ニートの歩き方、という書籍が技術評論社から出ています。著者はpha(ファ)という方です。タイトルは「地球の歩き方」にならったのでしょう。ニート(学校にも会社にも行っていない人)の生活や意義などを書いた「ニートのガイドブック」という構成です。「いろんなことを諦めよう」「世間体は気にするな」など、これまでの価値観に真っ向から対立する興味深い書籍です。
まず最初に、ニートについて解説しておきます。
「ニート」とは、「Not in Education, Employment, or Training」の頭文字をとった言葉であり、教育も職業も就業もしていない若者を指します。具体的には、15歳から34歳までの人々を対象としています。
以下は、ニートに関する徹底解説です。
【ニートの特徴】
ニートの特徴としては、次のようなものがあります。
・教育も職業も就業もしていない
・活動範囲が限定されがちで、社会から孤立しやすい
・自己肯定感が低い場合がある
・精神的な問題を抱える場合がある(うつ病、引きこもりなど)
【ニートの原因】
ニートになる原因としては、次のようなものがあります。
・学校への不適応
・家庭環境の問題
・就職活動の不成功
・社会的な不安感や自己肯定感の低さ
また、経済的な理由(例えば貧困)が原因でニートになることもあります。
【ニートの社会的問題】
ニートが増加することで、次のような社会的問題が発生することがあります。
・経済活動の低下(生産性の低下、財政支出の増加など)
・若年層の人材不足
・社会保障費の増加
・若者の犯罪や社会問題への関与など
【ニート対策】
ニート対策として、次のようなものがあります。
・就労支援
・教育支援
・社会的な支援(心理カウンセリングなど)
・労働環境の改善
これらの対策を行うことで、ニートの減少や社会問題の解決につながることが期待されています。
以上が、ニートについての徹底解説です。
京都大学を卒業してもニートを選択する
さて、では本書についてです。
世間には、ちゃんとはたらいている人はまじめな人。
ニートは社会の落ちこぼれ。そんな考え方があるのではないでしょうか。
もちろん、生活のためというのが大きいでしょうが、平日の昼間から家にいる無職は外聞が悪い、何をしていいかわからない、と世間体を意識して就職したい、もしくは就職したという方もおられるかもしれません。
著者は、そんな生き方に対して、「いや、そうじゃない考え方もあっていいんじゃないだろうか」という提言を行っています。
こう書くと、ネット掲示板なら、「学歴もない社会の落ちこぼれの開き直りや自己正当化」と袋叩きにされそうですが、著者は京都大学を卒業しています。
ただ、卒業までに6年かかり、約3年間サラリーマン生活を送ったもののやはりうまくいかなくて後は定職を持たないニート生活に。インターネットを使って不用品や寄付を得、パソコンやネットに詳しい面々ばかりのシエアハウスで暮らしているといいます。
自分の中に、社会と折り合えない何かがあったのでしょうね。
私も似たようなところがありますが、私なんかまだまだ悟りが足りないです。もし旧帝大を出ていたら、やっぱり周囲に影響されてキャリア公務員を目指したでしょうし、留年なんて月謝もかかるし時間のロスだしと思って、折り合えなくてもとにかく卒業はしてしまうでしょう。
著者は、「会社や国などの大きな組織や一般的な常識を信じていればなんとかなる時代は終わってしまった」と社会を見定めています。要するに、自分から会社勤めを捨てたということです。
では、どうやって生きていくのか。
