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コピー食品の戦後史 [社会]

今日は「コピー食品の戦後史」です。例のごとく、「戦後史」はブログのタイトルがそうだから強引につけたものですが(笑)

コピーといっても、コピー機でコピーをとったり、こうしたブログの記事をコピペしてコピーサイトを作ったりするという「複写」とは違います。

全く別の食材で、それっぽく見せる食品にしてしまうということ。

言葉本来の意味を考えて正確に言えば、コピー食品ではなく、代替食品、物真似食品、少し批判的なニュアンスで言えばニセモノ食品、といったほうがわかりやすいかもしれません。

今日作ってみたのは、れっきとした精進料理のメニューに存在し、決して「ニセモノ」などというレッテルをはるものではありませんが、代替食品といえるかもしれません。

豆腐の蒲焼き(6片)
豆腐の蒲焼き(6片)
・木綿豆腐 1丁
・里芋 50g
・片栗粉 大匙1杯
・のり 2枚(10分の2帖)
(たれ)
・みりん 大匙2杯
・砂糖 大匙3杯
・しょうゆ 大匙3杯

1.水切りした豆腐、ゆでてつぶした里芋を、片栗粉にまぜて海苔に塗りつける
2.まぜたものの面(海苔がついないほう)から焼く
3.作っておいたたれをからませる

これも、先日のおから料理のように、ネットには材料が微妙に違う方法が何通りか出ています。
たとえば、里芋のところを山芋にするなど、いろいろあるようです。
料理は、そうしたディテールにオリジナリティを発揮できるから奥が深いですよね。

この料理、北斗晶が作って、佐々木健介が「本物のウナギの蒲焼かと思った」と言ったとか。
佐々木健介は、純粋な心の持ち主なんでしょうね。

それで今日とりあげたい書籍は、『「ニセモノ食品」作り最前線』(宝島社)です。

「激安の裏に『添加物』!!」と表紙に書かれていますが、安くて長持ちする食品が、添加物をたくさん使ったコピー食品や上げ底食品であることを、実際の作り方まで種明かししながら紹介しているのです。

たとえば、激安赤身肉に牛脂と軟化剤を注射して焼くと「偽装霜降り肉」を作ることができる。

生のタラコ(ハラコ)にはミョウバン、亜硝酸ナトリウムやグルタミン酸ナトリウムなどにつけ込むと、綺麗な赤色の明太子ができる。

古い米をジ亜塩素酸で漂白して増粘多糖類やグリシン、サラダオイルを加えることで新米のようにツヤのあるご飯を炊ける。

健康ドリンクと称する飲み物は、無水カフェインとアルコールで体をカッカさせている。

ネギトロは牛脂とマーガリンで赤身につやを出す。

いろいろ紹介されています。

ただし、「種明かし」をする同書のねらいは、「食品添加物」や「ニセモノ」の糾弾ではないと著者はいいます。真実を知ってもらいたいだけで、むしろ、「ニセモノ食品」はコストや時間や食材の無駄遣いを抑える利点もある、といっています。
自然のままの素材を新鮮なままふんだんに使い、食品添加物を使わず時間と手間をかけて作られた料理は確かに素晴らしいものです。
しかし、1回しか絞らないカツオだしを作ると大量の『まだ使える』鰹節の絞りくずがゴミとなります。保存料がなければ少し古くなった食材はどんどん捨てなければなりませんし、長期保存もできません。アイスクリームだって、牛乳と卵だけで作れば当然小売価格は百円を下るものは無くなってしまうでしょう。数百円で定食を食べることも不可能となるでしょう。
食品添加物によって、私たちはとても安価で手軽な食生活をおくることができるようになりました。『安さ』『手軽さ』はまさに食品添加物の賜物です。
ようするに程よく付き合っていけば問題のない範囲だと言いたいわけです。連日ファストフード三昧やコンビニ弁当三昧が良い訳がないのです。恩恵はある程度受けつつも、程ほどにしておくのが上手な付き合い方ではないでしょうか

一昨日も書いたように、私個人は食品添加物を避けることもありますが、ただ、どこまで「食品添加物を使わず時間と手間をかけて作られた料理」にこだわるかは、その家庭の事情や考え方次第だと思います。

同書が言いたいのは、物真似であることをはっきりさせ、消費者が受け入れられるなら悪いことではない。ただし、本物ではないくせに本物と偽ってはならない、ということだと思います。

