はじめにこれまでも物理学者や心理学者などが、こうした学問的解明の本を何冊も上梓しています。が、はっきりいって、この手の本は売れません。
第1章 まずは身近なところから考えよう
疑似科学がもたらす四つの危険/でも、本当に危険なのか?
第2章 疑似科学とはいったいなんだろうか
疑似科学、ニセ科学、病的科学/疑似科学の方法論とフレームワーク/疑似科学を見分ける規準――反証可能性/反証できない理論と、反証を拒否する態度/アドホック仮説の活用/科学と疑似科学を分けるもの
第3章 疑似科学を特徴づけるもの
科学の「系統的懐疑」につきあわない/制度を拒否するか、抜け道を探すか/現代の科学は不十分だから、相手にしない/科学の目的をずらして相対化する/論理的におかしな考え方――否定できないことへのアピール/立証責任を転嫁してしまう/立証責任を問うようになった/発見の文脈と正当化の文脈をずらす/説明項と被説明項の取り違え
第4章 科学的という「錯覚」
疑似科学の発生――雨乞いの科学/人は幻の相関を見つけだすようにできている/体験が強化する「思い込み」――確証バイアス/自説に都合のよいデータを確証的に集める/反証不能性をサポートする確証バイアス/疑似科学に陥りやすい「確率論的科学」/観察が信念を支え、信念が観察を支配する/そもそも錯覚や認知バイアスはなぜ起こるのか?/疑似科学は、人の自然に忠実な科学/人にやさしくない「科学」/人間らしい科学、疑似科学
第5章 心理学がとらえた疑似科学
自己正当化する信念――認知的不協和理論/予言がハズレたとき何が起こったか/疑似科学は「認められない」がゆえに情熱をかきたてられる/認知的不協和とマインドコントロール/「ランダム性」の心理学――人は偶然が苦手/ランダムの中に何かを見つける/ランダムをコントロールできるという錯覚/統計的回帰の錯誤/あいまいさを嫌う心理が疑似科学へとつながる?
第6章 血液型性格学という疑似科学
血液型気質研究は科学として生まれた/血液型性格学が疑似科学である理由/「血液型性格学」が誤りであることと、血液型性格研究の違い/なぜ血液型性格学を信用するのか/血液型性格学を支える認知バイアス/血液型性格学に見られる疑似科学的方法論/血液型性格学で心理学と調査リテラシーを学ぶ/現実には何が問題なのか?
第7章 宏観異常現象による大地震の直前予知
宏観異常現象とは何か/素朴な宏観異常研究に見られる認知バイアス/宏観異常現象を適切に評価するためには/地震が起こらなかった時、異常はどれくらい観察されるのか/説明メカニズムがあればよいのか/宏観予知の意外な役割
第8章 心理学って疑似科学じゃないの?
心理学の一般的イメージ/無意識を理論化した精神分析はなぜ疑似科学なのか/科学とは異なる知のあり方/「無意識に抑圧されたもの」は方便ではすまない/臨床心理学と補完代替医療が共通して抱える問題
第9章 身近にある「心理学」――通俗心理学
市場のニーズとメディアが歪ませる通俗心理学/メディアが欠落させる重要な情報/通俗「心理学」――誰もが専門家/脳科学と通俗心理学/脳と疑似科学の現在/超心理学は疑似科学なのか/超心理学の疑似科学性
第10章 疑似科学とはなんだったのか
疑似科学から日常のクリティカル・シンキングへ/科学が合理的で、疑似科学は非合理的といえるのか?/疑似科学を合理的に考えるために/疑似科学に私たちはどう接していくべきだろうか
引用文献
疑似科学を考える時に、ぜひ読んでおきたい参考図書リスト
あとがき
ただ、「合理的」という概念をクリティカル=多面的にとらえてみると、疑似科学には意外なことに合理的な機能があることに気がつく。疑似科学の論争というと、えてして「否定派」は、エビデンスのない治療を否定すればいい、占いやおまじないを否定すればいいと単純に考えているようですが、真の「合理的思考」とは、そんなものではないのです。
たとえば、疑似科学的な補完代替医療であったとしても、熟慮したうえでその治療を選択することを非合理的と決めつけることはできないだろう。たとえば現状では有効な治療法が見いだせていない病気の場合、もしくは外科的な治療で生活の質が低下することを嫌った人が、たとえ根拠が薄弱であろうと非侵襲的な医療を選択するという考え方はある。補完代替医療に十分なエビデンスがないことは認識したうえで、その利用という選択肢を選んでいるケースが一定数はあると推測されるが、それは果たして非合理的な態度なのか。
もっと一般化していえば、科学的規準に照らした合理性と、個人の目的にもとづく選択の合理性は、おおいに関係があるとしても、分けて考えたほうがいいのではないか、ということである。
合理性とは、読んで字のごとく、「理」 に合うことである。その理とは、もっともな道理、筋道ということであり、私たちが判断する時の規準となる。