「その代わりに今の時代にはインターネットがある。ネットのおかげで、個人のレベルでできることがものすごく増えた。ネットがあれば組織に属さなくてもいくらでもいろんな人と出会うことができるし、テレビや新聞を適さなくてもいくらでも多くの人に向けて情報を発信できる。僕は集団行動が苦手で協調性がなくて、組織に所属するのがすごく苦手なので、ネットさえあれば一人で何でもできる今の時代に生まれて本当によかったと思っている」と綴っています。
全体が4章で構成されていますが、第1章は、著者がニートになるまでの経緯、そして「せどり」や「ソーシャルネット」「懸賞」「アフィリエイト」など、ネットをツールとして“たつきの道”を得ている現状を紹介しています。
第2章、第3章は、ニートはどうやって暮らしているのか。日常のいろいろなエピソードをつづっています。
第4章は、「ニートのこれから」というタイトルで、ニートがなぜうまれたのか、「働かざる者は食うべからず」という言葉は本当に真理か、といった問題提起を行っています。
「まえがき」に、第4章の概要にあたる記述があるので、それを引用します。
でも別に、働くよりニートのほうがいいっていいたいわけじゃない。働きたい人は働けばいいし、働きたくない人は働かなければいい。ただ、ニートになってもまた気が向けば仕事に復帰した。働いていてもちょっと疲れたなと思ったら気軽にニートになったりするのが可能で、一時的にニートをやってても周りから咎められないような、むしろ周囲からいろいろ助けてもらえるような、そんな社会が生きやすいんじゃないかと考えているだけだ。
みんなニートにならなくてもいいから、ニートじゃない人が「あんまり働かない生き方もありだな」と若干思ってくれるだけで、この社会はずいぶん生きやすくなるはずだ。働かなくてもそれほど後ろめたさを感じずに生きられるというのが本当に豊かな社会だと思う。
細かい話ですが、著者は、アフィリエイトなどで金額にかかわらずネットを使って継続的に収入があるのですから、正確には「ニート」ではなく、「ネットビジネスのSOHO」といった方がいいと思います。
ただ、おそらく著者は、「既存の会社にお勤めしていない」「既存の観念から自由である」という意味でニートという言葉を使っているのだろうなと思います。
つまり、彼にとってニートはたんなる「無職」ということではなく、もっと深い意味で「自由」ということなんでしょうね。
ということで、会社にお勤めせず、パソコンを使って気楽に暮らしています、こんな生き方があってもいいでしょう、というのが同書の主旨です。
当然、賛否両論あるでしょうね。
パソコンが普及する前に社会人になった世代、つまり50代以上の人からは、「(今の若い奴は)パソコンばかりに頼っている。もっとリアルな人付き合いを大事にすべきだ」というお説教が出るかもしれません。
会社で端末が各社員に配られる時代になっても、それだけですべてがすむわけではなく、営業活動というのは、人と人との“泥臭い”やりとりが必ずあるものです。
ビジネスに限らず、人間関係は結局は「人間が行うもの」である以上、信頼関係こそが大原則であり、その確認のためには、100通のメールよりも1回の面会の方が有効であるという意見も否定はしません。
ただ、人間には得手不得手があります。
人とやり取りして、うまく交渉をまとめたり、人に好印象を与えたりすることが苦手な人だっているのです。
だからと言って、その人はこの社会で生きていく資格がない、というのではあまりにも酷です。
もちろん、「そんなことは甘えだ」といいたくなるような場合もありますが、いつもそうとは限りません。
使い方は明らかに名誉棄損だと思いますが、最近ではちょっとふるまいのおかしな人を「アスペ」とののしる風潮があります。
実際「アスペ」ではないが、ちょっと配慮が必要な場合はあります。人間の精神状態というのは高度で複雑なのです。
人と切れてはダメなのか?
