「年収100万円の豊かな節約生活術」で生き方を考える [経済]
戦後史上、今ほど思わしくない経済情勢の評価がなされている時期はありません。1989年に冷戦が終わり、1991年にバブル経済が崩壊したからは、やれ「失われた20年」だの「ゼロ成長期」だの「経済停滞期」だのといわれ、まるで永遠に出口がないような閉塞感で憂鬱な気持ちになります。
そのような時期は、庶民の財布の紐も固くなり、節約術がもてはやされます。しかし、それが本当に解決になるのか。そもそも真の「節約」といえるのか、疑問に思えることも少なくありません。
たとえば、婦人誌によく出ている倹約術。すべてがそうではないですが、中には支出を減らすこと自体が目的化している場合がありますよね。
週に2回は実家で食事をしてくる「倹約」とか。それは、その人にとってはお金が浮いたかもしれないけど、実家には負担をかけているわけです。どこがお金を使うかが、本人から実家に代わっただけです。
あと、どこかから古着をもらってとかね。もらったところにお返しをする経費もありますし、そのもらったものが自分に似合うのか、自分の価値観に合うのか、ということを考えると、それが得であるかどうかはわかりません。
そういう場合、家計簿の生活費のわずかな減少と引き換えに、「我慢」など精神的な「損」、すなわち「負の努力」もしているわけです。
それ、生きることの楽しさという、もっとも大事な部分にまで悪影響をもたらしていないでしょうか。
ということで、前置きが長くなりましたが、今日記事で取り上げたいのが、「年収100万円の豊かな節約生活術」(文藝春秋)という書籍です。
この書籍は、かなり人気がありますね。
著者の山崎寿人さんは、1日の食費500円、1ヶ月の生活費3万円で20年間も定職に就かず生きてきたといいます。
といっても、この書籍は、婦人誌などに出ている小手先の倹約術を披露するとか、年収300万円で暮らすといった類の、「負け組」が数字だけをテクニックでやりくりする「対処療法」ではなく、「貧乏は極楽」をモットーに、人生観・生活観そのものを変えることでお金を使わなくてもできる生活のすばらしさを訴えたものです。
どう変えたのか。
山崎寿人さんは、東京大学を出て大きな会社で大きな仕事をし、日本新党の立ち上げにも関わってきました。つまり、今の価値観で言えば「勝ち組」の側にいた人です。
その人が、会社をやめ定職に就かず、世俗的な名声や成果を一切求めない生き方に変えたことで、勝ちだの負けだのといった価値観自体から距離を置いた生き方をできるようになった。その生き方の結果として、家賃収入の「年収100万円」でも「豊か」な生活ができているという話です。
もちろん、「節約生活」というタイトルにもある通り、現代社会で年収100万円で生活する以上、できることとできないことは当然ありますし、できないことは「節約」せざるを得ません。
ただし、それは、無駄なもの、過剰なものは一切消費しない、ということと、できることの中で楽しもう、というゲーム感覚によって、我慢するという「負の努力」なしに行っています。
たとえば、いろいろなものを食べたいと思えば、そのつど外食をしなくても、酒と乾きものを持参してもらうホームパーティーを何度も開くことで、そのたびにメニューをかえれば実現できる、といいます。
書籍では、コストに比べて豪勢に見える料理のレシピも紹介されています。
その一方で、便利でも物の値段自体は安くないコンビニや、固定電話があれば使わない携帯電話などは利用しません。
厳密にいうと、100万円以外にも、ポイントサイトやその他、PCを使った数多くの「アルバイト」も経験。中には割りのいいものもありましたが、いずれにしてもたくさん稼ごうとしません。
定職がないのなら、そこに時間を費やしてたくさん稼いでネットビジネスで食べられるようにがんばればいいのでは?