例に挙げたような「霜降り肉」など、添加物で「ごちそう」を作ることの是非はともかくとして、戦後の経済復興を背景に、右肩上がりで膨張してきた私たちの「飽」食文化は、健康的にも環境問題の観点からも、見直しが必要なときに来ているのかもしれません。

その意味で、雰囲気や味や見かけが似ているけれども、実は今までよりも安価で健康的で栄養のバランスの整った「コピー食品」なら、むしろ新しい食文化の突破口になるのではないかと私は思っています。

食品のカラクリ11 「ニセモノ食品作り」最前線−激安の裏に「添加物」!! (別冊宝島 1519 ノンフィクション)

食品のカラクリ11 「ニセモノ食品作り」最前線−激安の裏に「添加物」!! (別冊宝島 1519 ノンフィクション)

  • 作者: ドクターくられ
  • 出版社/メーカー: 宝島社
  • 発売日: 2008/08/08
  • メディア: 単行本


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コメント 12

1stdmain

プリンにしょうゆかけた「ウニの味」もコピー食品ですか。
安上がりで資源対策にもなるし。
by 1stdmain (2012-11-02 01:43) 

はる

昔、添乗員として中国に行ったとき、精進料理を食べたことがあります。見た目は本当に本物そっくりでした。お肉料理とかも…。でも味はやっぱり本物の方がいいかなって感じでした。
by はる (2012-11-02 02:10) 

pandan

豆腐の蒲焼き〜ヘルシーでおいしそう^
by pandan (2012-11-02 04:49) 

hirochiki

このお料理は、里芋も入っていてもちもち感が味わえそうですね。
海苔の風味も良さそうです。
まだ朝食前なので、お腹が空いてきてしまいました。
白いご飯も進みそうです。
by hirochiki (2012-11-02 05:13) 

サンダーソニア

かば焼きはタレが命(はっきり言ってタレの味)と
分かるお料理ですね。
コピー食品と言えば 人工イクラや数の子もそうかしら?

by サンダーソニア (2012-11-02 08:15) 

ぴーすけ君

美味しそう~。
by ぴーすけ君 (2012-11-02 10:40) 

tooshiba

>本物ではないくせに本物と偽ってはならない
そこに全てがかかっていると思います。

一定の品質で「偽物ですがなにか?」と開き直っていれば、誰にも追及されることはないでしょう。
しかし、なぜ偽装するかといえば、偽物の方が価値が低いから。消費者の本物志向を逆手に取って、「より多く儲けたい!」という欲が絡むから。だと思います。
おまけに「発覚さえしなければいい」「発覚したところでどうってことはない」などと、モラルの欠片もない思考回路の事業者がいるから・・・。

本物よりも偽物の方が価値が高くなれば、本物と偽装する必要もなくなりますが、消費者も本物志向一辺倒ではなく、どちらがよりよいものか?を見極めるように意識を変えていかないといけないかもしれません。
by tooshiba (2012-11-02 11:58) 

さうざんバー

コピー食品!考えようによるってトコロですね(^^;)でも、介護食に活かされています(^^)vやはり、日本人って、味もさることながら、見た目にこだわるんでしょうね(^^)でも、何事もホドホド・・・、これが一番難しいです(^^;)ゞ
by さうざんバー (2012-11-02 17:19) 

tanupo

私もなんちゃって料理をよく作りますが、要するにニセモノですよね。(^_^;) 高い食材を買うお金がないので、安い材料でそれらしいものを作り代用する。貧乏人の知恵と考えていただければ幸いですね。(-ε-)
by tanupo (2012-11-02 23:35) 

ねじまき鳥

いたちごっこですね。

by ねじまき鳥 (2012-11-03 00:28) 

chima

みんながウナギを食べようとしたら
絶滅しちゃいますもんね
by chima (2012-11-04 23:14) 

doctorjohn

こんにちは。時々覗かせて頂き、勉強させていただいております。
食品に関しては、相変わらず偽装が問題になりますね。一度手を染めてしまうと、抜け出せなくなってしまうのでしょうか?騙したり、わざと誤解させたりするようなことは人間として許せませんが、内部告発でもないと、なかなか発覚しないようです。
だけど、創意や工夫、知恵を生かした代用品は、偽装とは正反対の、食生活を豊かに愉快にするものだと思います。
食添も、何が何でも悪者というわけではなく、保存性の向上や風味の改良など、社会において重要な役割を持っていると思います。
どんな食品でも食べ過ぎは危険ですね。リスクが存在するという事実を忘れてはならないと思います。
by doctorjohn (2012-11-07 19:34) 

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