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入川保則、ドスの聞いた声と品のある演技者の最期 [芸能]

戦後史のもうひとつの側面は、偉人、先人の訃報である。こればかりは、世の中がどう変わっても永遠に続くジャンルといっていいかもしれない。

入川保則が、直腸がんの末期で余命宣告を受けながら延命治療を拒否。だが、ついに力尽きた。72歳で入院先の神奈川県内の病院で亡くなった。

最後の仕事は、『日刊ゲンダイ』(12月20日付)の連載「入川保則 がん延命治療拒否 命の清算中」。そう、5日前の記事である。

大たい骨の骨折で手術をしたことが報じられたが、「人の生き死にに関わるようなものではありませんので、早合点しないように」と本人は釘を刺していた。が、残念ながら肝心の直腸がんのほうが「生き死に」に関わってしまった。

「治れば、また遊ぶこともできます。幸い、脚の手術は無事に終わりました」という文で結んでいるが、本人もまさかその週に亡くなるとは思わなかったのだろう。

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9月には、主演映画「ビターコーヒーライフ」(公開時期未定)のクランクアップ会見を行い、8月いっぱいと宣告されていた余命について「検診で“年越しますよ”と言われた」と明かしたが、それもかなわなかった。

先日亡くなった竹脇無我主演のテレビドラマ『だいこんの花』で、竹脇の勤務先である出版社の先輩役を演じていたのが入川保則、編集長役が金子信雄だった。

入川保則も金子信雄も悪役のイメージが強かったので、彼らも「いい人」キャラに変えてしまう向田邦子のホームドラマってすごいな、などと思いながら当時ドラマを見ていた。が、すごいのは脚本家だけでなく、演じる本人たちもそうなのだ。

入川保則のドスのきいた声から「ちょい悪おやじ」を連想し、その一方で、関西学院大時代に芝居に走ったインテリくささも感じられて、個人的には何ともかっこいい役者だなあと思っていた。

それで、あのホーン・ユキと再婚したと聞いてまたまたびっくり。さらに、離婚したと聞いてまたまたびっくり。

それはともかくとして、余命というのは目安であり、また最近は医師の誤診や見込み違いに対する世間の目が厳しいので、医師は「余命」をどちらかというと少なめに言う。

メディアによっては、「ビターコーヒーライフ」のクランクアップ当時、「8月」といわれて9月まで生きていたことで、「医学常識超えた!」などという大げさな見出しが踊ったが、入川保則が余命を少しオーバーしたのは医学的にはそうめずらしい話ではない。

一部には、入川保則の生き様をもって、すぐに「がん治療など効果はない」「抗がん剤をするくらいなら余命を楽しく生きたほうがいい」と、医学の成果を清算主義的に否定する意見が出ていたが、価値観としてならともかく、医学の評価につなげるべきではないと思う。

入川保則は70歳を過ぎた「末期」だからこのような生き方を選択できたわけで、若い人の初期のがんで同じことは勧められない。

「医学常識」云々という話ではなく、死ぬまで現役でいよう、がんでも前向きに生きよう、という入川保則個人の生き方や価値観を評価すべき話なのである。

入川保則さんのご遺徳を偲び、哀悼の意を表します。



タグ:入川保則
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