いえ、山崎寿人さんは、定職がないからこそ、そこに時間を費やすことはしたくないのだといいます。
結局、そこでガツガツ稼ごうとすれば、数字を目標にしてしまうので、営業成績を上げるためにガツガツはたらいていたサラリーマン時代と同じメンタリティになってしまうからです。
周囲の人々は、善意も含めて、プーな生き方に意見をするそうです。それを聞くたびに山崎寿人さんは、「思えば遠くへ来たもんだ」と思うのだとか。
が、「今在るもので生活する」という気持ちがあれば、生きていけないわけではないこともわかりました。
事故前の私の生活には、物心両面で、山崎寿人さんいうところの過剰なものがあったのかもしれません。
ですから、私には山崎寿人さんの達観はよくわかります。
もっとも、山崎寿人さんは家庭をもっていませんが、私には妻子があります。その違いがある以上、まったく同じようにはできないかもしれませんが、人間の幸福とは何か、いったい人間は何のために生きているのか、ということを改めて考えさせられた書物であることは確かです。
そのような時期は、庶民の財布の紐も固くなり、節約術がもてはやされます。しかし、それが本当に解決になるのか。そもそも真の「節約」といえるのか、疑問に思えることも少なくありません。
たとえば、婦人誌によく出ている倹約術。すべてがそうではないですが、中には支出を減らすこと自体が目的化している場合がありますよね。
週に2回は実家で食事をしてくる「倹約」とか。それは、その人にとってはお金が浮いたかもしれないけど、実家には負担をかけているわけです。どこがお金を使うかが、本人から実家に代わっただけです。
あと、どこかから古着をもらってとかね。もらったところにお返しをする経費もありますし、そのもらったものが自分に似合うのか、自分の価値観に合うのか、ということを考えると、それが得であるかどうかはわかりません。
そういう場合、家計簿の生活費のわずかな減少と引き換えに、「我慢」など精神的な「損」、すなわち「負の努力」もしているわけです。
それ、生きることの楽しさという、もっとも大事な部分にまで悪影響をもたらしていないでしょうか。
ということで、前置きが長くなりましたが、今日記事で取り上げたいのが、「年収100万円の豊かな節約生活術」(文藝春秋)という書籍です。
この書籍は、かなり人気がありますね。
著者の山崎寿人さんは、1日の食費500円、1ヶ月の生活費3万円で20年間も定職に就かず生きてきたといいます。
といっても、この書籍は、婦人誌などに出ている小手先の倹約術を披露するとか、年収300万円で暮らすといった類の、「負け組」が数字だけをテクニックでやりくりする「対処療法」ではなく、「貧乏は極楽」をモットーに、人生観・生活観そのものを変えることでお金を使わなくてもできる生活のすばらしさを訴えたものです。
どう変えたのか。
山崎寿人さんは、東京大学を出て大きな会社で大きな仕事をし、日本新党の立ち上げにも関わってきました。つまり、今の価値観で言えば「勝ち組」の側にいた人です。
その人が、会社をやめ定職に就かず、世俗的な名声や成果を一切求めない生き方に変えたことで、勝ちだの負けだのといった価値観自体から距離を置いた生き方をできるようになった。その生き方の結果として、家賃収入の「年収100万円」でも「豊か」な生活ができているという話です。
もちろん、「節約生活」というタイトルにもある通り、現代社会で年収100万円で生活する以上、できることとできないことは当然ありますし、できないことは「節約」せざるを得ません。
ただし、それは、無駄なもの、過剰なものは一切消費しない、ということと、できることの中で楽しもう、というゲーム感覚によって、我慢するという「負の努力」なしに行っています。
たとえば、いろいろなものを食べたいと思えば、そのつど外食をしなくても、酒と乾きものを持参してもらうホームパーティーを何度も開くことで、そのたびにメニューをかえれば実現できる、といいます。
書籍では、コストに比べて豪勢に見える料理のレシピも紹介されています。
その一方で、便利でも物の値段自体は安くないコンビニや、固定電話があれば使わない携帯電話などは利用しません。
厳密にいうと、100万円以外にも、ポイントサイトやその他、PCを使った数多くの「アルバイト」も経験。中には割りのいいものもありましたが、いずれにしてもたくさん稼ごうとしません。
定職がないのなら、そこに時間を費やしてたくさん稼いでネットビジネスで食べられるようにがんばればいいのでは?