おそらくは私たちが手にできる、最も客観性と公共性を持つ理のひとつは、科学と論理の規準であることは間違いないだろう。その規準でいえば、たとえば「おまじないをすると、恋が成就する」という考えは、明らかに非合理だ。そこに科学的な根拠はない。しかし、「おまじない」によって、心が落ちついたり、告白の勇気がでるといった作用が期待できるならば、告白の前に「おまじない」をするという行動には筋の通った理由があり、そこには、個人的・適応的な意味での合理性があるといえる。
なぜ疑似科学を信じるのか: 思い込みが生みだすニセの科学 (DOJIN選書)
科学だけでは割り切れない部分に
頼ってみたくなるときが、
人間にはあるのかもしれないですね。
by pandan (2012-11-29 05:54)
カルト宗教に入る人って、人生の挫折とか
寂しさから入るという人もいますよね。
これは確かに、科学では解決できない話ですね。
by reicoo (2012-11-29 06:13)
おはようございます^^
目に見えない不思議な力に惹かれるのはありますね。
ただその人の人格までが素晴らしいかどうかは別だという思考は残さないと、どれだけ盲信が危険かは知っておかねばと思います^^;
by 川島 (2012-11-29 09:00)
疑似科学も悪徳商法も、人間の“弱み”や“恐怖心”を突いてくるところに共通点があるように思えます^^;)
by 風来鶏 (2012-11-29 09:45)
疑似科学ものに騙されやすいです
トルマリンゴとか買っちゃって^^;
商品を売るための疑似科学は止めてほしいですけど
心の平安は科学だけではどうしようもないので
占いとかおまじないなどは適度に信じたいです
by chima (2012-11-29 11:39)
ひそかにパワースポットに何かあると信じています。
もちろん疑う心も持っていますw
お守りを買ったその日に 〇〇〇モンドが当ったメールが届き
(お店のことをブログを書く条件があったので努力もしました)
何かある!と思ってしまいましたw
by サンダーソニア (2012-11-29 12:19)
こんにちは、ナイスありがとうございます。
熟読はしてませんが、まさにその通りですよね。
へんな商法に惑わされないようにしたいものです。(^_^;)
by ひろろん (2012-11-29 12:46)
著者の方には悪いですが、私だったら献本して頂いても最初の数ページで挫折するなって目次を見て思いました^^;
若しくは、興味のある所しか拾い読みしないかなって・・・^^;
書いてあることが取っ付き難いです。
だからこそ、自分は悪徳商法とか引っかかりやすいのかな~って思いました。
街でアンケートに答え、知らないうちに統一教会に入らされそうになってましたから^^;
by ゆりあ (2012-11-29 12:53)
何かにすがりたい気持ちがあるとき、見えないものに助けを求めてしまうのかもしれませんね・・・
小指は順調に回復しています!ありがとうございます。
by リキマルコ (2012-11-29 13:34)
私は科学者ではありません。一介のと言っていいか、技術者。しかし、世界的なことはやっています。その私は大槻教授の思考には賛成しませんでした。たかが人類の知恵とその歴史で積み重ねられた物理のどこに万物を説明できるものがあるのか、という事です。最近ようやく、暗黒物質の話も普及してきましたが、我々が知るこの世界の90%以上が未知の物質で占められているとか。企業内で偉そうに言う先人のほとんどが、稚拙な論理で新しい、技術の創造や進展を阻害してきたことを見れば科学者なるものの実態も似非科学と言っていいもの、相当にあります。昔失敗したから、やっても無駄、こういう事を言う連中には、あんたがやったから失敗したんだろ、そういう事でした。物事には因子というものがあり、それをどれだけ押さえられるか、これがその物事の事実を知り得るか、そうでないかにつながります。そういうことすら知らない自称科学者が多過ぎるので、科学とはそんなものかという、事になり、疑似科学のはびこる余地も与える要素となっています。でもいい本を頂いたと思いますよ。
by うーさん (2012-11-29 16:50)
霊感や疑似科学は信じませんが、火の玉を何度も見たり、
説明できない不思議な事には出会ってます。
by 旅爺さん (2012-11-29 20:13)
思い込み1つで具合が良くなったり悪くなったりしますからね。(^_^;)
化学が全てじゃないことは確かですよね。
by tanupo (2012-11-29 20:48)
科学では証明できない不思議なこともありますよね。
どう判断するかは、自分次第ですし、人に押しつけるものでもありませんね。
by なんだかなぁ〜。横 濱男です。 (2012-11-30 07:39)
擬似科学やカルト、詐欺といったものに興味がありました。そういったものが、なぜ信じられるのかということの方にです。
そちらの方にも、この本は言及されているようですね。
by ackylacky (2012-12-02 08:38)