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総合こども園問題に見る、官僚性悪・民主党被害者説の怪しさ [政治]

戦後史上、新たな学制として6、3、3、4制が定められ、うち小学校と中学校が義務教育になった。ではそれ以前はどうかというと、任意で幼稚園か保育園に入れることになった。この「幼稚園か保育園」というのが今回のテーマだ。

このほど、民主党が三党談合合意で消費税増税法案を衆議院で成立させたことが話題になっているが、実はそれ以外にも“民主党の挫折”が成立した。

民主党がマニフェストでさんざん宣伝していたのは「幼保一体化」。要するに幼稚園と保育園を一体化するというものだ。それを「総合こども園」と称した。

その総合こども園が撤回され、認定こども園拡充という自公政権時代の構想を民主党政権は丸飲みしたのである。

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まず、その政策の是非以前にはっきりしておきたいのは、民主党案を自ら撤回し、自公案を丸飲みした以上、民主党政権の挫折であり、マニフェストの実現を守れなかったということである。

にもかかわらず、小宮山洋子厚生労働大臣は「一歩前進」などとコメントしている。

これは「幼保一体化」を主張し来た民主党の姿勢とはつじつまが合わないだけでなく、それに期待して投票した有権者の思いを踏みにじるものであり、かつ、自公政権の提案をさも自分のもののように語っているわけだから、自公から「横取り」といわれても仕方ないだろう。

だったら、野党時代、最初から自公政権に賛成すれば良かったではないか。

「幼保一体化」というが、では何のために幼稚園と保育園を一体化するのか。

都市部における待機児の解消と、地方において幼稚園と保育所を併存できなくなっている現状を解消するという一石二鳥をねらったらしいのだが、現実には待機児解消を理論的にも保証できるものではなく、厚労省と文科省に分かれている「二重行政のムダをなくす」という宣伝に反して、内閣府まで引っ張り出す「三重行政」の自己矛盾。

しかも、公的保育の解体と批判されると、今度は2歳時までの保育所は残すとトーンダウンするなどいったい何をやりたいのかわからなかった。

また、民主党が主張していた総合こども園とやらは、3歳以上の幼児に質の高い学校教育を提供するとされていたが、「幼児教育」ではなく「学校教育」というところが私はにはひっかかった。

これまでに幼稚園、保育園がそれぞれ積み上げてきた独自の歴史と経験を清算主義的に棚上げして、まるで小学校の予備校、準備期間的なものとして「一体化」することがいいことなのか。

まあ、このへんにはいろいろ意見があるだろうが、今週号の「週刊現代」では、小宮山洋子大臣の動機について問題視している。
NHKのアナウンサーをしながら3人の子育てをした小宮山氏。同党同僚議員は(幼保一体化は)「専菜主婦の子が幼稚園で『教育』を受け、『保育所より上』という顔をしているのが悔しかったのだろう」とみる。

だから、「保育園」も「質の高い学校教育を提供する」ということか。

小宮山洋子大臣は、たばこ撲滅にも熱心だが、これももとはといえば、自身のたばこ嫌いもあるといわれる。いずれも、「自分が嫌だったから変える」という主張に聞こえなくもない。

政府・民主党として主張していることだからそれほど単純ではないだろうが、少なくとも担当省庁のトップである小宮山大臣に、そうした個人的なこだわりがあることは予想できるという話だ。

もちろん、自らの体験がきっかけになるのはリアリティがあるし、たばこについても増税による抑止というのは政治的にはひとつの見識かもしれない。

しかし、自分の体験に頼れば、思いこみもひっくるめて狭い視野と自分だけの価値観で凝り固まってしまう憾みを指摘せざるを得ない。

で、今回認定こども園拡張はどうやって再浮上してきたのか。事務方を務める、あの障害者郵便不正事件に巻き込まれた村木厚子内閣府政策統括官が汗を流したという。これも同誌から引用する。
村木氏は、障害者郵便不正事件に巻き込まれた当時、厚労省雇用均等・児童家庭局長。その頃、小渕優子少子化対策担当大臣の下で認定こども園改革案(通称「小渕報告」)をまとめている。  5月29日の衆院特別委員会で村木氏は、「私個人としては初めに幼保一体化施設ありきではなく、現実に根差した小渕報告が出発点になった」と官僚には珍しく「私見」を述べた。自らが以前携わった改革案にこだわりを見せ、政府案に反対する馳浩自民党議員との折衝など、水面下で野党対策に汗をかいた。結局、民主党の法案は取り下げられ、自公政権が作った現行法の改正で対応することに。

政治主導を言い張った民主党だが、実際には「水面下で野党対策に汗をかいた」のは官僚だったのだ。

同誌では「『政治主導』はもはや見る影もない」と民主党の挫折で結んでいるが、ここで改めて述べておくと、

マスコミでは、ずるがしこい官僚にウブな民主党政権が取り込まれてしまった、という言い方をされ、有権者の多くもそう見ている。

もちろん、そういう面はある。

ただ、それだと、まるで民主党が被害者のようなニュアンスになってしまうが、それはどうだろうか。

つまり、今回の村木厚子氏の例を見てもわかるとおり、官僚はよくも悪くも実現に向けてすべき努力をしている。

にもかかわらず、民主党は「大臣個人の思い入れ」は見えても、すべきことをしていない。

民主党がひよったり挫折したりしたのは、官僚だけに責任を押しつけるべきことではなく、自分たちの不作為が根本にあることを認識すべきではないのだろうか。

民主党が知らない―官僚の正体

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ぴーすけ君

幼稚園は幼稚園のメリットがあり、保育園には保育園のメリットがそれぞれあって 一緒になると困る幼稚園がいっぱいあるはず。
by ぴーすけ君 (2012-06-29 13:29) 

いっぷく

ぴーすけ君、コメントありがとうございます。
そうですよね。子供の成長や適性とか
各家庭の事情によって幼稚園か保育園か
選択も変わってくると私も思うのです。

が、そのへんが無視されてしまうと
ますます少子化になってしまうのではないかな
という心配があります。
by いっぷく (2012-06-30 04:13) 

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