いえ、山崎寿人さんは、定職がないからこそ、そこに時間を費やすことはしたくないのだといいます。
結局、そこでガツガツ稼ごうとすれば、数字を目標にしてしまうので、営業成績を上げるためにガツガツはたらいていたサラリーマン時代と同じメンタリティになってしまうからです。
周囲の人々は、善意も含めて、プーな生き方に意見をするそうです。それを聞くたびに山崎寿人さんは、「思えば遠くへ来たもんだ」と思うのだとか。
この生活をしていると、「まだ今日の自分は○○をやってないじゃないか。早く○○をしなければ」という焦りや自責の念にさいなまれもしなければ、「問題は、何をするかだ。何もしない時間など、無駄なだけ」などと、説教を垂れられることもない。私は昨年、火災で公私共に物的なものをほぼすべて失いました。仕事も立ち行かなくなりました。
そのうえ、今の世に蔓延している「勝ち組か負け組か」「善(正義)か悪か」「成功か失敗か」「正しいか間違いか」「(自分はあいつより)上か下か」というように、世界を二色に塗り分け、それだけで人間の価値を評価してしまうような二元論的世界観とは、とうの昔におさらばしてしまってもいるので、「何かをしてなんば」「何かになってなんば」という観念や、二元論的世界観の上に立った「かくあるべき」「ねばならぬ」「意味があるかないか」という発想で自分の考え方や行動に価値判断を下し、己れの人生を縛り上げることは、もうやめてしまったというわけだ。
だから、“仕事をしていない=何もすることがない=ヒマ=退屈”や、“何もしない=怠惰=悪”“毎日家に独りでいる=引き籠もり=心の病”といった奇妙な等式を自分に当てはめて色々言われても、出るのはため息ばかり。料理に入れ込んでいるからといって、それをすぐに店を出すなどと、短絡的に結びつけられても弱ってしまう。
が、「今在るもので生活する」という気持ちがあれば、生きていけないわけではないこともわかりました。
事故前の私の生活には、物心両面で、山崎寿人さんいうところの過剰なものがあったのかもしれません。
ですから、私には山崎寿人さんの達観はよくわかります。
もっとも、山崎寿人さんは家庭をもっていませんが、私には妻子があります。その違いがある以上、まったく同じようにはできないかもしれませんが、人間の幸福とは何か、いったい人間は何のために生きているのか、ということを改めて考えさせられた書物であることは確かです。
2012-08-20 03:31
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コメント(18)
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節約や倹約は大切ですが・・・仕事や何かで儲ければ・・・
どっちを選ぼうかな~? そうだ!”宝くじ当てよう~!” 笑
by 旅爺さん (2012-08-20 06:45)
なるほど〜やり方など様々あるんですね。
by pandan (2012-08-20 06:49)
雑誌の節約術を良く見かけますが、皆さんがんばっておられるようですね。
私もいろいろ試してはみますが、心が貧乏臭くなって続きません・・^^;
今の自分を楽しめる程度にやっていこうと思っています(*^^*)
by リキマルコ (2012-08-20 14:03)
すごく良く分かります。
本当に必要なものは何か?
しっかり考えるきっかけになるかもしれませんね。
パパりんに読ませなきゃ!^^;
by hatumi30331 (2012-08-20 15:25)
昨年の夏、在阪の某ラジオで山崎さんのことが取り上げられていて、感嘆したのを思い出しました。
お金がでしか得られない満足に可能な限りサヨナラして、幸福を感じる力(暖かい布団に寝られれば満足とか)を磨けば、案外楽に生きられる気がするんですが…
ごまめの歯ぎしりでしょうか(゚_。)?
