少年犯罪の急増、凶悪化について、『日刊ゲンダイ』(201年10月8日付け)が連載記事を書いています。よく議論される、少年犯罪は急増したか、凶悪化したか、というテーマで、統計的に少年犯罪は減っている、という意見をしばしば見かけるものの、同紙は「少年犯罪『殺人』だけが増えている」と指摘しています。
警視庁によると、少年犯罪の総数は増えているとはいえないものの、殺人件数だけは増えている、という報告があります。
このうち,少年による殺人の検挙人員は,昭和40年代に減少傾向に入り,50年代以降,お おむね70人台から90人台で推移していたが,平成10年以降は毎年100人を超えており,12年 には105人となっている。
少年犯罪において、殺人事件の発生件数が増えているという報告がある一方で、他の種類の犯罪においては減少傾向にあるとの報告もあります。
そのため、全体的に少年犯罪が増加しているわけではないといわれているのです。
殺人事件が増加しているという現象については、複数の要因が考えられます。
例えば、ストレスやうつ病、薬物使用などが引き金となって、犯罪を犯す少年が増えているという見方もあります。
また、SNSやインターネットの普及により、情報収集や犯罪行為の計画を立てやすくなったという点も影響している可能性があります。
しかしながら、犯罪を犯す少年の多くは、家庭環境や学校生活、友人関係、地域の環境などに大きな影響を受けています。
そのため、社会的な問題や問題解決の取り組みが必要不可欠であり、単純に殺人事件の発生件数が増えていることだけに目を向けるのではなく、犯罪を引き起こす背景にある社会的な問題に対して取り組むことが重要です。
ということを踏まえた上で、以下を徹底的に熟読してください。
マスコミ報道の謎
マスコミは、少年犯罪が急増した、凶悪化した、経済的理由から理由なき犯行へと質が変化した等の指摘をしばしば行います。
しかし、ネットを検索すると、それを否定する人も少なくありません。
要するに、統計で犯罪件数は減っているじゃないか、という反論です。
少年犯罪は、1983年に19万6783人(人口10万人当たり18.8人)を記録したのがピークで、04年以降は12年連続で減少。15年は3万8921人(同5.5人)と戦後最少を更新しており、長いスパンで見ても戦後「長期低落」となっている。
そして、殺人や強盗、放火、強姦の凶悪犯少年の検挙人員総数は、2006年は1170人だったのに、2015年には586人と半減している。
最近はネット等情報の量が増え、センセーショナリズムで報じられるので、現代のほうが犯罪が増えたように感じるだけだ、というものです。
しかし、『日刊ゲンダイ』(201年10月8日付け)の「犯罪データで分かる世間の誤解 連載4」では、それとは異なる指摘をしています。
「少年犯罪「殺人」だけが増えている」という指摘です。
“数”は減ったものの、刑法犯少年全体に占める凶悪犯の割合は、2006年は1.04%だったのに、2015年には1.51%に、殺人に至っては2012年46人だったのが2015年には60人と、数自体が増えているというのです。
つまり、今のほうが凶悪だという見解は、あながち間違いとはいえないというわけです。
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どちらが深刻かとは一概に言えない
ネットを検索すると、昔は経済的に貧しいから犯罪に走ったが、今は動機が見えにくい未成年の殺人が増えている、という意見に異を唱える者もいます。
昔だって、動機なき殺人はあったというのです。
しかし、原因なき結果はありません。
動機なきではなく、動機を特定できなかったのでしょう。
現代でよく言われる事件の背景は、生まれた時からパソコンや携帯電話がある世代は、0か1しかないネット世代のため、リアルな対人関係に乏しく、他人の痛みを想像できず自己愛も強い、という指摘です。
昔は、それはなかったかもしれませんが、経済的だけでなく、法律も道徳も今よりも整備されていない時代ですから、動機なきと言うより、動機だらけといった方が良かったかもしれません。
つまり、同じ「動機なき」でも、おそらく解明されれば異なる動機が考えられます。
どちらがより深刻かというのは、一概には言えません。
少なくとも、「昔のほうがひどかった」とか「昔も今も変わらない」とは言い切れないでしょう。
いずれにしても、現代と昔の「動機」は定量的な比較には馴染みませんが、単純に「現代のほうがマシ」ともいえない面もあるという指摘は、現代社会の問題点に警鐘を鳴らすという意味で、これはこれで同紙の見識だと思います。
戦前の少年犯罪
- 作者: 管賀 江留郎
- 出版社/メーカー: 築地書館
- 発売日: 2007/10/30
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
2016-10-07 21:01
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