SSブログ

小沢一郎氏裁判、萩原聖人裁判と共通する「挙証責任のあり方」 [政治]

小沢一郎氏が、無罪確定を受けて記者会見をしました。何を言われても、何を書かれても弁解しない人が、「本当に忍耐の毎日であり、大変厳しい試練の月日だった」と吐露したことには、さすがに胸が締め付けられる思いがしました。

私の政治的信条は、保守でも社会民主主義者でもないので、保守の側から共生社会を目指す小沢一郎氏については、正直これまで全く関心がありませんでした。

しかし、この間の「小沢問題」の不公正な報道には、その醜悪さに閉口しました。

一部の政治家は、この期に及んで「説明責任」といい、それを鵜呑みにして記事に書いている一部のブロガーもいますが、と学会にいわせれば、そういう意見をトンデモというのだと思います。

なぜか。

そういう人たちは、「弁護士ペリー・メイスン」の見過ぎなのです。

意味わかりますか。

科学の世界であれ、司法の世界であれ、挙証責任は言いだしっぺにあるというのは論理的にはもう絶対的真実といってもいいでしょう。

怪しいと言い出した者が、なぜ怪しいのか、なぜ刑事罰に当たるのかを立証する責任がある、ということです。言われた方が否定の論拠を積み重ねて差し出す必要はないのです。

ちょっと考えてください。

「ドラえもんはいる」と言い出した人がいたとして、いることを証明するのはその人自身以外にはないでしょう。「そんなの見たことねえよ」という側が「いない」ことを証明する必要はない、ということです。

というより、「ない」ことは証明できません。

政治的責任といいますが、では、「説明責任」を求める人たちに問いたいのは、説明を聞いたところで、それをいかなる根拠でどう判断するのでしょうか。

裁判官でも出せなかった判断を出せるとでもいうのでしょうか。

よくいわれる、疑わしきは罰せず、というのは、性善説や観念論ではなく、「ない」ことは立証できないという論理的な根拠によるものなのです

小沢一郎氏の態度に納得しなかったら投票しなければいい。それだけのことです。

この期に及んで「ない」ことを証明させるというのは、論理的にありえないことを強いる言論リ×ンチ(グーグルの規制で×を入れています)です。

一億総リ×ンチ国家。私はこの国の、政治家、マスコミ、そして大衆にそんな思いを抱きました。

私が、そこまで強く述べたくなるのは、自分もあやうくそうなってしまうかもしれない経験をしたからです。

何度か書きましたが、私は昨年、不慮の火災で家が全焼し、妻子が意識不明の重体(うち妻は心肺停止)で病院に担ぎ込まれました。

>>戦後史ではなく自分史の話

私には二次被害として、私が火をつけた犯人であるかのように、近所の心無い人に言いふらされました。

>>私が放火犯にされた「事件」の真相

警察はその日、私を留め置き話を聞いただけで本格的に疑いはしませんでしたが、もし「疑われたほうに挙証責任がある」という、自民党の軍事オタク幹事長やブルジョアマスコミや一部ブロガーの論法に沿うなら、突然の出来事で、頭の中が真っ白になってしまった私が、火をつけていないということを立証しなければならないことになります。

やってないことはやってない、としかいえません。しかし、そんな「説明」では、私はいまだに「説明責任を果たしていない者」になってしまいますね。

小沢一郎氏の「説明責任」を求める人々は、私に対しても同じことを言わないとおかしいはずです。

説明責任……不毛なことだと思いませんか。

まあ、私のことは事件にすらなっていませんから参考にならないかもしれませんが、かつて、芸能界にも似たような事件がありました。

萩原聖人の「暴行疑惑」事件です。

スポンサードリンク↓

1993年の暮れ。地方公務員の男性が、4人組の1人に顔や胸を殴られたとし、それが萩原聖人と似ているからと、萩原聖人を相手に民事訴訟、および傷害罪で刑事告訴(のちに不起訴)まで起こしました。

文章にすると、たったこれだけの事件です。

こういう場合、普通、訴えた側が、犯人が萩原聖人であることを根拠を積み上げて立証するのものです。これは当然ですよね。

ところが、判決公判前に開かれた第14回口頭弁論で、男性と一緒に暴行を受けたとして萩原聖人に慰謝料100万円を求めていた別の原告が、「今となっては(殴られたという)記憶が思い浮かびません」と、これまでの主張を翻す発言を行っています。