by hnhk (2012-08-20 20:51)
社会が、金が無いと生き難い生活を強いている気がします。
例えば、飲み会に行かないと付き合いが悪い人間というレッテルをはられますが、居酒屋は酒も飯もあまり美味しくないにも関わらず、金額は結構なものです。にも関わらず食べ切れない量を注文する人が多い。
日本人はお金の使い方をどうも間違っている気が…。
by えがみ (2012-08-20 23:22)
ブログへの書き込みありがとうございました。
う~ん 同じ本なのにこうした紹介文ってなかなか書けないですね。自分の場合文章力以前の問題かも知れません。涙
筆者が読者に伝えたかったことは、人生哲学の深淵に関わることだと強く感じました。それを理解しやすく平易に説明をしてくれたのではないかと思います。
by おっちゃん (2012-08-21 09:08)
旅爺さん、コメントありがとうございます。
そうですね。全員がこの生き方をしてしまうと
はたらく人がいなくなってしまいますね。
成果や数字を挙げる生き方の人がいるから
社会が成り立っているという面もあります。
要するに、世の中いろいろな生き方があって
勝負という価値観以外の生き方「も」あるよという
ことだと思います。
by いっぷく (2012-08-21 12:23)
pandanさん、コメントありがとうございます。
無理する節約ではなくて、生き方・考え方を
変えた結果の節約というところが新機軸ですね。
by いっぷく (2012-08-21 12:24)
リキマルコさん、コメントありがとうございます。
そうですね。私も長続きしない方です。
無理すると苦痛になるし、無理はいけませんね。
by いっぷく (2012-08-21 12:24)
hatumi30331さん、コメントありがとうございます。
そうですね。勝ち組か負け組かということにこだわるのは
負けたくないというより、人生で本当に必要なものが
よくわからないから、とりあえず世俗的な価値観に
のっているのかもしれませんね。
by いっぷく (2012-08-21 12:24)
hnhkさん、コメントありがとうございます。
私もそんなに贅沢をする方ではないと思うのですが、
山崎さんほど徹底はしていないです。
でもこうやって山崎さんが注目されることで
インタビューや出演料でお金ができたら
山崎さんはどう使うんでしょうね。
……って、そういう下世話な発想がだめなのかもしれませんね
by いっぷく (2012-08-21 12:25)
えがみさん、コメントありがとうございます。
なるほど、そうですよね。自分がそのつもりになっても
周囲の環境が許さないってありますよね。
「お金の使い方」も文化のようなところがあるので、
社会的にそういうものを見直すような運動というか
見方がないと、なかなか変えるのはむずかしいですね。
by いっぷく (2012-08-21 12:25)
おっちゃん、コメントありがとうございます
仰るとおりだと思います。
私もそれを表現しようと思ったのですが
不器用なもので、前置きが長くなってしまいました。
by いっぷく (2012-08-21 12:26)
いっぷくさま、こめんとありがとうございました。
こちらこそ宜しくお願いします。
by Kay (2012-08-21 20:57)
非常に為になりました。ありがとうございます。
白、黒 思考回路で洗脳されている常識をくつ
がしましたね ・・・・・・・・ 話せばきりがないくらい
書きたい!! ^^
by 斎藤 ☆ (2012-08-21 22:03)
こんにちは。
拙ブログへのご訪問ありがとうございました。
出かけておりまして、お返事が遅くなって申し訳ありません。
この本を読んでからは、だいぶ無駄遣いが減りました。
ほかの「節約本」とくらべても、読み応えがあり、共感しました。
>もっとも、山崎寿人さんは家庭をもっていませんが、私には妻子があります。その違いがある以上、まったく同じようにはできないかもしれませんが、人間の幸福とは何か、いったい人間は何のために生きているのか、ということを改めて考えさせられた書物であることは確かです。
まったく同感です。
自由に生きるのが幸せと感じました。
by jester (2012-08-24 17:09)
ブログへの書き込みありがとうございます。ブログ、拝見しました。そうですね、楽しんでできる節約っていいですね!
妻子もちではできないと思いますが、参考になる部分は参考にしたいですね。
ところで、火災にあわれたんですね!大変でしたね、、、。大きな災害にあうと、いろんなことを考えたり変えたりすることになりそうです。
今後はHAPPYな人生になりますように。
by 女医EMI (2012-08-25 14:55)