命じられています。勇退ではないのですからこれも当然でしょう。

この事件が表ざたになってすぐのころは、地元の大阪や「人権嫌い」の一部国民から、「被害者に共産党系の弁護士が付いたから」などと、「共産党系の弁護士」に対する侮辱に加えて、まるで被害者が勝訴を勝ち取ったことが、悪いことであるかのような意見がありました。

知事に対する思いがどうあれ、刑事事件であるということを重んじられない態度は、間違っています。

そして、今回の橋下徹大阪市長の発言問題。

発言内容の評価は措くとして、ついこの間まで政界再編のカギを握る人物のように高く評価されていたはずなのに、自らの発言が原因とはいえ、落とされるのもあっという間です。

「(アメリカ等諸外国からの信用を失ったから)総理大臣の目は消えた」(「東京スポーツ」5月19日付の藤本順一・上杉隆の「言いたい放談」)と断言するメディアもあります。みんなの党は、選挙協力の解消を宣言しています。

国政にも出ないうちから、政治家としての賞味期限は切れたといわれているようなものです。

冒頭に書いたように、橋下徹氏は、政治家として“雑巾がけ”から始めたわけではなく、「タレント弁護士」としての人気や知名度を「元手」に、メディアを利用したポピュリズムで、世論や政界に刺激を与えて自分の世界を作ろうとしてきました。

が、そのやり方は今回のような「失敗」もありえるということです。

石原慎太郎氏は、「論文で論考べきで、ツイッターで書くことではない」と諌めたそうですが、メディアで大衆に訴えることで大衆をその気にさせてきた橋下徹氏が、学術的に今回の問題について決着をつけることは、たぶんないでしょう。

自由民主党は、今回も有名人候補の発掘に熱中しているようですが、党も候補者もその轍は踏むべきではないし、有権者も「見かけの面白さ」や「メディアでの名前の売れ方」だけで票を投じる態度は、もういい加減卒業してもいいのではないでしょうか。

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