いずれにしても、そういう人たちに一律に、「おい、人と会え!社会と切れるな」とアドバイスすることが正しいことなのかどうか……。
人に裏切られたり騙されたりして、人間嫌いになってしまうこともあります。頑張りすぎて休みたいときもあります。
そんなときも、周囲は自主的な「復帰」を見守るべきで、頭ごなしに叱り飛ばしたり進軍ラッパをならしたりするやり方がいいとは思えません。
何より、そういうことは、誰でもあり得ることなのです。これを読まれて「そんな弱い奴は切り捨てろ」と叱り飛ばすあなただって、いつその立場になるかわからないのですよ。
人間は無謬万能ではなく弱い生き物なのです。
ニートの背景は、景気による雇用情勢という社会の側の事情だけでなく、そうした人の側の事情もあります。
天賦の才がある、図々しい、要領のよい、無理しても頑張れるなど「能力」があって結果を出せる人だけが尊重されるのではなく、そんな「弱い」人たちの逃げ道も含めての社会という見方をしなければならないと私は思うので、同書の考え方には大いに賛成できました。
とくに、まじめに頑張った結果として行き詰っている方には、ぜひ読んでいただきたい書籍です。
2013-04-14 15:08
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人生観は人それぞれですから確かに難しいですね。
ただニートを経験してしまうと通常の会社に復帰するのは難しいのが現状です。
ネットを使用してある程度の収入が得られればいいですが。
by tochimochi (2013-04-14 16:30)
インターネットの普及によってなのか、この世は一気に多様化しましたね。
いろんな考え方・生き方があり、認められるようになったのに、何故か閉塞感もありますね。
by みど (2013-04-14 16:34)
身内にニートがおりまして、就職しないまま、短期のアルバイトしたり、親のスネをかじったりして、ひきこもっております。
しかし、善悪の尺度で計るべきものではないと思っているので、社会の波にのまれずに、どういう生き方をしたいのかを自分で考えるということがあってもよいように思います。
by motosoft (2013-04-14 16:49)
世の中ニートだらけでは困りますが、それが切り捨てられる世の中も怖いですね。
ニートがいてもいいというのが「本当に豊かな社会」。そんな著者の考え方に賛成です。
by おっつぁん (2013-04-14 17:22)
得手不得手があっても、一生そうとは限らない。
苦手だな~と思う感情が、次の一歩の原動力に
なることだってある訳だしある意味チャンスな訳で。
人間はたえず変化し続けるものですし、今ニートでも
それは今の話、未来は可能性に満ちている!
と思いたいです。
by 昆野誠吾 (2013-04-14 18:12)
15年以上前ですが、無職の時がありました。その時はニートという言葉は無くプータローと言われてました。今、思えば結構プレッシャーがあったと思います。もし、その時にインターネットが普及していたら違ったんでしょうか
by K (2013-04-14 18:50)
いろいろな人生があるんですね。
by ヨッシーパパ (2013-04-14 20:13)
まぁ、人に迷惑掛けずに、
生活が出来ていれば、
それも良し。。
と、思うしかありませんね。
by なんだかなぁ〜。横 濱男です。 (2013-04-14 21:07)
ほんと、そう思います。
今までの自分の環境や、今はまわりの色々な、メンバーを鑑みた時に・・・そう、そのとおりだと改めて思いました。
by isoshijimi (2013-04-14 21:08)
自分も、ごく短期ですが、フリーターだった時期がありました。
だから、非常に考えさせられるお話ですね。自分以上に周囲が慌てていた感はありますが...
by あるまーき (2013-04-14 21:28)
一人では生きていけない人間。ニートのそばにいる人が理解者でありたい。
by さきしなのてるりん (2013-04-14 21:28)
人付き合いって大変なので、引きこもってしまう気持ちは分かるような気がします。
by まお (2013-04-14 22:09)
出来れば今は子供には読ませたくないな~と思ってしまったのですが
by moto_mach (2013-04-14 22:14)
アメリカ型の成果主義は日本には会わないのかも知れませんね。終身雇用で滅私奉公。それが出来るのが日本かも知れません。
成果主義目標達成型についていけない人が、ニートや世間から距離を置く人になるのかも知れません。
by muk (2013-04-14 22:17)
んーと。官僚になろうがニートになろうがそれそのものは本人が良ければそれでいいと思う。問題は京都大学出てそのような結論になったこと。きっと親が教育バカでそれで京都大学行ったけど、彼はある時自分の人生なんだったんだって考えたのかもしれないわよ。その反動でニートと。
結局親の過干渉が子供を不幸にするってことじゃないの。彼はニートで満足してるかもしれないけど、世の中にはそれにもなれない自分探しってまだいっぱいいると思うわ。バカ親が日本を滅ぼすのよ。
