内側から見たノアの崩壊(泉田純/宝島社)という本を読みました。プロレスリングNOAHを解雇された、プロレスラー泉田純の暴露本です。
暴露=悪いことと思いこんでいる人にとっては、「暴露本」と聞いただけで内容以前にその書籍の価値を認めたくないかもしれませんが、読み物というのは、いずれにしろ何かを暴くことです。
要は内容が公益性があるかどうかです。
その点で、この本は意義があると思います。
また、プロレスに興味のない方にとってはどうでもいい本かもしれませんが、書かれている内容は詐欺の話なので、もしかしたら参考になるところがあるかもしれません。
さて、同書の構成は、ある女性をプロレス団体NOAH(ノア)の永源遥から紹介された泉田純が、結局逮捕された彼女の詐欺に引っかかり、莫大な借金(9000万円)を背負ってしま過程とともに、彼女がノア本体にも大スポンサーとして関わり、亡くなった三沢光晴社長夫人からも金(5000万円)を騙し取った話が全体の3分の2を使って書かれています。
詐欺師は、まずエサを撒いてから大きくダマします。
今回も典型的なそれです。
女性一家の滞在するヒルトン東京ベイホテルに行けば、泉田純はいつも5万、10万の小遣いをもらえ、食事をすれば生ビール1杯2000円の高級料理。誕生日には50万円のロレックスをプレゼントされたといいます。
一家の洋服や趣味にかけているお金も庶民とは桁違い。
そんな暮らしをにわかにしているのならともかく、10年も前から続けているのです。
もちろん、それは10年以上前から詐欺で稼いでいるということに過ぎないのですが……。
10年というところで、泉田純は信用したようです。
詐欺師が最初にエサを撒くというのはよく聞きます。
それは、相手に信用させるだけでなく、相手の人間性を見るためもあります。
泉田純は、詐欺師たちのエサをタダ食いしようとは思わず、義理堅く詐欺師の実子の世話などをしていました。
また、いくらいい思いをしても他のレスラーに関係を安易に口外しませんでした。
詐欺師はそこで、泉田純の人の良さや誠実さ、口の堅さなどを見透かして、「こいつなら騙す相手としてふさわしい」と見立てたのでしょう。
泉田純が、人間としても、プロレスラーにしてはめずらしく社会人としても、健全な人であることが、逆にあだとなったのでしょう。
もちろん、悪く見れば、泉田純の打算が裏目に出たとも言えるわけです。
同書によると、「相続税を払わないと財産が差し押さえられるから一時的に用立てて」というでっち上げの相談を持ちかけて泉田純はお金を融通したそうです。
いったん金を巻き上げると、もう詐欺師のペースです。
返還を求められてもなんだかんだと理屈にならない言い逃れをして返さないばかりか、追加の騙しまで行うのです。
泉田純の場合も、1回で9000万騙し取られたのではなく、最初に4000万騙され、返却の催促をしているそのさなかに、追加として5000万騙されています。
騙されたことのない人は、詐欺というものがわかっていない人は、少なくとも「追加の騙し」が理解できないようです。何で最初の「4000万」のところでとめられなかったのだと批判する人もいます。
でも、そうじゃないんですよね。
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とめられるぐらいなら、最初の「4000万」もなかったのです。
詐欺師と騙される側の関係というのはそういうものです。
同書の後半3分の1は、ノアの団体としての問題点を述べています。
ノアというのは、全日本プロレスのスター選手だった三沢光晴(故人)や、ジャイアント馬場のお世話係りだった仲田龍が中心になって、ジャイアント馬場イズムからの独立ということではじめた団体です。
しかし、泉田純は、ジャイアント馬場はタニマチを持たず、レスラーの上下関係の規律もしっかりするなどして団体を内外からきっちり守っていたが、ノアは
三沢光晴がそれらをきちんとしなかったので、団体の統制がとれなくなったと批判しています。
試合も、ノアの選手たちは勝手に試合をしているだけで、お客さんが何を求めているかも見ていないし、興行全体の中で自分の試合はどうすべきかということも考えていない、といいます。
自分がしたいこと、ではなく、自分がすべきことをわかっていないということです。
そういうものは、本当はお目付け役のベテランレスラーがきっちりと指導すべきなのですが、「自由に」やるためのノアはいっさい放任だったわけです。
その一方で、上下関係の規律を否定しても、新人いじめはひどく、新人が育たないとも指摘していいますから、放任というより、たんなる無原則だったんでしょうね。
また、プロレスの醍醐味はヘビー級、というジャイアント馬場の持論にも反旗を翻した三沢光晴でしたが、結果としてノアは核になる選手が出てきていないともいいます。
ノアが設立されて以来、馬場全日本の流れをくむNOAH、という表現がよくされてきましたが、私は以前から
違うだろうと思っていました。
「馬場」からの解放、でやってみた結果が今のNOAHです。
これはひとつの現実として、ファンであっても冷徹に受け止めるべきです。
ましてや、今回の詐欺マネー問題は、プロレス観の評価の問題ではすまないことです。
詐欺マネーをふるまうスポンサー。
三沢光晴以下はそれにタカッて豪遊したといわれます。
仲田龍氏をめぐっては、詐欺師から渡ったとされる使途不明金の問題もありましたが、亡くなった三沢光晴さんの「女性問題」のせいにされています。
死人に口なしとはよくいったものです。
もっとも、仲田龍氏も死人になってしまいましたが。
ノアも詐欺の被害者と書いているファンのブログもありますが、
それは世間では通用しない話です。
泉田純にとっては高すぎる授業料でした。
が、今回の書籍を上梓できたことで、彼の名誉が多少は回復できたのはせめてもの救いでしょう。
川田利明の近況を伝える「日刊ゲンダイ」
「内側から見たノアの崩壊」を読んで感じたこと。
結局、三沢光晴が嫌っていた泉田純や川田利明こそが、実は本当の馬場イズム継承者だったのかもしれません。
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⇒
馬場元子さん訃報、マッハ隼人スカウティング秘話を思い出す
内側から見たノアの崩壊
- 作者: 泉田 純
- 出版社/メーカー: 宝島社
- 発売日: 2012/09/18
- メディア: 単行本
2013-01-28 17:15
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ノアだけはガチ、ですか?