「萩原が殴ったか」ということが問われる裁判で、自称被害者が殴られたという行為自体を証言できないのなら、原告が挙証責任を果たしたとはいえません。

というより、裁判、いや、事件そのものが成立しようがないでしょう。

にもかかわらず、なんと第一審判決(1997年4月23日)の東京地裁は、あろうことか萩原聖人に請求通り約230万円の支払いを命じました。

事件も嫌疑もはっきりしないのに萩原聖人側の「全面敗訴」です。

なぜ、そんなめちゃくちゃな判決が出たのか。

考えられるのは、萩原聖人が“「説明責任」を果たさなかった”ことしかありませんでした。

萩原聖人は事件当日夜のアリバイについて、「都内の友人宅にいた。しかし、相手に迷惑がかかるから一生言えない」と中途半端な言い方をしたため、事件に対する疑惑だけでなく、「相手」として、ある女子プロレスラーとの交際が面白おかしく取り沙汰されていました。それが裁判官の心証を悪くしたのでしょう。

しかし、アリバイを言わないから萩原聖人がクロ、という論理は合理的ではありません。

そこで萩原聖人は控訴。二審でやっと勝訴したのです。

1987年の舞台「花園ラビリンス」でデビュー以来、TBSドラマ「はいすくーる落書2」(1990年)「学校」(1993年松竹)「月はどっちに出ている」(1993年)など、少し影のある繊細な若者を演じることで実績を積み重ねていた萩原聖人。

裁判の間、当時の妻である和久井映見は心労から仕事が手につかなかったといわれます。離婚に至る経過はいろいろあったにしても、この裁判が無関係だったとは考えにくい。

俳優人生もプライベートも、こんな事件でぶっ壊されてしまったことは気の毒としかいいようがありません。

ことほどさように、裁判というのは、生活もその人の心もめちゃくちゃにする後ろ向きな行為です。

何より、沈黙する人が損をし、バレなければ嘘でもハッタリでも主張したほうが勝ってしまうという非合理的、非理性的な矛盾を持った営みです。

いずれにしても、説明責任という要求。一見正論でも実は有害ですらある場合もあることをみなさんには知っていただきたいのです。

日本一新―私たちの国が危ない!

日本一新―私たちの国が危ない!

  • 作者: 平野 貞夫
  • 出版社/メーカー: 鹿砦社
  • 発売日: 2010/12
  • メディア: 単行本


nice!(183)  コメント(20)  トラックバック(0) 
共通テーマ:学問

nice! 183

コメント 20

k_iga

「悪魔の証明」っていうヤツですね。
by k_iga (2012-11-20 05:30) 

pandan

していない証明って難しいですね。
by pandan (2012-11-20 06:07) 

reicoo

同じことを別の人がしても、小沢氏だけは悪意で報道することがありましたね。マスコミのサジ加減ひとつで悪役が作り出される怖い世界だなと思います。
by reicoo (2012-11-20 06:19) 

みほ

小沢一郎は、大学の同期です。
面識はありませんが、気の毒にと、
思っておりました。
奥様とお子様が、大変な災難に遭われて、
言葉もございません。
回復されん事を願うのみです。

by みほ (2012-11-20 06:52) 

1stdmain

説明責任、説明責任て、彼らは一体何を説明して欲しいんだろうね。言葉尻とって、やっぱり怪しいって言いたいだけなんだろうね。政治家もマスコミも卑劣だよな。
by 1stdmain (2012-11-20 06:59) 

旅爺さん

小沢氏の今後の活躍を期待したいです。
人のうわさも75日・・・と言っても本人はかなり大変ですよね。
by 旅爺さん (2012-11-20 07:16) 

もーもー

とても、辛い経験をされていたんですね
  一生記憶から消える事のない  ・・・・・
それでも 生きていかなければ・・・・・
人って   本当に  怖い生き物です
  ・・・・・・・
by もーもー (2012-11-20 08:56) 

サンダーソニア

この時期に決着がついたのも少し疑問ではあります。
by サンダーソニア (2012-11-20 09:00) 