by utamaroco (2013-04-14 23:50)
自分の子がと考えると。
by nanamama (2013-04-15 00:10)
若年者の生活保護受給者が問題になってますよね
現在社会の若者の納める年金で高齢者を支えるシステムが
『若者には働いてもらわなくては』という考えになるのでしょうね
ニートに対する風当たりの強さはこういったところの事情も
あるのだと思います
バブル世代のように「イヤなら辞めても次がある」時代に
ニートといわれる人は少なかったと思います
どこかに自分と合う仕事があると思え
またチャンスもそれだけあったわけですから
今は一度辞めると、容易に次が見つからないのも
ニートが増えている原因のひとつじゃないかと思います
by 藤並 海 (2013-04-15 00:11)
非常に考えさせられる記事ですね。
もう一度社会復帰しようと思っていても、「また辞めないか」なんて思ってしまうとなかなか復帰できないように思います…
by ナベちはる (2013-04-15 00:20)
いろんなことを諦めよ。世間体は気にするな。
これは、大賛成です。
私も、それに近い生き方をしています。
by toshi (2013-04-15 02:33)
PCが普及して
選択肢もいろいろ広がりましたね。
by pandan (2013-04-15 04:25)
全くそのとうりだと思います。
社会が進歩、発展すればするほど複雑になりいろんな生き方が生まれてくると思います。
ようは自分を見失わないような生き方をすればよいかと思われます。
by kojiyan (2013-04-15 06:08)
なんか・・・そのような方の中には理屈ぽくて
話しの上げ足をとるんです。
近い人に一流の大学でて、教員になん年か・・・
っで退職・・・所謂今の二ートですか?良くて
パートで時々働けるようです。PCすら満足でない
ようです。年も取ってきてる・・・良く考えれば先が
心配でしょう。他人が心配することはないでしょうが・・・
by ryuyokaonhachioj (2013-04-15 09:39)
この本はひねくれている?(表現が思いつかないので)ような
人から見ると、旧帝出ているから、そのような事が
言えるんだ。頭が良いからこんな生活ができるんだ!と上から目線で言うな!なんて声も聞こえてきそうですが。
『彼にとってニートはたんなる「無職」ということではなく、もっと深い意味で「自由」ということ』この意見はとてもよくわかります。
現在の社会では『集団に属している』『枠からはみ出ない』
『社会的な活動をしている』『そういった人にしか価値がない』、といった風潮もあり、その代表が『ニート』とされていたりもしますね。
今回のいっぷく さんの提供された話題とはずれてきましたが
(この頃よくあります・・・すみません)
自分より弱者を作る事によってしか自分の存在意義を持てない人達もいます。そのような人達から見れば『ニート』を叩いていなければ社会に存在していかれないのでしょう。
(ますますずれてきました)
マイノリティは認めない。絶対多数のみ。そしてその社会から
外れた『ニート』という生き方は認めない。
著者はそういった考え方を見直せる社会が必要という事で
しょうか。
かなりずれてすみません(^_^;)
by RuddyCat-Lalah (2013-04-15 10:01)
ん~~。
将来をしっかり見据えた考えがあって
自宅で生活をされるならいいと思いますが・・
相当な覚悟と、実社会に出ないといけなくなったときの
労力が半端ではないと思うんですよね・・
私も若い頃フリースクールを手伝ったことあるんですが
皆、少なくてもフリースクールという形を使って社会に出て
人と会っていたし、将来変わって行きたいと、考えていたし・・
ん~~難しいですね。
by CROSTON (2013-04-15 13:04)
今の私にピッタリな本です(((^_^;)
by reorio (2013-04-15 13:07)
>会社や国などの大きな組織や一般的な常識を信じていればなんとかなる時代は終わってしまった
全く持ってその通りですね。
というか、資本主義経済なのに、
大多数がわざわざ労働者を選ぶのが普通というのが、
そもそも異様だった気がしますが…。
そして、著者はアフィリエイトの収入があるのですか。
これ、開業届を出せば個人事業主ですし、
法人を設立すれば社長になります。
まぁ社会のレールから外れることで、
世の中が色々見えてくることはあるでしょうね。
(私もサラリーマンではないので…。)
by 六文銭 (2013-04-16 16:11)
この著者の方は、ニートではないですね。六文銭様がおっしゃるように個人事業主・自営業・自由業になると思います。3年の勤務経験もあり、本も出しておられ自分で稼いでいらっしゃいます。わずかでも労働に対する対価を受け取った経験がある場合はニートではありません。私がニートという言葉に出会ったのはかれこれ10年近く前になりますが、最近は本来の意味とは違う使われ方をしていることがまるで一種の流行りのようだと気になっています。
by 楓〇 (2013-04-17 17:00)