そうやって偶像化したから腐敗も著しかったのよね。
組織は批判の風通しも必要なのに。
by utamaroco (2013-01-28 20:10)
>詐欺師はエサを撒いてから・・・
だから、同じ人が2度3度と騙されるんですね^^;
さすがと言うか、その金額にも驚きますね~^^;
by ゆりあ (2013-01-28 20:18)
プロレスの形としては三沢は真の馬場イズムの後継者
だと思っています。ただ、運営に関してはやはり素人で
そこへテコ入れできなかったことは大きな問題だと思い
ますが、プロレスがどんどん見られなくなってくるのは昔
からのファンとしては寂しい限りです。
by アニ (2013-01-28 20:41)
いっぷく さん、こんばんは。
球技は好きなのですけど
格闘技の方は疎いです・・・
by uryyyyyy (2013-01-28 21:03)
この本は買ってはおりませんが、
内容はある程度把握しておりました。
永源というレスラーが、なぜプロレス界で生き延びてこられたか。
強いタニマチを持っているからこそだったのでしょうね。
実際に試合を観に行っても、リングサイドの特等席には
いつも「その筋」と思しき人達がおりましたから・・・
by 銀狼 (2013-01-28 22:12)
この世界はよく知りませんでしたが、今回のお話で出てきた人々の名前は聞いたことがありました。
でも、こんな重くてウラがあるのは知りませんでした。
by isoshijimi (2013-01-28 22:30)
こんばんは。
父がプロレスが好きで、昔はよくTVでも
やっていたので、一緒に見ていました。
ちょっとショックです・・・。
by まる (2013-01-28 23:26)
こんばんは、ナルホド。
この本は知りませんでした。永源はそうやってこの世界を渡ってきたのは有名です。
ただこの本の著者も新人に厳しすぎ 全日の後期には新人イビリを”鬼軍曹”的に本人が思ってた という話を耳にしたことがあります。
by ダミアン88 (2013-01-28 23:56)
この本は存じませんでした。
ですが、"裏"の部分も知ってしまう暴露本のような本はどうも嫌な気分になってきますね…
by ナベちはる (2013-01-29 00:07)
デンジャラスK!
今飲食なんですね^^;
川原さんの顔面キックが懐かしいです♪
by 川島 (2013-01-29 09:23)
この話の詐欺師は本物ですね。
良心の呵責などみじんも感じられない、地獄すら生ぬるい(by北斗の拳)本物の悪党です。
一般的な良心を持ち合わせたものなら詐欺を働かんとしたとしても泉田さんみたいにかいがいしく世話をされれば騙すのが悪くなっちまうもんです。
by あつし (2013-02-02 11:39)
ノアを立ち上げた最大の理由は「脱馬場プロレス」の実現とされるのが一般的だけれど、それはイズムの問題というより、実質的に馬場元子夫人が継承した全日本プロレスからの離脱に過ぎないと感じました。
それとプロレス企業活動から生まれる利益分配という面も無関係ではないと思います。G馬場サンがもう少し、せめて新日本の半分程度でも選手に対する待遇を手厚くしていたら…??
by リトル・トム (2015-10-26 18:51)
↑
天龍はこう言っていますが。
「俺は「懐かしい全日本の空気に触れられる」と思って行ったけど、やっぱり“三沢光晴のノア”だったね。馬場さんの遺志を継いだ三沢光晴の団体でしたよ。」(http://news.livedoor.com/article/detail/9637707/)
お金についても、裁判で明らかになったところでは、実は全日本の方が、同格の新日本のレスラーよりも高収入だったことが明らかになりましたよね。
by いっぷく (2015-11-18 23:44)
実際は三沢と馬場夫人はもともとそんな世間で言われる様な確執はなかったよ。
当時仲田が金庫番で実際は仲田が懐に入れてたが、元子夫人が
銭ゲバ的なことをしてると吹いた。
信じた三沢やノアの選手が馬鹿だったということ。
いまだにそれを信じるノワヲタがいるとはw
by およよ (2015-12-22 17:37)
リトル・トムさんの言い分は面白いですね。
かりに全日のシビアな金銭の反動としても、殺人犯がいたら、そんなふうに育てた親が悪い。殺人に駆り立てたものが悪い、と言っているようなものです。
そんな理屈は流石に通らないでしょう。
いかがですか、リトル・トムさん
by 関谷貴文 (2017-03-17 14:53)