川島

いっぷくさん、そのような出来事があったのですね。。。
すこし考えるだけでもたまらないです。

by 川島 (2012-11-20 11:23) 

プー太の父

過去の記事を拝見しました。
まったくいいようのない腹立たしいことですね。

力になって欲しい近所の人達もそんな程度
マスコミも近所の人達も
まるで人の不幸を楽しんでるようで恐ろしくなります。
医者もひどいですね、医者になる前に人間失格でしょう。
by プー太の父 (2012-11-20 11:31) 

ゆりあ

過去記事読ませて頂きました。
いっぷくさんに、そのような辛い過去があったとは思いもしませんでした。
でも、ご家族皆さん無事で良かったです^^
人の口に戸は立てられないとは、良く言ったもんですね^^;
無責任な噂ほど、広まってしまって・・・
真実を見ようとしないのではと思ってしまいます。
by ゆりあ (2012-11-20 12:17) 

よいこ

裁判は不条理なものですね
先日の東電女子社員殺害事件を思い起こしました
by よいこ (2012-11-20 16:06) 

utamaroco

つまり各党の説明責任の要求は、論理的な正当性はなくて政争の具だと?
by utamaroco (2012-11-20 16:22) 

ackylacky

子供のいじめと大差ない印象を受けました。
裁判の争点が、申告した年度が翌年になっていたというだけのことで、裁判すること自体がおかしいと説明しても、ほとんど人は小沢は悪いことをしたとマスコミの刷り込みを信じてましたね。

by ackylacky (2012-11-20 20:30) 

uryyyyyy

いっぷく さん、こんばんは。

小沢一郎、政治家としては
何のためにいるのかわかりません。

by uryyyyyy (2012-11-20 21:14) 

はる

私がいつもモヤモヤ思っていることを、きちんと言葉に置き換えてくれる、それがいっぷくさんのブログ。いつも心と頭の整理の助けになって頂いている感じです。これからも鋭い、でも相手への思いやりのある記事を楽しみにしている次第です。
by はる (2012-11-21 03:28) 

うーさん

不毛の刑事裁判、現在闘っております。浅薄な弁護士がやったたった一つの行為、つまり検察側の出したものを全て同意、としたことによって、訴追している検察が立証しなければならない事案が、こちらが立証しなければならないという、おかしな裁判になってしまいました。そしてそれを主導したのが裁判官です。はっきり言って裁判官たちには能力も人としての尊厳も見い出せない、そういう連中が何故、偉そうに嘘をまことしやかに事実と認定するとやれるのか、驕りとは怖いものだと思います。本質論、いいですね。皆がそのように考えてくれると、私なども財産をなくすほどの裁判をせずに済んでいると思いますが、依然、闘いの真っ只中です。
by うーさん (2012-11-21 11:33) 

chima

この裁判は言いがかり以外の
何ものでもなかったように思います…
by chima (2012-11-22 23:57) 

~ 静岡県菊川市丹野 ~ YouTube mitsuhashi-115 ~

~ 静岡県菊川市丹野 ~

~1975生~12月~12日~B型~

~ 30代~40代~萩原聖人似~ジャニーズ顔~ホスト顔~好きな女性~奥様方~必見~

~ YouTube mitsuhashi-115 ~
by ~ 静岡県菊川市丹野 ~ YouTube mitsuhashi-115 ~ (2013-02-02 16:33) 

ojioji

袴田事件からこの記事に来ました。読めて本当に良かったです。
特に萩原聖人さん(かつて「教祖誕生」の好演に好感、今年「64」で再開)の一件、初めて知って、その後の和久井映見さん(大好きな女優さん)との離婚などを考えると、無責任な言論リンチの恐ろしさ、沈黙する人が損をし主張したほうが勝ってしまう理不尽さ、ご指摘のとおり心したいものです。一方で、暮らしやすい社会を保つために人が人を裁く必要はあり、冤罪を生まない一層の取り組みを願っています。(監視カメラの増加とか、個人的には嫌な気がするけれど、そのためなのでしょうね。)
by ojioji (2015-12-25 09:36) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

Facebook コメント

トラックバック 0

Copyright © 戦後史の激動 All Rights Reserved.
当サイトのテキスト・画像等すべての転載転用、商用販売を固く禁じます